第5話:動き出す計画

「上海か、何もかも懐かしい」


 コロナ解禁後数年ぶりに上海に来たが、上海浦東空港は閑散としていた。

 それもそのはず解禁されたとはいえ渡航にはビザが必要なうえ事前PCR検査やその他ネットでの事前申請が必要だった。

 事前情報がない旅行客などは入国審査前の資料提出や申請などで混乱をして、私のように準備が無いと入国審査の不親切な対応に時間を割かれてしまう。

 それと後で知ったが上海の労働力である出稼ぎに来ている労働者もかなり減っていた。

 ロックダウンによる文字通り死活問題に追い込まれた彼らはこの上海に見切りをつけたらしい。



「さいとうさん久しぶりアルね!!」


「陳さん(仮名)お久しぶり。またよろしくお願いしますよ」


「任せるアルね!」


「おっと、これはつまらぬものですが」


「おおっ! いつも助かるアルね」


 出迎えに来てくれた陳さん(仮名に)にお土産の夏と冬の祭典で手に入るBとLの薄い本を手渡すと上機嫌で喜んでいる。

 彼女は日本で言う腐女子だ。

 腐女子がどういうものかはここでは控えさせていただこう。

 そんな感じで中国に行く時にはお世話になっている陳さん(仮名)に現状を聞く。


「だめアルよぉ~。ロックダウンで酷い目に合うしその後は景気が悪いアルよ。私も株は全部売り払ったアル」


 やはり中国の景気は悪くなっているようだ。

 日本の報道でもそれは言われていた。


「景気悪いから撤退する外資企業も出始めているアルよ」


「(どきっ!)そ、そうなんだぁ。なんか大変だね……」


「私も考えているアルよ。今の会社辞めて日本に行こうかと思っているアルよ」


「へっ? 日本へ??」


「お客さんが日本の事務所で日本語分かる中国人スタッフ欲しがっているアルね。東京なら、さいとうさん言う夏と冬の祭典とかで薄い本たくさん手に入る聞いたアルね!」


「いや、そうなんだけどマジ?」


「マジアルね!」


 そう元気に言う陳さん(仮名)御年28歳。

 彼女のそのアクティブさにちょっと驚きながら更にいろいろ状況を聞くのだった。


 

<次回:「行動開始」立って歩け 前へ進め 私達には立派な足がついているじゃないか>


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