第5話 悪と戦う魔法少女ココロンが誕生した

 服を着て第一応接室に戻ったら、東山さんが頭を下げた。

「説明の仕方が悪かったですね。すみません」

「いや、ウィースを使えるようになったんだと、私も舞い上がってしまいました」

 第二会議室に誰もいなくてよかった。

 最初だからと、1メートル横とかをイメージしていたら大惨事だった。


「これをやったのは二人目ですよ。でも、ご自身の瞬間移動ができて本当によかったです。これができないと仕事になりませんですからね。では、東山君、説明を続けて」

 箕輪さんが苦笑しながら言った。

「ある意味体感してくれてよかったとも言えるますね。もともとウィースを持っていない限りは、慣れるまでは着ている服までは移動させられません」


「そしたら、私、最初は裸でマールムと戦うんですか? 短い間でしたが、お世話になりました。じゃあ、私はこれで失礼します」

「まあ、話をよく聞いてください。そうならないために、先ほどコスチュームを内蔵と言ったのです」


 ???


 コスチュームを内蔵というのは、私とコスチュームを一体化させること。

 一体化させれば、最初から一緒に瞬間移動できる。

 そして、そのままマールムと戦える。

 

「でも、一体化って、ずっとあれを着たままってことですか? 脱げなかったら、お風呂とか、寝るときとかどうするんですか? その前に、あれ着て家には帰れませんよ」

「では、これも体感してもらいましょう。コスチュームを体の前に当ててください」

 箕輪さんにそう言われて、コスチュームを体に当てる。

「ムーヴェンズ!」

 箕輪さんがコスチュームに手を向けてそう唱えたら、コスチュームが消えていた。


「これ、瞬間移動の応用なんです。今度は『トランスフォルマーレ』と唱えてみてください」

 トランスフォームに似た言葉ということは、うん、これ、変身するっぽい。

 私、正真正銘の魔法少女になったのかな。

 でも、私も学習したし、確認しておかないといけないことがあるので、いきなり呪文(でいいのかな?)を唱えたりはしないよ。


「唱える前にお聞きしたいのですが、これって、この制服姿から、コスチューム姿に変身するってことですよね」

「ご明察ですが、何か疑問でも?」

 箕輪さんが首を傾げた。

「変身するときに、この制服とか下着とかがどこかに消えて、一瞬丸裸になって、それからコスチューム姿になるんじゃないですか?」


「ええ、魔法少女の変身ってそもそもそういうものですよね。でも裸はほんの一瞬ですから、動画を撮ってコマ送りでもしないとわかりませんよ」

 あ、それ、私が録画した「まほだま」の変身シーンでやったことだ。

 全身が光って何も見えなかったけれど、ブルーレイでは光が消えるらしい。


「それに、変身はここで行いますから、誰にも見られませんよ」

「じゃあ、普通にここで着替えればよいのでは?」

「出動は一刻を争いますからね、そんな時間的な余裕はありませんよ」


「本当に一瞬なので、私にも変身過程は見えませんよ」

 東山さんが言い添えた。

 じゃあ仕方ないのか。って納得していいのか?

 そういう変身は、魔法少女もののお約束だけれど。

 でも、ここまできたんだし、やってみようかな。


「トランスフォルマーレ!」

 おお、一瞬のうちに本当にコスチューム姿になった。なっちゃった。

「戻るときはどうするんですか?」

「もう一度『トランスフォルマーレ』って唱えてください」

「トランスフォルマーレ!」

 制服姿に戻った。


「成功ですね。こういう風に、変身するときに着ていた服に戻りますよ。それに、瞬間移動の経験を重ねれば、自分の服のまま移動できます。戦闘に自信があれば、制服や私服でも戦えます。そうしますか?」


 うーん、気分の問題もあるし、それより戦闘の自信なんて微塵もない。

「魔法少女のコスチュームでお願いします」

「その方が安全ですね。さ、これでココロンさんは立派なティーツィアプロジェクトの一員です。今日はいろいろあって疲れたと思うので、また後日いらしてください。研修をしましょう。それではお疲れ様でした」


 そういう訳で、悪と戦う魔法少女ココロンが誕生した。でも私、これから一体どうなるの?

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