このクソみたいな世界🗺️
鷹山トシキ
第1話 地獄の始まり
山県亮太は、ひまわり二中の陸上部のエースとして、毎日努力を重ねていた。学校の中でもその実力は認められており、将来を期待される存在だった。しかし、その裏で彼は知られざる悩みを抱えていた。
入学から数ヶ月、山県は順調に友達を作り、周囲に馴染んでいた。しかし、ある日、陸上部の練習後に気づくと、自分の持ち物が破損していることに気づく。最初は事故かと思ったが、次第にそれが何度も繰り返されるようになった。彼はその事実を部活の顧問に相談したが、明確な対応はなかった。
数週間後、山県は更にひどいイジメに遭うようになる。教科書やランニングシューズが隠され、悪口が囁かれ、グラウンドではわざと転ばされることが日常的になっていた。彼は心の中で「これが本当の意味での挑戦か?」と自問しながら、耐え続けていた。
ある日、山県の同級生である佐藤恵子が、彼のイジメを目撃する。恵子は山県と同じく陸上部に所属しており、彼に対して密かな好意を抱いていた。彼女は勇気を振り絞り、イジメを見逃さずに反撃を始める。最初はその行動が恐怖を与えるものだったが、次第に他の生徒たちも彼女に賛同し、学校全体がイジメに立ち向かう流れが生まれる。
イジメが明るみに出ると、学校の管理体制が改善され、山県は少しずつ安心して生活を取り戻すことができた。最終的に、彼は陸上部での努力を続けながら、仲間たちとの絆を深め、全国大会で見事な成績を収める。
山県亮太は、いつものように陸上部の練習を終え、汗を拭きながらロッカーに向かっていた。だが、そこには彼のランニングシューズが見当たらない。
「またか…」
呟きながら、山県はロッカーの中を探し始めた。しかし、シューズは見つからず、代わりに古びた、誰かが使い古した靴が無造作に放り込まれていた。
その時、後ろからひそひそ声が聞こえてきた。
「山県、あれ探してるの?」
振り返ると、陸上部の部員、佐々木が意地悪そうに笑っている。彼はいつも山県を嘲笑していた。
「まさか、また誰かが…」
「お前、そんなにシューズにこだわるんだな」佐々木が肩をすくめる。「でも、見つからないんじゃしょうがないよな。探しても無駄だろ?」
山県は言葉を返すことなく、その場を離れようとした。しかし、足元がふらつき、ひどく疲れた様子だった。佐々木の言葉が胸に突き刺さる。
その夜、山県は家でじっと自分の足を見つめていた。無理して走り続けることができるのか、これからも陸上を続けることができるのか、彼の心は次第に沈んでいった。
翌日、ランチの時間。山県は一人、静かに食事をしていた。周囲は賑やかな声で満ちているが、彼の耳にはそれが届かなかった。
突然、背後から冷たい声が響いた。
「おい、山県。今日も一人か?」
振り返ると、佐々木とその仲間たちが笑っている。
「仲間がいなくて寂しいか? まあ、お前なんか誰も相手にしないだろうけどな」
山県はその言葉に反応せず、無理に笑顔を作ってみせた。だがその目には怒りと悲しみが交錯していた。
「そんなこと…」
言葉に詰まる山県の肩を、佐々木が勢いよく叩いた。
「なに言ってるんだ、お前。お前みたいな奴が何を言っても無駄だろ。もういい加減、みんなわかってるよ。お前なんか、みんなの足を引っ張るだけだってな」
山県の胸が熱くなった。彼はその言葉に耐えながらも、頭の中で何度も反論を考えたが、結局何も言えずに黙り込んでいた。
その時、隣の席から声がした。
「やめろ、佐々木!」
佐藤恵子が立ち上がり、佐々木を睨みつける。
「山県が何かしたのか? それともお前がただいじめたいだけなのか?」
佐々木は一瞬、驚いた表情を見せたが、すぐににやりと笑った。
「お、恵子ちゃんか。こいつの味方でもするつもりか?」
「そうだよ。彼には何もしてないし、今後も何もしない」恵子は強い口調で言った。「もしまた何かしたら、私が黙ってないから」
佐々木は少し黙り込むと、仲間たちと顔を見合わせ、やがて肩をすくめて席を立った。
「勝手にしろよ、恵子」
山県はそのやり取りを黙って見ていた。恵子が彼を守ってくれたことに驚きと感謝の気持ちが込み上げてきたが、同時に自分の無力さも痛感していた。
「ありがとう…」山県は小さく呟いた。
恵子はにっこりと笑った。「大丈夫、私がついてるから」
山県はその言葉に少し救われた気がした。しかし、心の中では、イジメがこれからも続いていくことを感じていた。今後どうなっていくのか、彼にはまだ見えない未来が広がっていた。
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