第17話 東京へ
三日後、支度をして東京へ向かう電車を待っていた。
プトレマイオスから島外へ電車で出て、そこから新幹線である。
そして、その電車を待つホームでレオの生徒と待ち合わせをしていた。
そのメンバーは雪菜、美桜、恵茉、凪の四人。
電車が出発する十分ほど前にレオの生徒は姿を見せた。
「こんにちは、ヴァルゴのみなさんですよね?」
おっとりと言う言葉がよく似合う女性が声をかけてきた。
学園長や先輩たちから聞いていた格好そのままだった。
「はい、そうですよ。レオのお二人ですか?」
「ええ、やっぱりそうだったんですね。後ろ姿が美桜たちにそっくりだったので」
先輩たちに話を聞いた時から思っていたが顔見知りなのか。
「久しぶりね、澪。そっちは一年生かな。見たことのない顔ね」
「はい、初めまして。松山湊です。お言葉通りレオの新入生です」
「私としてはあなたと初めましてね。私は大津澪。レオの星皇十二宮を努めさせてもらっています」
「?はい。俺はヴァルゴの一年、松江雪菜です。一応ステラ・シャングリラのギルドマスターをやっています」
「ああ、やっぱり君がそうなのね。美桜や恵茉から話は聞いているわ」
連絡取り合っているのか。
そこから、ヴァルゴ側の紹介を湊くんにして電車に乗った。
電車では通路を挟み横一列に座席が取られており、ヴァルゴ二人とレオ一人の三人ずつで座った。
俺と美桜先輩の前には澪さんが座っている。
「そういえば、今回の情報は魔術師からと言うことらしいわね」
「ええ、こちらが捕らえた魔術師が吐いたそうよ」
「そう、まずはお疲れ様。学園都市に襲撃だなんてそうそうないことだからね。大変だったでしょう」
澪さんの声には優しさの中に苛立ちのようなものが詰まっている。
「魔術師は異能者を忌み嫌っている。こちらも今回の襲撃事件について調べさせてもらったわ。その結果として、今回の襲撃は雪菜くんの術式が目的らしいわね」
「やっぱりですか」
「わかっていたの?」
「それらしき答えを本人から聞いたので」
「そう、魔術師の悲願は魔法を完成させること。魔法とは現実の概念を書き換えるもの。君の術式とよく似ているね。まぁ、とりあえず魔術師は先天的な存在である異能者とは異なり、自らの臓器を魔術炉として献上することで魔術の構成体である魔力を得られる。魔術師にとって魔力が減ればその魔力炉たる臓器が傷つく。すなわちリスクを背負っているのね。最悪自らの死という。そんな危険なものだから世界から見放されてしまった。その後、異能は繁栄を極めた。まぁ、恨まれてもしょうがないわよね」
「そして、己の繁栄のために俺の術式が欲しかった」
「そう言うことになるわね」
魔術師とその行動による議論が東京到着まで続けられた。
東京到着後、俺たちは情報にあった事件現場を回って行った。
一つ目の事件現場、浅草の裏路地に一人の少年がいた。
目にした時は特異なことは何も思わなかった。
少し不遇な境遇に生まれた子供なのだろうと思った。
すれ違った時、それが違和感であることに気がついた。
そこで感じたのは異能の気配。
これは氷?
「みんな、離れろ!」
両側にいた美桜先輩と澪さんを突き飛ばす。
伸ばした右腕に氷塊が突き刺さる。
「いっ、たぁ」
そこに血の匂いが充満する。
しかし、俺だけの血の匂いにしては多すぎる。
前を向くと少年の腕からも大量の血が流れている。
その血がこちらを向いて氷塊になって襲っている。
「君が先日からの東京での小規模事件の犯人か?」
「犯人?僕だってしたくてしたわけじゃないんだ!あの人たちを傷つけたかったわけじゃないんだよ」
自分の強すぎる異能に呑まれかけている。
情緒も不安定になっている。
「悪いけど君を拘束させてもらう」
「いいよぉ。できるのかい?できるのかなぁ」
完全に自分を見失っている。
「皆さん、協力を」
「「了解」」
この場の全員が戦闘体制に入る。
そして、今この場所は湊くんの異能で結界を張っている。
それにより周囲からこの空間は認識が隔絶かれている。
「さぁ、これより始まりますは正義のヒーローと最悪のヒールによる一本劇です。ヒーローはもちろん学園都市より来たる少年少女。ヒールの紹介といこう今回の華麗なる劇の主役、盛岡血染。」
完全に狂い始めている。
というか、狂っている。
「さぁ、始めましょう、一世一代の大勝負。」
彼はショーを始める前の道化師のようなお辞儀をした。
学園都市の異能譚 四季織姫 @shikiorihime
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