獣人自治領編
第26話 獣人自治領
私たちはすでに帝国領に入っていた。とはいっても特殊な場所だ。
「ここは帝国領だがその中でも獣人自治領に該当する地域だ。
帝国が昔に原住民であった獣人の生活地域に侵略し奪いとった土地だ」
「ですが、今はある程度現地で自治を認めているわ」
ジョセーヌと物知りのシズクが丁寧に教えてくれる。
確かジョセーヌの師匠でもあった大賢者ロンメルは帝国で守護を任せられた宮廷魔導士であり、帝国について詳しいのか。
歩いている道で犬の耳と尻尾がある以外は普通の人に見える獣人が米を育てていた。
「獣人は昔、狩や果物の採取で生計を立てていたが、今は帝国が主流して豊富な土壌を利用した稲作や作物を育てるんですよ。
結果的には得られる食物の量が増えたから、獣人族の中でも帝国に感謝しているものはたくさんいるらしいよ」
「へえー、複雑な場所なんだね」
それからも両側に田んぼや畑、栽培所がある道を歩いて行った。
すると今まで見たことない大きな宿が見えてきた。
「いらっしゃいませ!」
白ウサギの耳と尻尾が付いたお姉さんが接客をしてくれる。
「人数は7人です」
「部屋は最大で3人までは入れる用になっておりますが」
「分かりました。じゃあどう分ける?」
「前回同様、私たちハンヌ、ハンス、ソラの3人と後の4人はロルグが男だからそれ以外の3人で分ければいいんじゃない?」
「あの、ソラ一緒に来ない?」
ランが割って入ってきた。
「じゃあ、今回は女子の3人と男2人、大人の女性2人で行こう」
「そうかい、じゃあそういう風に分けよう」
結局次のように分けた。
101号室:ソラ(シャミ―ニア)、ラン、シズク
102号室:ハンス(バン)、ロルグ
103号室:ハンヌ(サミエラ)、ジョセーヌ
101号室に入った。
妹の荷物の整理のため、ジョセーヌが入ってきた。
ランとジョセーヌが仲良く会話している。
「獣人自治領来るの久しぶりだー。
御飯がおいしいからよく覚えているよー」
「確かにここは食料が良く取れる地域として発展しているね。
新鮮な野菜や果物がおいしかった記憶があるね」
「ソラはまだ食べたことないのー。本当においしいんだから」
「まあそろそろ豊饒際ってのが始まるじきですよね。
ただもしその時まで泊まるとなると出費が…」
お金のことを気にするなんてシズクは目ざといな。
「大丈夫だよ。姉は勇者パーティの時に稼いでいるから」
姉のジョセーヌ任せか。
そういえば最初にジョセーヌにあった時は動揺したがそれも今はほとんどない。
私を襲た時は黙々と任務を行っていた。今、妹のランといる時の表情とは大違いだ。
「ねえねえ、ソラちゃん。両親はどんな感じ?
ハンヌさんはとても変わった人に見えるけど優しかったりするの?」
サミエラからは人と話すときに肝心な内容のところは嘘をついて他の部分は出来るだけ本音で話すようにと言われている。
「ハンヌさんは少しスパルタな所があるというか、優しいとはあまり言えないですかね。ハンスさんは正直何考えてるかわからないことが多いというか、寡黙な感じですかね。実は魔族に元居た村を滅ぼされていて、本当の私の両親はもういないんです。
その時にハンヌさんとハンスさんに拾ってもらって、今でも感謝をしています」
「…そうだったんだ。じゃあもっと二人に甘えてみるのはどう?
ソラちゃんどちらかというと無表情に近いというか。
もっと体や表情に出していいと思うの」
サミエラに甘えるなんて想像しただけで怖いな。
「こら、ランあまり人に突っ込んだ内容について言わないの。
ごめんね、ソラちゃん。ランもまだ未熟なところがあるけどいつもあなたと仲良くしたそうにしているから仲良くしてあげてね」
ジョセーヌはそう言って私の頭を撫でた。人はよくこういったスキンシップをして親密になると聞いている。
ランとジョセーヌが仲がいいからか、さっき私にやったようなことをしているのを見かける。姉妹だから仲がいいのか。魔族では考えられないだろう。私はそんなことをされた記憶がない。
「とりあえずもう今日は休もうか」
ジョセーヌは自分の部屋に帰り、私たち3人も就寝した。
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