第11話 やり遂げてみたいんです
家出初心者の私と違って、オーウェンさんは家出をしてからかなり経つようで。
済む場所はともかく食べ物とかには困らなかったのでしょうか?
と、少し疑問に思っていたのですが――。
「――自給自足ってすごいですね……!」
「だろー! て言っても、じーちゃんがしてたことそのまましてるだけだけど」
裏庭の畑で採れた野菜、それから森に実っているもので生活していたらしいです。
それでも無理がないのは、裏庭の畑がかなり本格的だから。
色んな野菜が実っていたのですが、どれも大きくて美味しそう。
いくつか収穫して、一緒に料理をさせてもらいました。
得意……というわけではないのですが、それなりにできるのですよ!
小さい頃は、よくお母さんの手伝いをしていましたから。
「スライム、何でいなかったんだろうな?」
夕食を食べながら、オーウェンさんが怪訝そうに眉を寄せる。
何時間も探したのに1体も見つからなかったなんて、ちょっと不思議ですよね。
「いつもうじゃうじゃいるのにー」
「たまたまいなかったとか……? そんな日今まではなかったんですか?」
びっくりするくらいいないなぁーとは思いましたが、そんなにおかしなことなのでしょうか。
スライム達だって、お家でゆっくりしたい日があったりとか……。
「オレが知ってる中ではないなー。毎日スライム狩りに行くわけじゃないからわかんねーけど」
「難しいですね……。明日ならいるでしょうか?」
頭の中でイメージしても全然わかりません。
スライムがうじゃうじゃいるって、どんな光景なんでしょう……?
「どうだろ、普通に戻ってるかもしれないけど……何でそんなに気にするんだ?」
大きな一口をほおばって、オーウェンさんは不思議そうに首を傾げる。
もうクエストが終わったから関係ないんじゃない? といった感じです。
「明日受けるクエスト、どうしようかなぁ……と」
「まさかまたスライム討伐クエストを受けようとしてるのか……?」
はぁ? と肩を竦めるオーウェンさん。
こくりとうなずくと、またはぁ? と眉を下げました。
「スライムの依頼は常設だろうし、受けれると思うけど……他の受ければよくね?」
飛び跳ねネズミとか葉ウサギとかーなんてモンスターの名前を並べていますが、どれがどんなのだかさっぱりです。
低難易度クエストで唯一わかるのがスライム……って感じです。
「簡単と聞きましたし、私でもできそうなのはそれかな、と」
「いや、別に他も――」
「他もできるかもしれませんが、ちゃんとやりたいんです」
他のクエストを受ければいい。
難易度はそこまで大きく変わらない。
スライムは見つからないかもしれないのだがら、他を受けた方がいい。
「オーウェンさんはすごいですが、私は――モンスターを倒した経験も、ないので」
それは、全部わかってます。
わかっているんですけど……諦められない私がいる。
「1度頑張ると決めたので、やり通してみたいんです。ちゃんとスライムを見つけて、倒してクリアしたいんです」
今私、すごくわがまま言ってる。
オーウェンさんを困らせてます。
わかってる。わかっているのですが……。
……もう、せめて最初くらい――中途半端で終わりには、なりたくないんです。
「まだ私1人ではできません。なので――オーウェンさんがよろしければ、明日もこのクエストを受けてもいいですか?」
お願いします。とはっきり言って、オーウェンさんの目を見つめる。
水色の瞳が、驚いたように私を見ていて……さっきのように、明るく笑いました。
「ふははっ、いーよ。そんなにしゃんとしなくてもいいし!」
「はいぃ!」
しゃんとしなくてもいい、と言われたのに、つい背筋を伸ばしてしまいました。
からからと笑っているオーウェンさんは、本当に楽しそう。
そこまで面白いことはしていませんが……。
「スライムは1番初心者向けのモンスターだから、ウェルの練習にも丁度いいし」
「ありがとうございます! 明日こそちゃんと見つけて、バッチリ倒して見せます!」
ビシッとちょっと強く言って、サラダを一口食べる。
たくさん動くためにはしっかり食べないとですよね。
それでしっかり寝て、早起きしましょう。
今朝はぐっすり寝てしまいましたので、明日は朝食の準備とかお手伝いしたいです。
もっとスムーズにクエストを受けられるようになりたいですし、村への道も覚えなくてはいけません。
スライムも見つけられるようにならないとですし、それで倒せるように……やらなきゃいけないことがたくさんです。
こんなにたくさんあると、何かうっかり忘れてしまいそうですね……。
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