日々のこと

水中チサ

師走の紅葉

いつものように食材を買った後の、帰り道のこと。


自転車で小さな川を渡っていると、橋の上から一人のおじさんの姿が見えた。黒のダウンジャケットに身を包み、同じく黒のニットキャップを被ったその人は、川辺に座って飲み物を手にしていた。対岸の山々が紅葉する様を見ていたのだろう。


今年は立冬を過ぎても暖かい日が続いていたせいか、小雪の頃になって気温が急に下がり、紅葉が一気に進んだ。普段は気に留めることのなかった民家の庭に佇む楓の美しさに、はっとさせられる。見渡せば赤、黄、橙に染まる山並みが、青空の下に広がっていた。まさに童謡『もみじ』の歌詞にある「織る錦」の言葉に相応しい光景だと思った。とりわけ、燃えるような赤に目を奪われる。このまま、ずっと見ていたい..と名残を惜しみながら帰路に就いた。


振り返れば今まで紅葉を楽しむことに、あまり親しんで来なかった。名立たる観光地に行って、お目にかかるものだと思っていたから。なので何気ない日常の中で感動を得られたことが嬉しくて、こうして書いている。叶うことなら来年も、またこの景色に出会えますようにと願いを込めながら。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る