第7話「失われた記憶の欠片」
「記録保管所?」
空とアリアは、ユウトに案内された建物を見上げていた。石造りの巨大な図書館。その正面には「物語記録院」という古めかしい文字が刻まれている。
「ここには、街中の物語が記録されているんだ」
ユウトが説明する。
「もしかしたら、アリアの記憶に関するヒントが」
「入れるの?」
アリアが不安そうに訊ねる。
「心配ない」
ユウトは胸元のカードを取り出す。
「機械仕掛けの詩人は、ここの管理システムとも仲がいいんだ」
*
薄暗い書庫の中。無数の本棚が天井まで続いている。
「ほら、見て」
ユウトが機械の詩人を呼び出すと、書庫の照明が次々と点灯。同時に、巨大な検索装置が起動する。
「図書館の機械たちも、物語を持っているんだね」
アリアが感心したように見つめる。
「そうさ。さて、アリアのカードを」
アリアが差し出した霧のかかったカードを、検索装置にかざす。すると――
「!」
警報が鳴り響いた。
「どういうことだ?」
空が身構える。
「封印された記録との共鳴反応……」
ユウトが眼鏡を直しながら画面を見つめる。
「これは、王立図書館の最重要機密セクションと」
その時、アリアの体が淡く光り始めた。
「アリア!」
彼女の周りに、無数の光の粒子が舞い始める。まるで記憶の欠片のように。
「これは……」
光の中に、断片的な映像が浮かび上がる。
白い城。
儀式らしき場面。
そして――
「危険です!すぐに中断を!」
突如、黒衣の図書館員たちが現れた。
「これ以上の記録検索は禁止されています」
「くっ」
ユウトは急いで機械の詩人を収める。
警報と光が消えていく。
「申し訳ありません。ですが、これ以上は」
図書館員が静かに、しかし強い口調で告げる。
*
「王立図書館の機密……」
図書館を出た三人。空がアリアを見つめる。
「お前の記憶は、そんなに重要なものなのか?」
「分からない……」
アリアは自身のカードを見つめる。
「でも、あの城は、確かに……」
「王都に、行くしかないな」
ユウトが提案する。
「王立図書館なら、もっと多くの情報が」
「でも、簡単には入れないだろ?」
空が指摘する。
「そう、だけど」
ユウトが眼鏡を光らせる。
「来週、王都で大きなトーナメントが開かれる。優勝すれば、図書館への特別な許可が与えられるんだ」
「トーナメント……」
空とアリアが顔を見合わせる。
これが、彼らの物語の次なる展開となる。
その時、アリアのカードが再び微かに光を放った。
まるで、失われた記憶を取り戻すことを誓うように。
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