第14話 魔術と術式
俺は降り注いだ聖剣に意識を注ぐ。
術式を発動する。
その剣の所有権を奪う。
地面から抜き、敵に向けて放つ。
「さすがは支配の術式。俺の剣も支配できるのか。」
賞賛が贈られる。
「しかし、随分と数が少ないようだな。俺が出した剣の半分しか奪えんとは。それともそれだけ十分か?」
半分、バカにされているな、これは。
「安心しろよ。楽しませてやるから。」
「イキがんな。クソガキ。」
相方さんがキレる。
「本性見えているぞ。」
魔術による攻撃が激しくなる。
特に恋のやつの方が激しくなった。
ただ、やつのは激情に駆られているので、避けるのは簡単だがアーサーの方が綺麗にこちらの隙に対して攻撃を仕掛けてくる。
近遠両方の攻撃を仕掛けてくる。
敵は強大。
しかし、こちらも学園最強(だと思う)。
空間座標を固定して入れ替える。
いわゆる空間転移である。
敵二人の間に飛び、両手で触れる。
「ジ・オーダー。」
二人の魔力炉を狂わせる。
「これで魔術は一時的に使えないな。」
だが、魔術のはずのアーサーの聖剣は消えない。
「なるほど、魔力を操作してこちらの技を止めに来たか。しかし、愚策だな。俺たちの魔力炉を狂わせるために自分の異能者としての記憶媒体の演算能力を狂わせていたら世話ないんじゃないか?」
「確かにな。でも、魔術も術式もない戦場なら俺に勝てるとも思うんだがな。」
アーサーは笑う。
それは不敵な笑みだった。
「君は勝ったつもりでいるようだが、まだまだこれからだぞ。それに君が狂わした魔力炉もその機能の一部が使えなくなっただけだ。短期詠唱は使えんが完全詠唱の魔術は普通に使えるぞ。」
「その隙を与えると思うか?」
「与える与えないと言う問題ではない。君に取れる選択肢は二つ。術式を封じたまま恋のと戦いながら、俺の魔術に備えること。そして、術式を回復に専念すること。当然、後者は俺たちにも時間を与えることになる。さぁ、どうする。」
明らかにアーサーの余裕からその魔術の威力が凄まじいことが窺える。
正直、術式無しで勝つのは難しいだろう。
どのような魔術であったとしても。
「仕方ないか。」
俺は術式の回復に専念する。
せっかくの一手であったのに奴の自信に負けてしまった。
アーサーは己の魔術を行使し始める。
「回れ、狂え、踊れ、殺せ。神を喰らうは獣。人を殺すも獣。断を犯すも獣。さぁ、潤滑たる血も、依代たる体も、記憶たる媒体も用意した。ならばここに顕現せよ、星の世を終わらせる可能性の獣。汝に縛りなぞいらん。ただ、黄昏より現れて暁に帰るがいい。魔術 無限の獣(スペル アンリミテッド・ザ・ビースト)。」
魔法陣から暗黒たる澱みのような泥が流れてきて、そいつが顕現する。
先ほどの詠唱通りの可能性にありふれた無限に成長する獣。
星すら飲み込むほどの化物がそこにいた。
「あばよ、ウィッチ・キラー。あっちの世界で待っている。」
アーサーは獣に殴られて横へ吹き飛ばされる。
化物残して自分は退場とはな。
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