第18話 青い炎の狼

 ブルーファイア・ウルフは全身に青い炎をまとわせていて、周囲がとても高温だった。

「かはっ!」


 喉が焼けるように熱い。

周囲の空気が燃えていると感じるくらい。

 シズクが水魔法で攻撃しても一瞬で蒸発する。

周囲が蒸気で満たされる。

視界が一瞬悪くなるが、ブルーファイア・ウルフから周囲に向けて発せられる風で吹っ飛ばされる。


「シズク、ラン水魔法をずっと出して」

 ずっと視界を悪くすることで逃げやすくする。

すぐに蒸発、風で流されるを繰り返す。

魔力をずっと消費していて全員、体も満身創痍で限界だった。


 こいつら三人を囮にして逃げるか?この階層は天井が広い。

翼を使い飛べば容易にこいつらから逃げることはできるだろう。

ブルーファイア・ウルフが私に向かって襲ってくる。

 私に到達する前にグルグが持っていた剣で防いだ。

グルグはブルーファイア・ウルフに近い右手が火傷していた。


 ブルーファイアが次の攻撃を仕掛けようとしたとき、急に私たちとは逆方向に首を振り返らせた。

そのままその方向に向けて走り出した。

危機は脱したようだった。


「よかった。とりあえず今は大丈夫なようだ。

でもなんで急に追いかけてこなくなったんだ」

「今、エルフの笛の音が聞こえたわ。おそらくジョセーヌ姉さんが使ったわ。

危険を引き付けるためにわざと笛を吹いたんだわ」


「どうしてそれでブルーファイア・ウルフがいなくなるの?」

 疑問に思って聞いた。

「ファイア・ウルフも遠くに響く遠吠えを用いて群れ間でコミニュケーションを

とっているから耳がいいの」

 シズクが疑問に答えてくれた。


「そもそもファイア・ウルフの中で優れた個体がブルーファイア・ウルフに進化するの。

だけどそのような個体は事前に出現する前にクエストの依頼で倒されるようになっているし、そもそもそのような個体が出現しにくいようにある程度の個体数になる前に間引きするようにしている。

ブルーファイア・ウルフはとても危険だから。

ギルドが事前にそのような対策をとっているはずなんだけど」


「じゃあ何でこんなことになっているんだよ?ギルドの怠慢じゃないか」

「それは後で苦情を言えばいいの。

先ほどの笛の位置は3階層へと向かう方から聞こえたわ」


「それじゃあ、逆方向の5階層に行くのがいいと思う。

笛の方へファイア・ウルフが向かったからね

5階層は水場が多数あって休憩できる場所。

ある程度魔物はいるが、そこまで危険度の高い魔物はいない」

「じゃあそれでいこう。水分補給をしたいし、みんな喉をやられているからね」

 

 5階層に着いた。大きな水場ができた。

全員水を飲み休んでいた。

ブルーファイア・ウルフの攻撃を防いだ時についたグルグの右腕の火傷が特にひどく、シズクが治療をしていた。


「頑張って治療をしているけどしばらく時間がかかる」

「ジョセーヌ姉ちゃんのことだしすぐにここに来るわ」

「グルグ、あれはかなり危なかった。

私を助けてくれたのは勇敢だけど無謀だったとも思うよ」

「いちおうこのチームの中では俺は前衛だろ。敵の近接攻撃を防ぐのは当然だ」


「確かにそうだけど私たちはまだ最近知り合ったばかりの仲だよ。

相手も格上だったし。自分が死んだら元もこうもないよね」


「でもみんな生きている。四人で力を合わせた結果だよ。

よく僕の兄さんに誰かを助けたり、幸せにする分だけ生きがいになるって言ってたよ」

「そうだよ、ソラちゃん。こういう時は素直にありがとうって感謝すればいいの」


 釈然としないが仕方がない。

「分かったわ。助けてくれてありがとう」

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