第12話「株主総会の罠」前編



「大変です!」


今日も元気にレオが飛び込んでくる社長室...のはずが、今日は様子が違う。


「魔王軍から臨時株主総会の開催請求が!」


「はぁ!?」

圭介の声が響く。

「どういうこと!?」


「実は...」

メリッサが資料を広げる。

「魔王商事が我が社の株式を、密かに買い集めていたようです」


「現在の保有比率は...」

レオが震える声で報告する。

「なんと30%」


「そんな!」

圭介が立ち上がる。

「でも、まだ過半数は...」


「問題は議題です」

メリッサの表情が曇る。

「『働き方改革の撤回』と『現経営陣の総退陣』...」


「なるほど」

圭介が腕を組む。

「俺たちの改革が、魔王軍の利益を脅かしてるってことか」


その時、社長室のドアが勢いよく開く。


「御苦労様です」


現れたのは、筆頭取締役バルザード。その隣には見知らぬ悪魔の姿が。


「紹介しよう。我が魔王商事の副社長、ダークロード様だ」


「ふふふ...」

ダークロードが不敵な笑みを浮かべる。

「労働改革なぞ必要ない。我々の手法こそが、異世界経済を支える力」


背後には、真っ黒なオーラが渦巻いている。


「御社の技術力と我々の経営手法が組み合われば...」

ダークロードの目が赤く光る。

「異世界最強の企業が生まれる」


「だが、その前に...」

バルザードが意味ありげな笑みを浮かべる。

「邪魔者は消えてもらう」


「社長!」

メリッサが圭介の前に立ちはだかる。


「メリッサ」

バルザードが冷ややかに言う。

「お前の父上も、我々の経営方針に賛同していたはず」


「!」

メリッサの表情が強張る。


「株主総会は一週間後」

ダークロードが高らかに宣言する。

「せいぜい、足掻くがいい」


二人が立ち去った後。


「どうすれば...」

レオが項垂れる。


「メリッサさん」

圭介が静かに言う。

「大丈夫、きっと道は...」


「私...」

メリッサが振り返る。

その瞳には、決意の色が宿っていた。


「社長と一緒に、この会社を...この理想を守ります」


「ありがとう」

圭介も真剣な眼差しを返す。

「よし、作戦会議だ!」


「御社の未来のため」

壁から現れるトウメイ。

「私にできることは全て」


「私も!」

レオが尻尾を力強く振る。


オフィスに夜が更けていく。

一週間後の決戦に向けて、彼らの戦いが始まろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る