第27話 ファントムVSアメジス!? 紫織の決意!
クモノースは自らの居るアジトで次なる作戦をどうすべきか考えていた。
切り捨てた筈のファントム・ナイトが生まれ変わり、新たな敵として立ちはだかった為である。
本来の計画であればこのまま彼女を使い潰してしまえというユーヴィからの指示を後から受けていたが予想外の展開に彼もまた動揺していた。
「…ファントム・ナイト。我々に忠誠を誓いながらも寝返った裏切り者の騎士。ならば此処は彼女を苦しめる策を練るしか有りませんねぇ。」
現場から回収したのは彼女が嘗て使っていたシャドウブレスという変身機能を
兼ね備えた物の複製品。そしてとある事を思い付いた彼は気味の悪い笑みを浮かべながら指示を出すとコマンドソルジャーと共に1人の兵士が街の方へと赴くのだった。
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「月影紫織さん...か。」
翔太は彼女に対し何処となく距離感を感じていた。
何故なら嘗てファントムナイトだった頃の彼女に遭遇し、ノートを奪われた挙句に引き裂かれたという彼にとって些細なトラウマの様な物が残っていたからだった。
「小鳥遊君、小鳥遊君ってば!」
「へ?あ...ごめん、どうかした?」
「どうかしたじゃないですよ...夏休み前の小テストの予習やろうって話してたじゃないですか!それで小鳥遊君に勉強教えて貰ってたのに。」
蒼空にそう言われると翔太は我に返った。
実は放課後に空き教室で蒼空と翠、リーナに勉強を教えていて
肝心な刹奈は部活で席を外している。奏音はアイドルの仕事で学校には来ていなかった。
「ごめん、ごめん。」
「どうかしたんですか?何かいつもの小鳥遊君らしくないような気がします。」
「そうかな?...少し考え事してただけだよ。」
「...?本当に?」
じーっと見つめられると翔太は何度も頷く、それから少しして勉強が再開した。
それから数時間後に区切りが付いて勉強が落ち着いた時、教室の窓がノックされて
振り返ると鷲の姿をしたクラウスがノックしていた。リーナが開けてやると
彼は開口一番にこう言った。
「ファントムナイトが、彼女が街で暴れています!!」
「何だと!?」
彼の言葉を聞いて一番動揺していたのは蒼空、彼女は鞄を手にすると
真っ先に飛び出して行く。その後を追う形で翔太達も飛び出して
街中へと向かって行くとそこに居たのはやはりファントムナイトで
蒼空達に気付くと振り返った。
「どうして...どうしてまたこんな酷い事を!!」
「...来たか腰抜け共。来い、今度こそジュエルストーンを砕いてやる!!」
「みんな、いきましょうッ!!」
蒼空の掛け声と共に翠とリーナが頷く、そして前へ出ると同時に叫んだ。
「「「」ジュエルストーン、コネクト!チェンジッ──!!」」
「サファイア!!」
「エメラルド!!」
「トパーズ!!」
眩い光と共に現れたのは青、緑、黄の3人の戦士達。
そしてファントム・ナイトの放った弾丸を避け、サファイア・ナイトが先行し仕掛けると
彼女が繰り出した右手の拳を躱しては右足を用いて鋭い回し蹴りを反撃で放った。
それを左腕で防いだ直後に今度はエメラルド、トパーズ・ナイトの双方が仕掛けるが
立て続けに躱されてしまう。距離を取ったファントム・ナイトはダークセイバーの刃を展開し襲い掛かる、だがその狙いは3人ではなく翔太だった。
「小鳥遊君!?くッ!!」
「消えて無くなれぇええええッ!!」
翔太が逃げようとしたが間に合わず、彼の目の前へ差し掛かるが間一髪でトパーズ・ナイトが介入しその刃をシトリンフルーレで受け止めていた。
「一体何の真似だシオリ!!血迷ったのか!?」
「ふふふッ...私は正気だ。貴様らは私の敵、倒すべき相手!それに変わりは無いだろう?はぁあッ!!」
振り払った直後に空中へ発砲する、弾丸が降り注ぐと周囲を破壊し薙ぎ払った直後にクモノースが現れる。そして翔太とトパーズ・ナイトの背後から走って来た紫織も駆け付けた。
つまりあのファントム・ナイトは偽者という事になる。
「あれは...まさかファントム・ナイト!?」
「おやおや、主役のご登場ですねぇ。我々を裏切って彼女達へ味方した気分は如何です?」
「クモノース...!どうしてこんな事を!!」
ファントム・ナイトの横へ来たクモノースが紫織達を見て嘲笑う。
「どうして?クククッ…ご冗談を。元はと言えばこれが貴女の本当の姿でしょう?辺りを見て御覧なさい、元の貴女は平然と己が力を振り翳し、誰かを傷付けていたんですよ?そしてこのファントム・ナイトこそが貴女の本当の姿であり闇そのもの!!」
「私の...本当の姿...私の中の闇...。」
「それにそこの少年を傷付けたのも貴女。クククッ...つまり貴女は孤独なんですよ。何をどう足掻こうが無駄なのです!!」
そう言われ、紫織は翔太と目の前に居るファントムナイトと街の惨状から目を逸らしてしまう。するとサファイア・ナイトとエメラルド・ナイトの2人は彼女へ声を掛けた。
「前を向いて紫織!!」
「そうだよ、逃げちゃダメ!!」
近くに居たトパーズ・ナイトもまた彼女へ呼び掛ける。
「今こそ自分の影を振り払う時だ!本当のお前自身を取り戻せ、シオリ!!」
そう言われた紫織は拳を握り締め、頷く。
そして翔太の方へ向いて話し掛けた。
「…翔太君、あの時はごめんなさい。操られていたとはいえ…貴方を故意に傷付けてしまった。決して許される事じゃないのは解ってる…こんな私でも貴方達の仲間として受け入れてくれるのなら……。」
すると翔太は彼女の元へ近寄り、立ち止まった。
「実はずっと月影さんの事が怖かったんだ…前にファントム・ナイトに襲われた事があったから。でも信じるよ今の月影さん…ううん、紫織さんはファントム・ナイトじゃないから!!」
そう言われた彼女は小さく頷き、再びクモノース達と向かい合う。そしてポケットからジュエル・リンクルを取り出して構えた。
「私は逃げない…!!自分の闇に…過去に向き合い、乗り越えてみせる!!ジュエル・ストーン、コネクトッ!チェンジ・アメジスト!!」
彼女はジュエル・ストーンをリンクルへセット、紫色の戦士アメジスナイトへ変身し身構える。
「──紫色に輝く慈愛の騎士!アメジス・ナイト!!」
「…小賢しい真似を。行きなさいファントム!!」
クモノースの呼び掛けに応じたファント・ムナイトが前へ出てダークセイバーを構える、そしてアメジス・ナイトと対峙していた。
「裏切り者には消えて貰う!!」
「悪いけど…私は消えない!!」
お互いに駆け出し、ファントム・ナイトがダークセイバーの銃口を差し向けて発砲するがアメジス・ナイトはそれを躱しつつ跳躍する。
そして空中でアレキサンドハープを呼び出して可変させると光の矢を立て続けに放った。
幾ら偽者でもその強さは元のファントム・ナイトであった紫織と匹敵する、その証拠に動きや反撃方法もまた紫織本人を上回っていた。
着地し今度はお互い素手で戦ったがパワーも互角だった。
「くッ…強い…!!」
「クスッ…大人しく諦めたら?私はお前の影、お前に私が倒せるものか!!」
「そうね…貴女は私の影であり闇そのもの。犯して来た過ちも罪も消えない…でも私はそれを背負って生きていく!もう二度と同じ過ちは繰り返さない!!」
「小癪なぁあッ──!!」
ダークセイバーのブレードを展開し迫り来るのに対しアメジス・ナイトはアレキサンドハープから光の矢を放って迎撃する、そして至近距離でお互いに睨み合った末にアメジス・ナイトは彼女を跳ね除けて力強く左手の拳を繰り出して殴り飛ばした。防御姿勢ではあったがまともに受けてしまったせいでファントム・ナイトは吹き飛ばされる、それでも再び立ち向かって来る彼女の攻撃をアメジス・ナイトは弾き返しながら的確に受け流していった。
「おのれぇ…私はファントム・ナイト…ッ、ヴィランデールの──!!」
「──さよなら、ファントム!!」
素早い動作からアレキサンドハープを構え直し、光の矢を添えて狙いを定める。
「邪悪を射抜く愛の力!受けてみなさい!!アメジス、シャイニング・アロー!!」
そして放たれた一筋の閃光がファントム・ナイトの胸部を穿つ、そして光が彼女を包み込むと断末魔の叫びと共に消えてしまった。
クモノースはコマンドソルジャーへ指示を出そうとしたが間に合わず3人に囲まれてしまった。
「おのれ…!此処は退きますよ!!」
「はッ!!」
2人の姿が消え、アメジス・ナイトは安堵したのか一息つく。そこへサファイア・ナイトがやって来て微笑み掛けた。
「これで本当に大丈夫ですね!」
「うん…ありがとう、みんなのお陰よ。私はもう一人じゃないって実感出来たから。」
こうして紫織は再び現れた自らの過去を断ち切り、アメジス・ナイトとして第2の人生を歩み出す事が出来る様になったのだった。
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撤退したクモノースは1枚の用紙を自室で見つけ、それを読み上げると彼は歯を食いしばって握り締めていた。
「最後通知…この私が…!?リザドに代わってヴィランデールに誰よりも貢献し戦って来たというのに…!!」
納得が行かぬまま怒りを堪えていると
背後から聞こえて来たのは冷たい女性の声、振り向いたクモノースはしゃがみ込んで頭を下げた。
「…納得がいかぬのか?リザドに続き、これだけの失態を重ね続けた貴様がよく言えたものだな、クモノースよ。」
「もッ、申し訳ごさいませんッ…陛下!!」
「ヴィランデールとは…我が父上が生み出した先行部隊であり、エリートの集りだ。フルール王国を再度侵略したのも我が祖国、ノワール帝国との長きに渡る争いに決着をつける為。そして忌々しい伝説の戦士、ジュエリィナイツという存在を消し去る為。忘れた訳ではあるまい?」
「それは…承知しております……。」
「チキュウ侵略の目的は王女を捕らえる事、そして器を見付ける事が目的の筈。何故手こずっているのだ?場合によってはこの場でお前を処刑しても構わんのだぞ?」
「ど、どうか…どうかそれだけはお許し下さい…ッ!!必ず、必ず成果を上げてみせますから!!」
「そうか…ならば期待しておるぞ?精々励むと良い。必要とあらば私を呼べ、助太刀してやる。」
声の主はそう言い残すと消えてしまった。
クモノースはガックリと項垂れながら今後の作戦をどうするか思考を巡らせていた。
後任となる怪人はあと2人居るがどうなるかは解らない、場合によっては纏めて処刑される可能性すら有るのだから。
「おのれ…ジュエリィナイツ共め…!!この私に尽く恥をかかせるとは…ッ!!」
するとクモノースは何かを思い付いたのか不気味な笑みを浮かべる、彼の最後の作戦が幕を開けようとしていた。それはこれ迄部下であるコマンドソルジャーらに任せていた全てを自分で担うという形で行う作戦で成功さえすれば
どうにかなる…自分は首の皮一枚繋がったまま
作戦そのものを継続出来るのだ。
「……まだ終わりではない。今に見ていろ、私は絶対に終わらない…私はエリート中のエリートなのだから!!」
最後通知を握り締めた彼はそう言い放つと自室を後にし、次なる作戦を部下達へ伝えに向かう。そしてそれは密かにゆっくりと動き始めていた。
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