4話 少女ミラアルクの前世(修正)
進也は目の前に居る少女、ミラアルクの話を黙って聞いていた。彼女の口から語られる前世と言うものも酷いものであった。
旅行中に拷問倶楽部に誘拐され、甚振られ、尊厳を踏み躙られた上に、パヴァリア光明結社という秘密結社に売られ、人体実験の道具として扱われ、望まぬ怪物にされた。
「最期は上の奴らに利用されるだけされて、月から地球に帰れなくなった装者を地球に送り届ける為にウチらは消滅したってわけだゼ。結局人の身体に戻ることも出来なかったし...ウチは目的の為と仲間に手を汚させたくなかったとは言え、人もいっぱい殺したゼ。因みに装者と言うのは、ウチらの世界の正義の味方的なポジションだゼ」
最初は到底信じられないと思った。だが、ミラアルクの様子を見る限り作り話をしている様には見えない。何より凝りすぎだ。
「で? 肝心な消滅した後は、何が起こったんだ?」
進也の質問にミラアルクが続ける。
「何か気がつくと真っ白な空間に居てよ、謎のロリが現れてウチに人生をやり直したくないかって聞いてきたんだゼ」
「とても信じられんが...」
「ほんとだゼ! まぁ信じられないなら信じなくていいが。ウチもこんな所でのんびりしてられないからな」
そう言うとそそくさと何処かへ行こうとするミラアルク。因みにここは進也の部屋だった。秋菜にミラアルクの事を聞かれたが、適当に誤魔化している。
「どっか行くあてでもあるのかよ」
「行くあてはないが、とりあえずヴァネッサとエルザを探さないとだゼ。多分この世界に居るはずだからな」
「ちょっと待てよ。そいつらってどんな姿してるんだ?」
「何でお前にそんな事話さなくちゃいけないんだゼ?」
進也が問うと、ミラアルクが怪訝そうに聞いてくる。確かに、今日会ったばかりの少女の人探しに、協力する余裕は今の進也にはなかった。もしミラアルクの答えが、進也の予想と全然違っていたら、悪いがこのまま放っておくつもりだ。
「いや、俺たちアグリーの為に毎日鉱山で金を発掘してるんだけど、昨日見たんだよ。無理矢理鉱山に連れて来られて、必死に抵抗してる女と子供をな。その時女の方がエルザちゃんには手を出すなって言ってた」
「間違いない。それヴァネッサとエルザだゼ」
進也の目撃証言を聞いて、ミラアルクは目を丸くして呟く。そして、進也の両肩に手を乗せると、真面目な顔つきで言ってくる。
「ウチをその鉱山に案内してくれ!」
「え? あ、あぁ。でも明日朝早いぞ」
「いいゼ。早起きは得意じゃないが、頑張るゼ」
「あー、そうか。分かった。案内してやるよ。じゃあ俺、明日早いからもう寝るわー。お前も早起きだからな。早く寝るんだぞ」
そう言って早々と寝ようとする進也にミラアルクが不満そうな声を上げる。
「寝るってウチは地べたに寝なきゃいけないのか? 流石に勘弁して欲しいゼ」
「あー、すまん。忘れてた。布団敷いてやるから、大人しく寝るんだぞ」
「あざまーす!」
顎にピースした手を当てながら、お礼を言うミラアルク。
進也は眠い目を擦りながらも、仕方なくミラアルクの布団を敷いてやるのだった。
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