第13話 侵入者
だんだん近づく足音に注意が向いていく。
その注意の先には銃などで武装した大の男女がいた。
放送から新聞部とは異なる声が通される。
「教員各位、また戦闘準備の済んでいる生徒各位に通達。敵は魔術師集団ゴッド・ノウズ。各員、戦闘を開始せよ。」
放送の声は不知火先生のものだった。
放送の内容を聞いた俺と恵茉先輩は咄嗟に叫ぶ。
「「総員、戦闘準備!敵は殲滅せよ。」」
叫んだ俺たちの方を侵入者たちが向く。
同時に銃を構えられる。
当然、発砲までに躊躇いはない。
怒号というほどの銃声が鳴り響く。
先輩は剣で迎撃、俺は銃弾の支配権を奪う。
銃弾という横向きの雨の裏から敵が数人こちらに飛んでくる。
二人がこちらに、一人は先輩の方に向かう。
俺たち二人は別々の方向に無理やり移動させられ、美桜先輩たちから引き離される。
俺は敵に押し出される形で飛んでいる。
俺は商店街のあたりまで移動させられてしまった。
「いってぇなぁ。何もんだ?あんたら。」
「何者かは先ほど放送で教えられたと思うが。」
俺の言葉にバカを嗜めるように返される。
「まぁ、良いじゃない。改めて俺たちは魔術師ギルド、ゴッド・ノウズの幹部と代表様だ。」
「そんな偉いさんが俺に何か用か?」
「それは君自身が自覚していると思うけどね。魔法使い殺し(ウィッチ・キラー)くん。」
なんでこいつらがその名前を。
と、思ったがこいつらは魔術師か、俺の悪名を知っていても不思議はない。
「それで、名前を聞いていないのだが?」
「それはお互い様だが、こちらだけ一方的に知っているのは申し訳ないか。一応名乗っておこう。剣神の魔術師(ミス・ブレイド)、アーサー・アシュビルという。」
「俺は恋の魔術師(ピンク・ラビング)だ。名前は無くてね。うちの代表は超強いよ。なんたって、敵から神と呼ばれた男だからね。松江雪菜くん。」
本当に俺のことを知っているんだな。
「さて、おしゃべりもここまでにして殺し合いと行こう。」
俺は少し考え事をしていた。
「何か?考え事か?」
「ああ、ちょっとな。神と言ったな、その名は俺がかつて殺した者の名だ。」
その瞬間、二人の眉間に少し皺がよる。
「おいおい、どうした?やるんだろ、殺し合い。」
「ああ、そうだとも君とこれから俺たちは殺し合いをする。」
そこで言葉は無くなった。
いや、必要がなくなった、という方が正しいだろう。
ここからは命の保証がなくなった。
殺し合いと言いながらこちらは両方殺すわけにはいかない。
特にアーサーという男の方は。
情報を聞き出す必要がある。
俺個人としてもこの学園都市としても。
そして、俺の頬に緊張が走る。
お互いに動きを確かめ合っている間にアーサーという男はどこからか剣を取り出した。
まさか。
恵茉先輩と同じタイプの力。
それでいての剣神か。
まぁ、この間のように体の周りの空間を固定させてしまえば良いこと。
なんて願いは虚無の向こうへ。
敵はこちらへ一歩歩き出した。
隣の男も同様だ。
恵茉先輩より強いのか。
それとも、相性が悪いのか。
わからないがどちらにしても簡単には勝てそうにはないな。
その上、こちらには武器となるものがない。
敵はこちらへ向かって走り込んでくる。
振り下ろされた剣を躱す。
正直ギリギリということはない。
当然、敵も本気ではないだろうが。
「エクスカリバー。」
一言、アーサーがつぶやく。
その瞬間、剣が輝く。
エクスカリバー、名は体を表すとはいうがアーサーという男が使う武器がかの聖剣とはな。
「素手の相手を斬るというのも悲しいものだな。レイヴァテイン。」
俺の目の前に炎を纏った剣が突き刺さる。
これは恵茉先輩のと同じ。
「なんの真似だ。」
「言ったはずだ。興が冷めると。使うがいい。あの女との実力の差がわかることだろう。しかし、確実に殺さなくてはいけないのもまた事実。二人がかりでも文句は言うなよ。呪うならばこの戦いを引き起こした己の力を恨むがいい。」
こいつらの狙いはやはり俺の力。
脅威だと判断したのだろう。
俺は目の前の剣を手に取る。
今度はこちらから踏み出す。
横に剣を振り回し、アーサーはそれを腰を反らし躱す。
「ラバーズ。」
横から魔術が飛んでくる。
細かい弾幕だ。
俺は後ろに飛んで回避する。
俺の動きに合わせて着地前にアーサーが攻撃を仕掛けてくる。
「アロンダイト、ガラティン、シャスティフォル」
上空よりかなりの数の剣が飛来する。
その中には同じ剣がいくつかある。
なんで聖剣がいくつもあるんだよ。
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