第8話ゲーム配信3

「そういえば最初にゲームオーバーになった部屋って何だったんでしょうか……。もう一回行ってみますか」


青鬼から逃げ切った後、私は一度セーブしてからそう呟いた。タケシのいた部屋に青鬼を連れ込んでしまったので、お陀仏してないか確認しに部屋に入ったのだが、部屋には青鬼どころかタケシもいなくなっていた。タケシの入っていたクローゼットに『ハンカチ』が落ちていたのでとりあえずそれを回収しておいた。


「結局タケシともまたはぐれちゃいましたし、タケシ以外の二人も見つけなきゃですね。あれ?前は鍵がかかっていたのに今度は開いてる?」


最初にゲームオーバーになった部屋の前に来たのだが、鍵がかかっていたはずの扉は今は開けっぱなしになっている。セーブして中に入ってみようかな。


「あ、ここは浴室だったんですね。うわ、なんですかこの筆洗いバケツの水みたいな色のお湯は……あ!お湯を抜いたら『プラスドライバー』が出てきましたよ!なんでお湯の中にあるのかはわかりませんが、とりあえず持っておきましょう!」


コメント

・筆洗いバケツの水www

・筆洗いバケツとか言う言葉久しぶりに聞いたわ

・何でこんなにお湯の色が変なんだろうな

・青鬼の出汁だろ

・草


その後浴室の近くにあったトイレから『洗剤』を入手し、3階の屋根裏部屋にあった不自然なドアにプラスドライバーを使い、『ドアノブ』を入手した。屋根裏部屋に入ったタイミングで卓郎というはぐれた友達の1人と出会ったが、『手分けして館から出る方法を探そう』と言われて一緒に行動はできなかった。1人は寂しいなぁ……。

そのまま3階の屋根裏部屋の近くにあった寝室に鍵を使って入ってみた。中は大きめの絨毯が敷いてあり、ベッドが2つとクローゼットが1つというシンプルな部屋だった。


「青鬼が来たらここのクローゼットに隠れれば逃げられそうですね。この部屋で気になるところは特になさそうですけど、わざわざ鍵を使って開けるってことは絶対なんかありますよね……うーん……」


その後部屋の隅々まで何かないかと探してみたが、これと言って気になることがなかった。絶対何かあるはずなんだけど……。ん?今気づいたけど、ベッドの配置が少し変な気がする。少し違和感を感じる程度だけど……。そう思って壁に近かったベッドを右から押してみると、下に降りれそうな穴がベッドの下に隠されていた。


「やっぱり私の予想通りなんかありましたね!ふふん、このゲーム余裕すぎますね!!」


コメント

・よく気づいた

・鍵使って何もないわけないもんな

・正直ここ初見でだいぶ時間かかった

・余裕なら最後までやりますか

・確かに!


「すみません調子乗りました。続きはいつか絶対やるので今日だけは勘弁してください」


コメント

・草

・wwwww

・手のひらクイックルワイパーで草

・どうしてもやりたくないんやなwww


ふぅ、危うく調子に乗りすぎて初のゲーム配信がクリア耐久配信になるところだった……。穴から下に降りると真ん中にピアノが置いてある部屋に移動した。ピアノの鍵盤を見てみると、一部だけ血がべっとりとついていた。その血を洗剤を染み込ませたハンカチで拭いてみると、4桁の数字が出てきた。


「なんで数字以外の部分は綺麗に消えてるんですか……」


コメント

・ゲームだからね、仕方ないね

・気にしたら負けだよ


「確かに気にしたら負けですね。えーっと、メモに数字を書いて、っと。……っえ?きゃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!」


鍵盤に書いてあった数字をメモに書き込んだ後、振り返ってみるとなんと!どうしてそこにいるのか理解できない青鬼がいるではありませんか!!


コメント

・事件ですか!?

・事件現場の第一発見者みたいな叫び方

・ご近所さんに聞かれたら通報されそう

・綾華ちゃんのビックリした声でビックリする

・こんなに驚いてくれるなんて製作者も俺もにっこり


「どうやって私の背後に出てきたんだよ!!!律儀に数字見終わるまで待機しやがって!!そのまま回れ右してお風呂にでも入ってきてください!!!!!」


自分でも何を言っているのかよくわからないが、私は全力で屋根裏部屋に逃げ込んでクローゼットの中に隠れた。クローゼットに入ってから2、3秒くらいすると部屋の扉が開く音が聞こえた。そのまま部屋の中を探し回った後、扉を開けた音が聞こえたのできっと逃げ切れたのだろう。


「はぁ、逃げ切れたみたいですね……。なんかどっと疲れました……」


そう言って部屋の外に出た瞬間、目の前にいた。ブルーベリーの擬人化が。普通に目が合った。


「は?」


無事2度目のGAME OVER。幸いなことにクローゼットから出た時点でセーブはしてたから、ゲームの進行の点では特に問題はない。ただ理不尽な死で精神に問題が起きそうです……。


「マネちゃん次会う時覚えておいてね」


コメント

・声に感情がない。だいぶキレてるとみた

・これは運が悪かったね

・このゲーム何周かしたことあるけどこんなことになったことないwww

<Re:Live!公式>・担当マネージャーです。ホラーが苦手だと思ってませんでした。ごめんなさい

・公式アカウントwww

・ちゃんと放送見ててくれるいいマネージャーさん


「あれ?今コメントに事務所の公式アカウントあった?…ってマネちゃん!?今のはネタで言っただけだから!!全然マネちゃんには怒ってないから謝らないでください!」


うぅ、マネちゃんには悪いことしちゃったな……。私が100%悪いから今度マネちゃんは美味しいご飯にでも連れて行こ……。一応LINEで『私が悪いので気にしないでくださいごめんなさい。今度ご飯奢ります』と、送った。


「気を取り直して続きやっていきますよ!」


『叙々苑行きましょう!!』という返信を見なかったことにして、私はゲームを再開した。

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