第10話 雪菜の実力
授業が始まって、二週間ほど経った頃。
エニィ・アンビーストのギルドマスター、名古屋恵茉先輩が教室に来た。
そこで、一言俺に対して、練習試合がしたいと言う話を持ちかけた。
「練習試合ですか?うちのギルドはできたばっかりでそれに実力もまちまちですから。」
「なら、君を含めた二対二の試合でしよう。私たちは私、ギルドマスターとサブマスターの二人で出るから、君も君と美桜くんで出たらどうだい?」
「その話、私が認めるよ。」
そこで急に教室に美桜先輩が入ってきた。
「美桜先輩!いきなりですね。」
「横から失礼します。新聞部です。先ほどの発言は勝負を受けることを決めたと言うことでしょうか?」
新しい人(一応クラスメイトだが)が入ってきた。
「ええ、認めます。」
「そんな。」
勝手に決めないでほしい。
「ほら、サブマスターもそう言っているよ。」
「わかりました。やりましょう練習試合。」
周りのみんなが喜んでいた。
最近座学ばかりでみんな退屈していたのだろう。
その日の昼休みには学園中に広まっていた。
先生にも広まっており、不知火先生には競技棟を空けておいた、と言われてしまった。
その日の放課後、改めて日付を設定した。
早いほうがいいと言うことで翌日には行うことになった。
その翌日の放課後、今、競技棟の控え室に俺と美桜先輩はいた。
あと十分で試合開始だ、
その十分がものすごく長い。
緊張で心臓がうるさい。
そんな俺も気遣ってか美桜先輩が色々と話しかけてくれる。
そんな感じで十分が経ってしまった。
競技場に出る。
多くの生徒が観席に座っていた。
中央から等間隔の隙間を開けて立っている。
目の前にはアンビーストの二人がいる。
空気が変わる。
脈と呼吸が安定し、脳が冴え渡る。
俺の意識が切り替わる。
僕の意識が目覚める。
そこで試合開始の宣言がされる。
僕は前に出る。
それに呼応して恵茉先輩も前に出る。
ほんの数センチぐらいまで近づくと、歩みが止まる。
「十秒あれば十分か。」
敵からぽつりと言葉が出てくる。
「十秒もいらねえよ。三秒でいいさ。」
僕は踏み込み、蹴りを加えようとする。
すごく速かった。
しかし、それより速い蹴りで僕は大地に伏す。
「一秒でよかったね。二秒で念仏でも唱えてもらったらよかったね。私の勝ちだ。」
恵茉先輩は勝ち誇っている。
僕は負けたとは思っていない。
僕はその場から消える。
その瞬間、恵茉先輩に一撃を加える。
「先輩、バカなんですか?念仏ってのは他人のために唱えるものでしょう。」
そう言いながら、内心では悪態をついている。
先輩に攻撃を加えるのに術式を使ってしまった。
「そんなに嬉しいのかな?術式を使ってまで攻撃を加えたことが。」
「そんなに悔しいなら、あなたも術式使ったらどうですか?美桜先輩、手は出さないでくださいね。」
「あなたもよ、凪。手を出しちゃダメだからね。」
会場が盛り上がる。
新聞部の実況に気合が入っている。
「じゃあ、ちょっと本気で行くよ。後輩くん。神器と火炎の物語レーヴァテイン。」
何もない先輩の手から急に炎の剣が現れる。
「これが何か、わかる?」
僕は首を横に振る。
「これはね、レーヴァテインって言って、北欧神話の産物だよ。私はこういう神話の武具を作ることができるんだ。特に炎系統は美味いんだよ。私に近い能力で獅子宮レオに大津澪っていう子がいるんだけどね。まぁ、それはこれから知っていくことになるだろうね。私たちに代わってこの学園最強になるならだけど。」
先輩は剣を振り回し、こちらに飛ぶように走ってくる。
その周りには火の粉が散っており、なかなか消えていないことから周囲もかなりの高温であることがわかる。
それに代わって僕の術式では武器を用意するのには準備がいる。
そもそも僕の術式は支配の術式である。
攻撃性能には応用がいる。
とりあえず、さっきと同じように体の周囲に大気を圧縮して武具にする。
先輩の攻撃を受ける。
「あっつ。」
「そりゃそうでしょう。炎の剣よ。」
直に触れたわけでもないのにこの熱量。
流石はSランクというところだろうか。
それにここでの戦闘経験もあるということだろう。
まぁ、戦闘経験はこっちもかなりあるわけだけど。
そんな考え事している間も恵茉先輩の豪撃連撃を続けている。
そこで僕は炎を支配する。
剣の炎が止まり、熱量が沈む。
「っ、何をしたの?」
当然、彼女には理解されない。
それどころか、そこにいたすべての人間に認識できなかった。
教師でさえも。
「これは僕の術式です。支配と革命の物語ジ・オーダー。世界の概念を支配する。それが僕の術式、時間などの素材さえあればあらゆるものを操作できます。」
「あらゆるもの、か。流石はSランク、規格外だな。」
「だから、こういうこともできるんですよ。」
僕は彼女の体を縛る。
縛るとはどういうことか。
彼女が攻撃に移ろうと大地を踏み込んだのであろうその瞬間。
「え、動かない。」
彼女の体は動かない。
なぜなら彼女の体を支配しているからである。
「これが君の力か。」
そのまま、僕は歩いていく。
「これが僕の実力ですよ。お疲れ様でした、先輩。」
僕は恵茉先輩の首筋に手を置き、術式を起動する。
彼女の意識を支配して、眠りにつかせる。
「強い、な。君、は。」
意識が遠ざかりながら先輩はそう口にする。
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