第8話 conversation
家に残された三人はウィールに送ってもらった車に再び乗りレインサスのセントラルタウンに送ってもらった。
そこにはバスやタクシー、鉄道等の移動手段が集まるターミナルがある場所であった。
そこでウィールとは別れて各自自由解散という流れである。
「・・・一先ず終わったけど、この後はどうする?」
「私は帰るつもりですけど、お二人は?」
「わたくしも特に予定はなく帰る感じですね」
「ま、そうだよな」
と三人横並びで暫くターミナルを歩く。
三人も特に慣れ親しんだ仲ではないため、距離はそれぞれにあった。
お互いに様子を伺っているような雰囲気が漂っていた。
「にしても仕事、というかラックって野郎はどう思う?」
「どうって・・・私はまだ分からないけど、ラックさんは悪くない人だと思います。私達のことを考えてくれてるし」
「そうですね。わたくしも自分勝手な理由なのに受け入れてくれましたし、作業も一人一人に付きっきりで説明してくださいました。一瞬ですけど。なので悪い人じゃないと思ってますよ」
「ま、俺もそうは思ってる。けどまだ怪しいんだよな。特に初っ端から銃を見せつけて掃除屋だって?俺達を脅すつもり満載じゃねぇか」
「確かにそれは驚いたかも。私は緊張して震えてましたし」
「それは皆同じだ。あれは正直ビビったよ。それに何より仕事内容が曖昧なことだ。業務内容、時間、賃金は報酬制だと思うけど、取引先が伏せられて、流通先が悪徳業者?あんまり信頼性が低いと思うな」
「・・・・・・」
「・・・そうですね」
「適当なこと言って向こうだけが報酬を独り占めして、俺達には少ないお金しか払わないとかってあるかも知れないぞ。そんで何かあれば俺達を売るとか」
「・・・それは酷いことですが、無くはないかも知れませんよね」
「・・・・・・」
ティーチの説明にボムも何処か納得しているようであった。
裏社会にいるような連中がまともなわけが無いと考えてしまった。
何かあれば脅されたり使い捨ての道具のように扱われるかもと不安になる。
しかしベアーズは不安になりつつも、ラックを信じている部分もあった。
だから同意は出来なかった。
「だろ?それが俺は心配なんだ。だから今後は念の為に、向こうの要望には基本イエスマンで受け入れて相手に合わせるしか無い。俺達もこの世界に足を突っ込んだんだから責任はある。お前等二人は真面目すぎるから信じてる部分があるが、これからは気を付けてお互いに助け合おう」
「そうですね。わたくしもそれが良いと思います。もう少し様子を見てから判断したいですね」
「・・・わかりました。そうしましょう」
「ああ、それじゃあ俺はバスで帰るからこの辺りで」
「はい、わたくしもタクシーで帰るので。それではお疲れ様です」
「はい、お疲れ様です」
三人は別方向に歩いていった。
それぞれの関係も浅いからこそ、お別れの時はあっさりである。
こうして別れたら、お互いに普通の生活に戻る。
闇の活動から離れた一般的な生活に。
しかしそれも一時的であり再びこの世界へ戻って来る。
そしてこれから三人はその狭間を往来し生きていくこととなる。
・・・深い闇の道へと誘われる。
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