5 赤い報せ

 かに見えた。

 しかしそうではなかった。

 魔導機兵は軋みを上げながらも、その巨体を持ち上げた。防御魔法だ。恐らくは信号弾に反応して咄嗟に展開していたのだろう。爆発の全てを相殺はできなくとも、致命傷の一歩手前で留めた。


 もしも装甲歩兵が前兆無しに自爆していれば防御魔法も間に合わなかったはずだ。ただしその場合はメリンダが伏せることもできなかった。警告を発せずにはいられなかったのだ。


 メリンダは跡形もなく消し飛んだ友人というには親しすぎる同胞の顔を思い浮かべた。


「馬鹿、……本当に馬鹿」


 彼がほんの少し長らえさせたメリンダの命運ももう尽きようとしている。

 メリンダの乗る装甲歩兵は動かない。敵の魔導機兵はこちらの奥の手を知った。もう接近しては来ないだろう。


 ギチギチと音を立てながら、魔導機兵が銃口を上げた。


 ここまでか。


 そう思った時、メリンダは下を向くのではなく、空を見上げた。


「辛いときは空を見るのよ」


 あの人がそう言ったからだろう。それは、そうすべきという意味ではなく、自分はそうするんだという宣言のようなものだったが、メリンダの心には深く刻まれていた。だからメリンダは見つけられた。


 メリンダの視界の端で空に向かって伸びる一筋の赤い煙。

 信号弾だ。


 それはまず遙か遠くで上がり、呼応するように次々と上がっていく。


 メリンダは震える手で自分の信号拳銃に赤の信号弾を込めて真上に向かって撃った。同時に伝声管に叫ぶ。


「信号弾! 色は赤! 繰り返す! 色は赤! ではお先に!」

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