大学の就活対策の授業中に面接の実習で組んだ可愛い後輩が彼女になりました 〜 授業からはじまる恋愛物語 〜

丘野雅治

第1話 授業で偶然うしろの席に座ってる可愛い女の子と、もしも付き合ったら……なんて考えてみる

 俺は大学の教室で、可愛い女の子と向かい合って座ってる。

 その子はスマホで俺を撮影しながら、澄んだ声で丁寧に質問をする。


「お名前を教えてくれますか?」

「輝く能力と書いて輝能てるよしです」

「学部はどちらですか?」

緑山みどりやま学院大学、文化政策学部3年生です」

「大学で、どのような勉強していますか?」

「学際系の学部で、コンテンツプロデュースの勉強をしています」


 就活向けの授業の真っ最中で、面接の実習なので教室中がこんなだ。

 知らない相手と2人組を作って、面接っぽいやり取りをする。

 実習の狙いは、自分の話し方や仕草を自分で見ること。

 だから自分のスマホを相手に渡して、撮影してもらってる。


 俺の相手の子は、偶然に後ろに座ってた子だ。

 名前も学部も知らない。


 彼女が笑顔で、俺の目を見つめながら質問を続ける。

「コンテンツプロデュースって、どんな勉強してるんですか?」

「映画やテレビなどのコンテンツが、どのように制作され視聴者に届けられているか勉強しています」

輝能てるよしさんは、将来はプロデューサーになりたいのですか?」

「いえ、現場での制作が希望です。

でも、制作のためにもプロデュースの知識は必要なものだと思って勉強しています」

「映画の監督とか、テレビのディレクターとか目指しているんですか?」

「いえ、個人の力が発揮できる小規模なものが良いと思っています」

「CMの撮影とかミュージックビデオみたいな?」


 質問から、彼女がこの分野に詳しいのがわかる。

 うちの学部の学生かも。

 これまで見かけてないから下級生かな。


「まだ自分でもわかりません。

動画の撮影や編集は好きで、自分でも得意だと思います。

でも、どの分野で活かしたらいいか、まだよくわからないんです」


 重い空気を変えるように、彼女が質問を変える。

「今度は、趣味のこととか聞いてもいいですか?」


 彼女が俺に趣味とか好きな映画など、話しやすい話題で質問をしてくる。

 打ち解けた雰囲気で会話がはずむ。

 無難な内容なのに話してて楽しい。

 内容より、声や態度や表情から大きな影響がある。

 彼女が、うんうんとうなずきながら笑顔で聞いてくれて話しやすい。


 俺にとって女の子と楽しく話せてるのは珍しい。

 授業の課題だから話せてたりする。


 高校の頃はクリエイターになるための進路で迷ってた。

 芸術系の大学か、普通の大学で専門学校へダブルスクールか。

 受験に身が入らず一浪してしまった。

 その間に、大学には複数の分野が勉強できる学際系の学部があるのがわかった。

 その中からメディアコンテンツの勉強ができそうな、緑山みどりやま学院大学の文化政策学部に入学できた。

 渋谷にある、おしゃれなブランドイメージの大学だ。

 でも、大学に入ってからも、将来どうするか悩みは続いてた。


 これまで心の余裕がなく過ごしてきたから、こうやって女の子と話してみて、周りが異性との関係を大事にする気持ちが、はじめてわかる気がする。


 講師の女性の声が教室に響く。

「キリのいいところで役割を交代してねー」

 90分の授業の真ん中だから、結構な時間、女の子から質問を受けている。


 女の子が、ちょっと真面目な顔をする。

「もう一つ聞いていいですか?」

 うんとうなずく。

「好きな女の子のタイプとか、いますか?」

 少し考える。

「自分が夢中になってることを、理解してくれる人がいいです。

相手も、きっと何か夢中になれることを持っている人だと思います」

 考えたこともない質問だけど率直に答える。


 形式的に面接の終了の挨拶をして、口調を面接用から普通に戻す。

「いやー、ありがとうね」

「いぇいぇ、こちらこそです」

 女の子からスマホを返してもらう。


 次は俺が女の子に質問する番だ。

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