第45話 第三段階斬首(ヘッドハンティング)作戦
「今だシャミ―ニア、作戦を実行しろ」
うっとおしい蛇のテレパシーが聞こえてきた。
「より奥まで進んでからが効果的です。まだその時じゃない」
「ソラ、なに独り言をぶつぶつ言っているの?」
「少し頭の中で整理していただけだよ。気にしないで」
話をしていると衛兵が塔を登ってきた。
「ジョセーヌ様、町の中でグール病が発症しております。
急いで対処に向かってくれませんか」
「…今対処できる人員はいない。衛兵でどうにかならんか」
「対処はできるかもしれませんが被害が大きくなります、ジョセーヌ様どうかこちらに来てください」
「敵は予想外の攻撃を常に仕掛けてくる。
だからどんなパターンも想定して準備しなければならない。
今はまだ動くべきじゃない」
「ちょっと、お姉ちゃんさすがにそれはどうかと思う。
私は行くわ」
「ラン、分かった。ロルグもランと付き添いで対処にあたってくれないか」
「分かりました。無事すべてが終わったらまた会いましょう」
「ああ、そうだな」
とうとう俺のもとまで敵が来てしまった。
俺の住む居城、ノース・ディフィート城にまで勇者アレンと聖女マリ率いる聖魔導士どもが来ていた。
城に入ってきた瞬間にスケルトンたちに襲わせるだが、たどり着くまでにスケルトンたちはバラバラになった。
「妨害魔法アンチマジックか!」
「あら、知っていたの?これこそ私たち聖魔導士の専売特許よ」
アンチマジック、すべての魔法や魔力の動きを阻害する魔法。
もともとは魔族の攻撃が聞かなくなる新たな属性魔法として白魔法やら聖魔法、光魔法などと言われていたが実際は他人の魔力に干渉する干渉魔法を相手の魔力を無効化させる方向に干渉させる。言うなれば魔法キラーの魔法だ。
「スケルトンは魔力だけで動く生物だ。他の生物は筋肉などを使って動くが君たちはそうじゃない。なんせ骨だけだからな」
要するにアンチマジックは発動してスケルトン内の魔力を無効化するだけで倒すことが出来る。
これが聖魔導士がスケルトンキラーになっている理由だ。
「つくづく哀れだよ。魔力なしじゃ生命維持すらできない。
そしてその魔力を自身に供給することもほかの生物と同じように食べることではできない。
なんせ、消化できないからな」
俺たちスケルトンは食料による魔力供給はできない。
だが、死んだ生物が最後に放出するわずかな魔力を吸収する特殊な能力である「ソウルイーター」を持っているが。
だからよく死の瘴気でスケルトンは生まれるなど言われるが。
「他者の死によって、生きながらえる化け物はここでいなくなった方がいいよ」
さっきから勇者はとても偉そうに言ってくるな。
「好きでこんな体になったわけじゃない。誰だって誰かの死によって生きながらえているんだ。本質的には同じだよ」
「魂食いと一緒にするな。死そのもので生きている邪悪な存在だろう。
戦争をしておかないと生きながらえない種族だろう。実に哀れだよ」
「あんたのお仲間の聖魔導士はどうだ。完璧に清廉潔白と言えるのか。
あらゆる国から教皇が干渉魔法が得意なものを集めて魔法キラーの魔導士を作り上げる。
表向きは女神による神聖な力により邪悪な魔族の魔法を打ち消すと言っているが、実際はその力の矛先はどこに向いている?
魔族か、それとも国の所有する魔導士たちか?」
「そんなことまで知っているんだね。それも裏切り者のラルゲン侯爵から聞いたのかな?」
ああ、そうだとも。
彼は悩んでいた。そして教会を最も恐れていた。
魔法無効化を扱える集団によっていかに魔導士が無力化されるか、そしてその力は国に匹敵するほど恐ろしいということを。
聖魔導士によっていまだ協会が国レベルで権力を握っており、仮に我らスケルトンと和平を結んだところで帝国以上に教会から制裁が下されるだろうと。
「アレン、与太話に付き合う必要はないよ。もうここで終わらせよう」
聖魔導士全員が私に対してアンチマジックを放つ。
私の魔力はそんじょそこらのスケルトンとは違い膨大だが、長時間されたら長く持たない。
なら完全に魔力が無効化される前にケリを付けなければならない。
「アンチマジックをはじいた!?」
ソウルイーターがあるようにスケルトンは魔力感知にたけている。というか感覚器官が肉体としてないから、魔力探知により疑似的に五感を補っているくらいだ。
魔力同士の扱い方で決まる干渉魔法など最も得意とするところ。
「たかが数十年生きた者たちに俺が負けるわけないだろう」
「老害すぎですよ」
多くのスケルトンに自らの魔力を膨大に入れて聖魔導士たちに攻撃させる。
これだとアンチマジックの効果に時間がかかる。
「僕を忘れていないかい?」
そう言っていつの間にか背後に回れていた勇者に斬りつけられる。
なんて素早い動きだ。
左腕が切り落とされたが問題ない。
骨で作った剣を作り出し応戦する。
さらに魔力で長く大きな腕を10本作り出し剣を持たせた。
「戦略としては悪くないけど、君近接戦闘下手だよね。うまく10本の腕を使いこなせていないよ」
うるさい。今まで遠距離メインで戦ってきたんだ。ここまで接近を許した記憶はない。
一本一本の攻撃を見切って、華麗に交わされるか剣ではじかれる。
そしてついに勇者の剣がスカルの首を切り裂いた。
聖魔導士たちによる爆発魔法で体をバラバラにされてしまった。
「長く生きていようと君からは信念をそこまで感じなかった。
長い間自分で考えることをしてこなかったんだろう。流れに身を任せて戦いを続けてきただけだろう。
そんな奴に僕は負けない」
思えばミラに会うまではただ言われた通りに戦うだけだった。
彼女に出会って魔族に、戦いについて考え始めたんだ。
そうなると思いっきり彼女に振り回されっぱなしということになるな。
だが最後に彼女と同じように勇者の剣で死ねてよかった。
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