第7話「失われた記憶の欠片」



「記録保管所?」


空とアリアは、ユウトに案内された建物を見上げていた。石造りの巨大な図書館。その正面には「物語記録院」という古めかしい文字が刻まれている。


「ここには、街中の物語が記録されているんだ」

ユウトが説明する。

「もしかしたら、アリアの記憶に関するヒントが」


「入れるの?」

アリアが不安そうに訊ねる。


「心配ない」

ユウトは胸元のカードを取り出す。

「機械仕掛けの詩人は、ここの管理システムとも仲がいいんだ」



薄暗い書庫の中。無数の本棚が天井まで続いている。


「ほら、見て」


ユウトが機械の詩人を呼び出すと、書庫の照明が次々と点灯。同時に、巨大な検索装置が起動する。


「図書館の機械たちも、物語を持っているんだね」

アリアが感心したように見つめる。


「そうさ。さて、アリアのカードを」


アリアが差し出した霧のかかったカードを、検索装置にかざす。すると――


「!」


警報が鳴り響いた。


「どういうことだ?」

空が身構える。


「封印された記録との共鳴反応……」

ユウトが眼鏡を直しながら画面を見つめる。

「これは、王立図書館の最重要機密セクションと」


その時、アリアの体が淡く光り始めた。


「アリア!」


彼女の周りに、無数の光の粒子が舞い始める。まるで記憶の欠片のように。


「これは……」


光の中に、断片的な映像が浮かび上がる。


白い城。

儀式らしき場面。

そして――


「危険です!すぐに中断を!」


突如、黒衣の図書館員たちが現れた。

「これ以上の記録検索は禁止されています」


「くっ」

ユウトは急いで機械の詩人を収める。

警報と光が消えていく。


「申し訳ありません。ですが、これ以上は」

図書館員が静かに、しかし強い口調で告げる。



「王立図書館の機密……」


図書館を出た三人。空がアリアを見つめる。

「お前の記憶は、そんなに重要なものなのか?」


「分からない……」

アリアは自身のカードを見つめる。

「でも、あの城は、確かに……」


「王都に、行くしかないな」

ユウトが提案する。

「王立図書館なら、もっと多くの情報が」


「でも、簡単には入れないだろ?」

空が指摘する。


「そう、だけど」

ユウトが眼鏡を光らせる。

「来週、王都で大きなトーナメントが開かれる。優勝すれば、図書館への特別な許可が与えられるんだ」


「トーナメント……」


空とアリアが顔を見合わせる。

これが、彼らの物語の次なる展開となる。


その時、アリアのカードが再び微かに光を放った。

まるで、失われた記憶を取り戻すことを誓うように。

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