第3話:まずは外堀を埋めるのが鉄則

 途方もない任務を言い渡された私はハゲ上司に協力を求める。



「すみません(ハゲ)上司。お客さんの最終注文受付と同時に事務所撤退の件を必ず秘匿してもらうようにお願いできませんか?」


「うん? 上海所長からも上からもその件に関しては重要な事だって言われたね。分かった、各客先に相談と最終オーダーの件でこれから連絡をするからその時にその旨を説明しておくよ。で、君の上海出張なんだがビザ取ってきてくれ。渡航できるがビザ取得が必要らしい」


「……わかりました。日程を決めてビックサイト近くのビザ申請する所まで行ってきますね」


 私はビザ取得をする羽目になる。

 現地に行かなければか……

 そうなるとコロナ前から仲の良かった現地スタッフの陳さん(仮名)とも連絡を密に取っておくか……

 少々心苦しいが私にも生活がかかっていると同時に渡航先で拘束されるのはごめんだ。

 

 客先からの情報漏洩や、周りの商社、関連会社からの情報漏洩も要注意である。 

 そして一番は社内の連中だ。

 実はこういう問題は内部から漏洩するのが一番多い。

 なのでハゲ上司を使って社内での情報漏洩の防止を徹底してもらう。

 それと同時にとあるルートを使って上層部へもこの件について協力をお願いする。


『撤退に関し、上海所長が拘束される危険性があるので本件を内密にする必要があります。最悪撤退期間が1年~3年になる恐れがあるのでどうぞご協力の程よろしくお願い致します』


 そう言った意味の情報を上層部へ流すと、ハゲ上司が慌ててやってきた。


「さいとう君、上海事務所撤退の件だけど上からも重々に内密にやってくれとの事だ。下手をすると上海所長が拘束される可能性があるらしい」


「わかってますよ。お客さんへの対応お願いしますよ? 私はビザ申請に行ってきますんで」


 そう言って後はハゲ上司に任せる。

 こうして私は模型店の店長と共に上層部のプラモデル好きな専務への根回しは完了した。

 ちなみにビザ申請の帰りにガンダ〇ベースで限定商品を買ってきてくれと言う内密な任務も言われたが、まぁ仕方ないだろう。

 

 さて、情報封鎖はこれでいいだろう。

 次はあちらの内情を陳さん(仮名)を使っていろいろと引き出さなければ。

 そして所長と共に撤退の方法を構築していかなければ。


 私は自販機の前で缶コーヒーを飲みながらため息をつくのだった。



<次回:「戦いは情報だよ、兄貴」次回もサービスサービス!>

 

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