第11話 嵐の前の
「美桜先輩、向こうのサブマスターとやりますか?」
ずいぶん暇にさせてしまったと思ったので、そう聞く。
「そうね。後輩くんの戦いぶりを見たら私もやりたくなってきちゃったわ。」
「こちらもSランク同士全力でやらせてもらおう。」
千葉先輩も同意したので戦いが始まった。
その前に俺は恵茉先輩を抱っこして、場内の端へ連れていく。
戦いは凄まじいという一言に尽きた。
美桜先輩が砂の場内に植物を咲かせ、それを成長させることで攻撃する。
千葉先輩はその植物を再生させ続けることで細胞を死滅させて攻撃を防いでいる。
その上、千葉先輩はかすり傷程度なら瞬時に回復できるときたもんだ。
美桜先輩の術式では自分の回復は難しいらしい。
千葉先輩の術式は再生と医療の物語概念殺し(コンセプト・キラー)というらしい。
美桜先輩の術式は成長と衰退の物語エンドレス・ワルツという。
両名ともに人体や動植物の構成に関わる術式ということだ。
二人の勝敗は実力と発想力次第といったところだろうか。。
事実、千葉先輩が行うはただ同じことの繰り返し。
故に、この勝負、勝者は美桜先輩であった。
美桜先輩の一撃に千葉先輩は気を失う。
「この試合、制したのはギルド、ステラ・シャングリラ!」
観客が歓声を上げる。
俺らは二人の先輩を医務室にまで運ぶ。
その日の戦いは新聞部によって学園中、いや学園都市中に知れ渡った・
曰く、ヴァルゴ最強の男ここに権限せし、と。
ゴールデンウィーク明けの一週間、俺たちは中間テストの期間であった。
その後に来るのが何を隠そう新入生大会である。
「さぁさぁ、今年も来るぞ。この時期が。といっても、私も初めても経験なのですが。」
放送を聴いている生徒たちから笑い声が響く。
「来週から始まるのは新入生大会だ。こいつは名前のまんまだが新入生である一年生による全体競技だぞ。百人余りの生徒たちによる四ブロックのサバイバル戦とその生き残り八人によるトーナメントで優勝者を決める大会だ。なお、今回は以前のギルド抗争練習試合の結果から松江雪菜は参加せず、優勝者とのエキシビションマッチになることになったぞ。」
聴いてないんですけど。
初耳の話をこの放送で受けた。
そんな俺を他所に放送は続けられる。
「サバイバル戦のブロックは本日の放課後に発表されるぜ、みんなも確認するんだぞ。私も放課後に確認させてもらうぞ。」
その日の昼休みの放送はそこで終わった。
その日の午後は皆がソワソワしていた。
寮にクラスのみんなで帰ると五人の先輩たちがいた。
五人というのは美桜先輩、詩先輩、津師先輩、恵茉先輩、千葉先輩であった。
「みんな、おかえり。今日の放送はすごかったね。」
「みんなはブロックの確認はした?」
美桜先輩と詩先輩が開口一番そう聞いてきた。
「その前になんで津師先輩たちがいるんですか?」
「そうだった。雪菜くん以外は初めましてだね。僕は津師宗馬だ。生徒会書記をしている。よろしく。」
「私たちも一応しておこうかな。私はエニィ・アンビーストのマスターで名古屋恵茉です。この間、後輩くんに喧嘩を売った人です。」
「僕は千葉凪です。アンビーストのサブマスターでうちの上司と一緒でこの学園の三年生です。」
こっちのいつメンも挨拶を済ませる。
そのあとは去年の新入生大会の様子なんかを聞いていた。
そこで聞いた話によるとみんなは凛がB、氷焔がA、好美がCという話だった。
「そうだ、当然だけど私たちのギルドの新入生も参加するから。私たちが負けたことが悔しかったみたいで俺たちであの男に勝つんだって息巻いていたよ。」
ええ。
ちょっと面倒くさそうだなぁ。
「まぁ、みんなも頑張ってね。」
「なんか先輩毒が抜けたというか、優しくなりました?」
俺は素朴な疑問を問いかける。
周りの先輩は大爆笑といった感じだ。
そんなにおかしいだろうか?
「うーん、なんか負けちゃって肩の荷が降りたみたいだね。」
「昔は私が一番にならなくちゃって大変だったんだから。」
千葉先輩が横からそう言葉を溢す。
俺たちが話していると金沢姉妹が帰ってきた。
二人からも話を聞き、二人はAとDのブロックにいるそうだ。
「そういえば、大会って何日間でするんですか?」
「ん?ああ、大会はブロック戦が四日間、トーナメントが二日間で行われるよ。」
津師先輩が教えてくれる。
俺たちは一緒に夕食を食べることになった。
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