蛇足話① エルフ

 とある教会、そこには教皇が座っていた。

「久しぶりですね。ダン教皇」


 急に目の前に美しい女性が現れた。

「そちらは変わらず美しいままですね。女神様」


 女神は微笑みを浮かべながら答えた。

「ええありがとう。今回はただ世間話がしたくてね」

「はあ、そうですか」


「魔法はその現象や物質に対してより理解していればいるほど扱えるようになる」

「すみません。あまりそこは管轄ではないのでよく分からないです」

「前にも教えたでしょう。あなたには知る義務がある」


「長いこと生きていると忘れっぽくてね。それで?」

「例えばエルフには複雑な構造を持つ耳がある。

その耳は人間で言う鼓膜のような部分が、音だけでなく、気流や気圧も分かるようになっている。

要はエルフは風の流れの変化を用いることで、敵の位置を正確に感知している。

風の流れを理解しているからこそ、エルフは風魔法が得意な傾向にあるんだよ。

まあ位置を感知することにずば抜けているから弓を扱うのもうまい種族になったがね」


「そういえば、つい最近エルフに対する魔族による襲撃が雨の中行われたようです」

「確かに雨の中なら、音は聞きにくい。

だが気流や気圧が分かる。

特に屋外の上空に近い部分ならより風の流れをより感知できる。

一部の虫や動物と同じだな」


「そういえばエルフは要塞などで防御するのではなく、高い木の上からの偵察や攻撃を行うと聞きますが、そういった理由があったのですね」

「そうだよ。

何せ閉じられた空間では気流が読みにくいからね。

そういった空間にいるのは雨をしのぎ、生活をするためだけだ。

魔の森に住みついた理由もこの高い木を利用して自分は相手を探知でき、相手は探知できない舞台を作りあげてゲリラ戦で優位に立つため。

都合のいい地域だったわけだよ」


「そんなに外が向いている種族なら、もっと開放的になっていると思うのですが」

「逆だよ逆、外にいることが多く、限られた場所にしか居住しないから全体が集まりやすい大きな都市や街の発展が進まないんだよ。

だから、小さい地域の一部の限られた人数で決められた方針で彼ら種族の物事が決まっていく。

こうして閉鎖的な種族ができたわけだ。

まあこうなったのも仕方がないよ。

なんせ、エルフは風魔法に特化するためにデザインされた種族だからね」

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