第12話 新入生大会

 翌週の月曜日。

 ついに新入生大会の日である。

 とはいっても、俺は最終日までは見ているだけなのだが。

 ただ一つ嫌なことがあるとすれば今週は土曜日まで学園があることだろう。

 今日は競技棟の観客席に向かっていた。

 もうすぐAブロックの試合が始まる。

 今日は氷焔と天野が出場する。

「やぁ、後輩くん。隣いいかな?」

 先輩方が俺の隣に来る。

 俺はどうぞと言って隣を指し示す。

 誰が勝つかどうかで盛り上がっていると、すぐに開始の放送が鳴った。


「さぁさぁ、始まるぞ、今年の新入生大会が。今年の新入生はイレギュラーを除いても粒揃い。競技場の空気も濃密だぞ。さあて、戦いの火蓋は今まさに切られようとしている。」

 今日の新聞部も元気いっぱいだ。

 そこで号鐘が鳴り響く。

「さぁ、開始の鐘が鳴り響いた。最初に動いたのは金沢天野だぁ。次世代の最強を目指すギルドの紅一点といっていいのか?暴れ牛というイメージもあるが今日の大会ではどのような活躍を見せるのか?ギルドマスターは強すぎるあまり大会を出禁になる程だがそのギルドメンバーの実力はいかに?」

 新聞部の実況に観客のボルテージは上がっていく。

「さてさて、このギルドのメンバーといえばこの男もいるぞ。ランク分けではあまり高印象は受けられなかったがこの大会で実力は発揮されるのか?甲府氷焔も動いたー。ただ、動き出すのが遅いぞこの男。すでに会場の三分の一程度の敵は倒れている。驚くべきはそのほとんどを金沢姉が倒しているということだろう。今、入った情報によりますと金沢天野の術式が判明しました。彼女の術式名は天と大地の物語、天地ということらしいです。空間系の操作術式ということなのだろうか?とはいえ、彼女の強さにも納得がいくということですね。出力もさることながら能力自体も強い部類の空間操作ときたもんだ。なんて話しているうちに生徒の数も減ってきているぞ。」

 そこで、新聞部は今までとは異なる声色を出す。

「なんだぁ、急に一部の場内の生徒が苦しみ出している。それになんとなく会場の気温が上がっている気がするぞぉ。」

 そこに立っている異質な風格の男が一人。

「おっとぉ、これはまさかこの異常事態を引き起こしたのは甲府なのか?しかし、倒れていく生徒の中心にいるのは甲府だ。多分そういうことなんだろう、多分ですが。少しお待ちください。こちらも情報が入ってきました。甲府の術式は八大と八寒の物語、八大寒地獄というそうです。効果としては敵と定めた相手に裁きと称した熱上昇による攻撃を加えるということらしいです。つまり、冤罪攻撃ということだ。」

 冤罪っていう単語は失礼極まりない。

「どんどん生徒の数が減っていっている中でピンピンしているのは金沢と甲府の二人だがこれ以降目立った活躍をする生徒は現れるのか?」

 新聞部の言葉も虚しく、そこから目立った成績を残した生徒はいなかった。

 結果、Aブロックのトーナメント出場者は天野と氷焔だ。


「Bブロックが始まったぁ。このブロックには現最強と未来最強の両メンバーがいるぞ。他にもちらほら強者が揃っているが私的にはアンビーストとシャングリラの新潟凪咲と仙台凛の二人が注目株だ。」

 さて、今回の開始の鐘が鳴り響いた。

「今回はほぼ全員が同時に動き出す。まさに大乱闘といった様子だ。動いていないのは新潟凪咲、ただ一人。アンビーストただ一人のBランク、微動だにしない。変わって、仙台はバッタバッタと敵を薙ぎ倒している。しかし、こちらも異様。両手に短剣を、腰には双銃が。これはまるで腕が四本あるかのように巧みに使い回し敵を倒していっている。ここで全員の目が動かない新潟と動き過ぎる仙台に固定されている。当然、仙台は反撃するだろうが、新潟はどうだろうか?と、思っていたら今まさに生徒の数人が新潟に向かって術式を展開している。しかし、これに向かう術式の出力が急に落ちていっている。」

 会場にどよめきが広がる。

「先に新潟の術式について解説していきましょう。術式名調律と録音の物語レコード・チューニング。術式の出力を調整できる術式ですね。しかも、強制効果ということらしいです。次に仙台の術式は。」

 新聞部が仙台の術式を解説しようとしたところで会場周辺から爆音が鳴り響き、大勢の足音が響き渡る。

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