第23話 大好きを守れ!エメラルドの新しい力!

とある小学校のグラウンドに現れたのは痩せ型の男。それはクモノースが扮する人間態で、

彼は裏手から中へと入り込んだ。夕暮れ時の校舎内には既に児童は全員帰った後でどの教室にも誰も残ってなどいなかった。


「…ヒトの子供達。彼等は夢と希望に満ち溢れ、眩い輝きを持つ……故に消えた時に生まれる悲しみや絶望も大きい。」


彼が上着の内ポケットから取り出したのは小さな短剣、それを落ちていた消しゴムへ突き刺すと両手足の生えた白い消しゴム型のクライナーが生まれた。


「クライナァアアアアッ!!」



「クライナー、彼等の好きなモノを片っ端から消して回るのです。そうすればアンチエナジーも溜まる筈…それも上質なモノが!!」


試しにクモノースが目を付けたのは背後の掲示スペースに貼られている無数の絵、その中からハンバーグの絵、焼きそばの絵、チャーハンの絵、ラーメンの絵が描かれた4枚を剥がしてクライナーへ放る。するとそれを器用に右手の消しゴムだけで消してしまったのだ。


「これはまだほんの序の口…後はこれに載ってるモノを消しましょうか。」


それから彼は本棚に有った[食べ物図鑑]という物を手にしてからクライナーと共にその場から消えてしまった。その光景を偶然にも1人の少女が見ていた事を知らずに。

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異変が起きたのはその日の夜、相次いで特定の食べ物だけが消えてしまうという事態が発生し単なる偶然か、或いはタチの悪いイタズラか何かと思われていたのだが蒼空達の家でも同様の事が発生し混乱を招く事となっていた。そんな騒ぎが有った翌朝、翠は昨夜の出来事を考えながら1人で登校していると薄紫色の長袖シャツと紺色の半ズボンを身に付けた黒い髪の少女が友達と思われるグループの子達から何かを言われた後、離れて歩いているのを見掛ける。気になった彼女は少女へ声を掛けた。


「お友達とケンカしちゃった?」



「ううん…違う。みんなが真理の事、嘘つきって言うの。」



「嘘つき?どうして?」



「…昨日ね、学校に忘れ物を取りに行ったら私の教室に変な人とオバケが居たの。」



「変な人と…オバケか。何かの見間違いとかじゃなくて?」



「もういいよ、どうせお姉ちゃんも真理の事嘘つきだって思ってる…ママやパパにも話したけど誰も信じてくれなかったもん。」


真理は翠から離れて歩き出すが翠が近寄って話を続けた。


「信じるよ。例えパパやママ、お友達が信じてくれなくてもお姉ちゃんは信じる!」



「本当?」



「うん、本当。じゃあ学校終わったらそこの公園で待ってて。お姉ちゃんと一緒に見に行こう?」



「…!うん、解った!」


真理が頷くと翠と指切りを交わして真理はそのまま走り去ってしまった。翠もその足で学校に向かい、自分の教室へ来るとやはり昨日の話しで持ち切り。蒼空に至っては机に伏せて凹んでいた。


「どうしたの蒼空ちゃん?何かいつもと比べて落ち込んでるけど。」



「あ…翠ちゃん。実は昨日の夜、出前のお手伝いしてて…ラーメンとチャーハンをいつもの岡持ち付きの自転車に載せて運んでたんです。それで、お家に着いて中身を開けたら……。」



「開けたら?」



「チャーハンとラーメンが綺麗さっぱり無くなってたんです!!有るのは空の器だけで…お客さんに謝ってから家に帰って聞いても確かに渡したって言われるし…私が食べたんじゃないかって疑われるし……はぁ…。」


彼女の家は天音食堂、チャーハンやラーメン等も出しているのだが今朝からその2つは何故だか出せないまま。話によるとオマケに焼きそばも出せないのだという。


「お店は大丈夫なの?」



「3品出せなくても何とか営業は出来ます。ただ…うちのお店のラーメンセットは人気で、みんな大好きだから出せないのは…やっぱり寂しいというか。」



「そっか……。」


周囲の話に耳を傾けていると聞こえて来るのは

「ハンバーグがいつの間にか消えた」、「夕飯にチャーハン作ったのに無くなってた」といった話ばかりだった。それから始業のチャイムが鳴って授業が始まり、約数時間経過すると昼休みを迎えるのだがそこでもやはりあの異変は起きていた。購買へ訪れた翠がサンドイッチを買いに来た時、担当の若い男性が頭を抱えているのを見つけた。彼の近くにあるレジには売り切れの札が立てられている。


「あれ?サンドイッチがもう無い…そもそもパンも無い。あの、今日はパンもう売り切れですか?」



「ごめんよ、実はサンドイッチだけじゃなくてクロワッサンやメロンパン、餡パンやクリームパンもカレーパン、此処へ来たら他のも全部無くなってたんだ。確かに仕入れた筈なんだけどな……忘れる訳無いし…。」


翠を除いて購買へ来ていた生徒達はガッカリした面持ちで立ち去って行った。


「相次いで食べ物が消える…もしかしてこれってヴィランデールの仕業!?」


考えられる事はそれしかない、つまり一連の騒ぎは全てヴィランデールが関与している可能性があるという事なのだがその確たる証拠がないのもまた事実。彼女は1人悩みながら蒼空達の待つ屋上へ向かって行った。

扉を開けると既に皆が集合していて彼女に気付いた蒼空が手を振って合図を出していた。


「あれ?翠ちゃん、お弁当は?」



「それが…購買に行ったらパンが何も無くて。それにお母さん今日は大事な会議で仕事早く出ちゃったから。」



「成程…じゃあ私のお弁当を少しあげます!好きなのどうぞ!」



「へッ!?幾ら何でもそ、それは…。」



「少し減っても大丈夫ですよ。何が良いですか?卵焼き?それともウィンナー?」


蒼空が先に爪楊枝を翠へ渡して色々選ばせていると翔太が唐揚げを、リーナが鮭の切り身、刹奈がミニトマトをそれぞれ空の器へ入れて渡して来た。


「…少しでも食べなよ、午後がキツいよ?」



「うむ、食べる事も騎士にとって大事な事だからな!」


得意気にリーナが話している中で奏音は水筒を渡して来た。


「奏音ちゃん、これ何?」



「お茶。食べる時に必要でしょ?私、普段は楽屋とかで1人でロケ弁食べてたけど…こうして皆と食べるの初めてだから。それに私も貴女の友達…でしょう?」


受け取った翠は彼女へ「ありがとう」と返し、翠は各々から貰ったおかずを食べて昼休みを終えると午後の授業を受けるべく各々のクラスへと戻った。

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そして同じ日の放課後、翠は約束通り真理と共に小学校の校門前で待ち合わせをすると夕方頃に彼女と共に校舎へと入る事に。裏口からこっそりバレない様に侵入した2人は歩きながら周囲を見回していた。


「真理ちゃん、お化けを見たのは何処?」



「2階の教室で2年4組だよ。」



「解った。2年4組だね。」


翠と真理は2年4組へ来ると引き戸を開けて中へ入る、そして周囲を見回したが特別変わった物はない。有るのは並べられた学習机と後ろには絵や習字の紙を掲示するスペースが有るのだが翠がそれを見た時、何処か違和感があった。


「…?テープの跡だけが残ってる。」


それも1ヶ所だけではなく何ヶ所、それも全て剥がした様な跡がそこには有る。

意図的に剥がしたのか或いは故意に剥がしたのか迄は解らない。


「真理ちゃん、此処には何を貼ってたの?」



「みんなが好きな物だよ。食べ物とか好きな事とか好きな物とか色々!」



「食べ物…例えばラーメンとかチャーハン、ハンバーグとか?」



「うん。確か有ったと思うよ?」


真理の言葉に対し翠の中に一つの可能性が過ぎった。それは相次いで食べ物が謎の消滅を遂げているという事件の中にそれ等が含まれているという事実。だがそういった不可解な事を引き起こせるとすればヴィランデールしかいないのは解っている。すると隣に居た真理が翠の手を引いて本棚へ案内した。


「それと…あのねお姉ちゃん、本も無いの。」



「本って?」



「食べ物の本。その本を見ながら真理達も絵を描いたんだ。」


本棚には1冊分の空きスペースが存在し確かにそこから抜けた形跡が残されている。

考えていると突然、翠の携帯が鳴ってそれを取り出してみる。画面には蒼空という字が表示されていて受話器のボタンをスライドして応答する。


「もしもし?」



[大変です翠ちゃん!街中の食べ物がどんどん消えてるみたいなんです!!これってやっぱり…!]



「ヴィランデールの仕業だよ!!ボクも今、それを確かめてた所!だから──ッ!?」


何かの気配を感じ、翠が振り返ると2人の元へ向けて何かが右斜め前方から飛んで来る。

咄嗟に真理を伏せさせて顔を上げてみるとそこにはクモをあしらった仮面と細長い体格の人物であるクモノースが立っていた。


「貴方は確か…クモノース!?」



「おやおや。こんな所に何の用ですか?折角、新しい次のモノを消しに来たというのに。」



「次の…モノ?」



「ええ、そうです。貴女達ニンゲンは好んで食べるモノ…好きなコト…そういったモノがココロの支えとなっていると知りました。なら、そのスキを私自ら消して差し上げようと思いましてね?そうすれば強い悲しみによって豊富なアンチエナジーが採取出来ると考えたのですよ…クククッ!!」



「酷い…!どうしてそんな事をするの!!」



「それが我々のやり方だからですよ、お嬢さん。どんな卑怯な真似、ズル賢い手段だろうと結果さえ伴えばそれで良いのです……食べ物の次は血の繋がりでも消しましょうか。消すのは母親か父親…それとも両方?まぁ何方も悲しみを生むのには相応しいですがねぇ…。」



「そんな事、絶対ボクが許さない!!みんなの好きはボクが守る!!」


クモノースを睨み付けた翠が身構える、そして真理を遠ざけてから左手の中指に嵌めている指輪からジュエル・ストーンを外し叫んだ。


「──ジュエル・ストーン、コネクト!!チェンジ、エメラルド!!」


眩い緑色の光により翠の着ていた制服が

緑と白を基調とした別の物へ変化。そして変身を遂げると共に光を振り払うと現れたのは翠と似た少女だった。


「天に煌めく希望の騎士!エメラルド・ナイト!!」


目の前のクモノースがエメラルド・ナイトを見て嘲笑い、指をパチンと鳴らすと彼の周りに現れたのは灰色のソルジャー達。それはエメラルド・ナイトでも見た事が無かった。


「彼等はバッドソルジャー…言ってしまえば

貴女達に倒されたソルジャーを再利用したのが彼等なのです。さぁ、この場で宝石騎士を倒してしまいなさい!!」



「ラジャー!!」


バッドソルジャーが一斉に身構え、迫り来ると

エメラルド・ナイトが真理の手を取って駆け出しては教室から飛び出る。そして右方向へと走り始めた。


「お姉ちゃん、ジュエリィ・ナイツだったの!?」



「話は後だよ!今は兎に角逃げなきゃ!」


背後からの気配を感じつつ上へ逃げる。

気を抜けば捕まってしまうのは明白で逃げている最中にも背後から気味の悪い足音だけが響いて来る。屋上のドアを開け放つと同時に背後から銃声が聞こえ、振り返ったエメラルド・ナイトは真理を庇ってそれを飛び退くと離れに着地して彼女をそこへ立たせた。


「危ないから此処に居てね。やるしかない…ジェダイト・バトン!!」


エメラルド・ナイトが右手首のブレスへ触れると

左右先端に緑色の宝石があしらわれた銀色のバトンが姿を現す。それを左手で握り締めると直後にバッドソルジャー3体が抜剣し襲い来る、彼女はそれを迎え撃つ形で剣を弾いては攻撃を受け流しつつ間合いを取った。だが1人が果敢にエメラルド・ナイトを攻め立てては振り下ろして来た一撃をバトンを両手持ちし防いでみせた。


「うぐぅうッ!?つ、強い…!」



「ギッ…ギギギ!!」


灰色の騎士が持つ格子状の頭部、その奥にある赤い目がギラリと輝くとエメラルド・ナイトの持つバトンを力任せに斬り裂いてしまう。

寸前でエメラルド・ナイトが後退した事で斬撃は当たらなかった。


「ひぇえッ!?嘘でしょ、斬れちゃった!?」



「ギィイイイッ──!!」


そこを見逃さずに幾度も剣を振り翳してエメラルド・ナイトを攻める、右斜め、左斜め、左から右への横一閃といった斬撃が次々と繰り出される中で空中へ飛び退いた所を別のバッドソルジャーが構えた銃によって撃たれるとエメラルド・ナイトは吹き飛ばされて地面へ倒れてしまった。


「うぅッ…だ、だったら!!エメラルド、フューチャリング・サンダーッ!!」



「ギギギ…!!」


立ち上がった際にエメラルド・ナイトはその場で一回転し右手へ雷を蓄積しそれを最大出力で解き放つ。だがバッドソルジャーは背負っていた長方形の盾を左手へ持ってそれを正面へ突き出すと防ぎ切ってしまったのだ。


「そんな…フューチャリング・サンダーもダメ!?」


渾身の一撃も跳ね除けられ、しかも武器を失った彼女は丸腰。だが自分が何とかしなくてはならないのは変わらない。そして給水タンクの上からクモノースが見下ろす様にエメラルド・ナイトを見ていた。


「クククッ、勝負アリですねぇ。伝え忘れましたが、そのバッドソルジャーは本来のソルジャーよりもアンチエナジーを多く注ぎ込んでいる…つまり強さはソルジャーよりも上回る!!」


その言葉を皮切りに2体目のバッドソルジャーが軽装状態へ移行しエメラルド・ナイトへ挑む、彼女へ格闘戦を仕掛けて来た。繰り出された右手の拳をエメラルド・ナイトが両手を交差させる形で防いだ直後に今度は反撃で接近したエメラルド・ナイトが右足でミドルキックを繰り出すもそれは左腕を畳む形で防がれてしまい、振り払われた直後に腹部へ強い衝撃が走ると同時に吹き飛ばされてしまった。


「きゃああああッ──!?」


背中から地面へ叩き付けられ、フェンスへ直撃すると今度はそこへ3体目のバッドソルジャーが再び発砲する。それは電流を帯びた弾丸でフェンスへ命中した事で感電してしまったエメラルド・ナイトは膝から地面へうつ伏せに倒れてしまった。


「あぁ…ッ、そんな…エメラルド・ナイトが…!」


真理が倒れた彼女を心配する様にエメラルド・ナイトを潤んだ目で見つめている。ボロボロになったエメラルド・ナイトは何とか立ち上がろうと必死に身体に力を込めていた。


「ま…負けるもんか…ッ…!!」



「おや?まだ立ち上がるおつもりですか。サファイア・ナイト…そしてルビー・ナイトが強化されても貴女は違う。貴女はあの騎士達の中で弱い……つまりお荷物なのですよ。」



「ッ…!?」



「非力で弱虫で泣き虫…それでも貴女はジュエル・ストーンに選ばれた騎士なのですか?クククッ、とんだ茶番ですねぇ!!」


クモノースが嘲笑うとエメラルド・ナイトは俯いてしまう、彼の言う言葉のどれもが自分自身を表していたからだ。サファイア・ナイトの様な勇気も無ければ、ルビー・ナイトの様な臨機応変も出来ない、ダイヤ・ナイトの様な分析力も無ければトパーズ・ナイトの様な秀でた部分も無い。


「やっぱり…ボクだけじゃ…何も…ッ…。」


強く歯を食い縛って両手の拳を握り締める、

その全てがクモノースの言う通りでしかない現実に彼女は苦しんでいた。


「そんな事ない!!お姉ちゃんは…エメラルド・ナイトは強いもん!!」


突然、真理が声を上げて叫ぶとクモノース達を睨む様に見ていた。


「テレビで見てるから私知ってるよ!エメラルド・ナイトは誰よりも真っ直ぐで、一生懸命で、一番頑張ってる!!だから立って!!私が付いてるから!!」



「真理ちゃん…。」


両手に力を込めて立ち上がろうとした時、クモノースの指示で3体目のバッドソルジャーが銃口を真理へ差し向ける。そして引き金が引かれると弾丸が発射されては一直線にそれが飛んで来たのだ。


「あ、危ないッ!!」


咄嗟にエメラルド・ナイトが立ち上がって真理の前へ出ると右手を突き出して弾丸を掴んでみせる。そしてそれを放り投げると真理の方へ振り返った。


「ありがとう…真理ちゃん。真理ちゃんの声は確かに届いたよ。安心して、必ず…必ずみんなの好きを取り戻してみせるから…!」


真理が頷くとエメラルド・ナイトは微笑んでから彼女へ背を向けると再び目の前の敵達と対峙する。そして左右の手を握り締めて両足を開くと共にファイティングポーズを取った。


「まだやる気ですか?もう実力の差は思い知ったでしょう…大人しくジュエル・ストーンを差し出し、負けを認めたら如何ですか?」



「ボクは戦う…諦めたりなんかしない…降伏なんか絶対するもんか!!」



「…往生際の悪い。やってしまいなさい、バッドソルジャー!!今度こそトドメを刺すのです!!」


クモノースが再度指示を出すと各々が構えてエメラルド・ナイトへ突撃を仕掛け襲い来る。

3対1という状況はどう見ても不利でしかない。


「守ってみせる!みんなの好きはボクが絶対、守るんだぁあああッ!!」


その最中に彼女のブレスへ嵌めているジュエル・ストーンが力強く緑色に発光し思わずバッドソルジャー達も足を止めてしまう。


「「「ギギィイッ!?」」」



「これってもしかして…!?よしッ、今度はボクの番だ!!」


その光を天へ向けて解き放つとジェダイト・バトンと似て非なる物をエメラルド・ナイトが右手でキャッチし指先で一回転させると正面へ翳した。


「──伝え!幸せのハーモニー!!ミラージュ・ステッキ、トルマリン・ロッド!!」


彼女が笛に見立てて持ち手を奏でた後、左右へ白色のロッドが展開される。すると今度は先端部に緑色の刃の様な物が出現。先程のジェダイト・バトンと似ているが違っていた。

再びバッドソルジャー達が彼女へ襲い掛かり、1体目が剣を振り翳して彼女を斬り裂こうと目論む。だが素早くロッドを左斜め下から振り下ろして弾くと同時に頭上で柄を両手持ちし一回転させてから相手の左脇腹へ叩き付け、薙ぎ払う様に吹き飛ばした。


「ギギィッ!?」


そして2体目が彼女へ突撃を仕掛けるとロッドを地面へ刺し、それを軸にすると身体を宙に浮かせた状態から一回転し胸元を両足で力強く蹴り付けて突き放す。


「グギィイッ!?」


怯んだ所へ3体目が射撃を行うも弾丸を全て引き抜いたロッドを両手持ちし目の前で回転させるとそのまま全て弾き飛ばしてしまった。


「ギッ…ギギィ!?」



「悪いけどこのまま終わらせてもらうよ!!邪悪を射抜く雷の力、受けてみなさい!!エメラルド!ライジング・ストーム・スパークリングぅッ──!!」


再び空中へ掲げたトルマリン・ロッドを幾度も回転させて雷のエネルギーを蓄積させて

それを下ろした直後に頭上から勢い良く振り下ろすと一直線に眩い緑色の雷が迸った。

何としても防ごうと1体目のバッドソルジャーが盾を持ってその後ろに2人目と3人目が縦一列で並んだがその盾を破壊し雷が突き抜け、

そして真っさらな灰になってしまった


「馬鹿な!?くそッ…来なさいクライナー!!」



「クライナァアアアッ!!」


クモノースの叫びと共に彼の背後から現れたのは消しゴムを象った大きな敵、クライナー。

エメラルド・ナイトを見下ろす形で頭上から襲い掛かると彼女はそれを後退し避ける。身構えているとそこへサファイア・ナイトとルビー・ナイトが駆け付けた。


「無事ですかエメラルド!」



「…ごめん、街の方にソルジャーが現れてて。向こうはダイヤとトパーズが何とかしてくれてる!」


2人がそれぞれエメラルド・ナイトの左右で武器を呼び出して身構える。


「ボクなら平気!アイツを倒せば全て元に戻る!」



「解りました!それなら3人で一気に決めましょうッ!!」


3人が目の前のクライナーを見据えると同時にそれぞれのミラージュ・ステッキへエネルギーを蓄積させ、身構えていた。


「何人来ようが消し去るのみ!!クライナー、次いでに彼女達も消してしまいなさい!!」


クモノースが叫ぶとクライナーが消しゴムの弾丸を何十発も彼女達へ向けて解き放つ。


「ボク達の想いと力を今此処に!!」



「3人の技を1つに束ね!!」



「…暗い闇を光へ変える!!」



「「「スリーナイツ・ブリリアント・ソリューション!!」」」


放たれた青、赤、緑の眩い閃光が重なり合うと同時に1つになる。それが消しゴムの弾丸を全て掻き消して突き抜けて行くとクライナーへ到達し3色の光が包み込んだ。飲み込まれる前にクモノースだけが逃走し姿を消す。


「ア…アカルイナァ……。」


そしてクライナーだけが倒されると同時に街に消えていた物全てが元通りになり、普段と変わらない暮らしがまた戻って来た。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

事件が解決した日の夜。

ファントム・ナイトこと紫織は残る4枚のカードを見ながら1人で自宅に居た。


「…残るカードは4枚。クモノース様の手は煩わせない…次は私が奴等をこの手で倒してみせる。」


決意を固めた彼女はカードをしまうと夜の街を見ながらそう呟いた。倒すべき相手が自分と交友関係のある者達とは知らず、彼女は敵対している事をまだ知らない。


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