酔狂詩人・ルドルフの悪夢
詩月逢生
第1幕 絶望
『………ねぇ、ママ。怖いよぅっ…!』"
―――刹那、僕はふっと、とある面影を察知してしまった。
劇場のスポットライトの下、途方も無く儚い煌めきを放つ彼に……。
ツンッと、僕の鼻に鈍い痛みが走り、ぶわぅっと鳥肌が立ち上がる。
水滴が止めどなくボロボロ溢れて、熟れたて林檎の様な熱き頬伝う。
霧に歪み行く視界へ溶けて行く。
盲目と化した視界に滲むのは、照明の月光色の絵の具を細筆で水に溶かし、伸び行く光の精霊が幻想的に放つ静寂な光。
――激情的かつ獰猛な竜巻が荒れ狂う真っ只中。
現在、僕はグワァァアアと疾走する悲鳴に度肝を抜かれてしまった、二千もの“彼”の崇拝者に包囲されている。
聴衆に伝う耳の激震の為、観客胸中に植え付けられる限り無く曖昧なグレーの曇天。
憤るカタルシスに切り裂かれ、降り注ぐ血涙と劇場床のカーペットの紅とが融合する。
嗚呼…
悲劇のヒーロー役は、五、六歳頃の少年だ。
あどけなく、そして何処までも澄み切る雲雀のソプラノボイスが印象的で。
枯渇した愛の叫びと絶望に由来する孤独を物憂げに謳い上げている。
その背後には僕の旧友で有る、
……カラスの様な眼付きをした、アンドロイドの様な、それでいて肉食獣の様な、、
一見、矛盾の生じる特徴を同時に持ち合わせ、得体の知れず不気味さ。
それなのに、肌に何より馴染み、いつの間にか体を乗っ取っては、
――影の如く永遠に付き纏う男。
彼等の正体が、幼き日の自分の片鱗だと悟った瞬間。
不意に、皮膚輪郭の時空が剥がれ落ちる。
そして、小さな老廃物が、元の涙腺部位からホロリ、と溢れ出して行った。
*
”昔々、或る処に”から、すべては始まる。
そこには、負け犬みたくウォンウォン威嚇し奇妙奇天烈な怪物がうじゃうじゃ居たそうな。
巨大な大群が、怒涛に襲い来る無情な涙軍団で天空からさめざめと染め上げる。
”彼”の薔薇色の頬打ち付けし風も、オギャァアアーと赤子の上げる産声の如し。
ゴロゴロゴロッと天空切り裂き、轟く雷鳴。
遠く彼方のドブ鼠色の空にピカッと堕ち行く一直光線。
稲妻様は、次の出番を今か今かと闇夜の舞台袖にて待機して、やがて尊大なる癇癪を起こした。
その後に続く、誰かの過剰なギャアアアーと言う耳障りな金切りコーラスが、煽りしは、
観客の一人、とある少年の不安だった。
舞台上の彼等が、悲劇の四重唱奏でし間に、御伽の国の魔法は解けてしまった。
真紅の薔薇は枯れ果て、全身を駆け巡る血液は青黒い錆に姿を変える。
愛の残骸に埋もれしシンデレラは、非条理な世への悲嘆に明け暮れては、何処かで見かけた様なダンス依存症の娘と同じ結末を辿って辿り着いたのは。
ここ、水深一cmの濁流に溺れる沈没船街に腐臭漂わす赤煉瓦倉庫の路地裏。
虚に眼玉の焦点が合わないヤク中に、生気の失せた売春婦、万引きに走る非行少年。
ダストボックスの積み上がったこの裏街道は、そんな、ガラクタ供の巣窟。
どこもかしこも
秩序などとうに破綻し、生きとし生ける屍が辛うじて道を這いずり回っていく。
そこには、滑稽な体育座りで身を縮める、哀れな“少年”も、いた。
彼は、聖書で云う仔羊の如く、眠れる森の迷宮で来る筈もない人を待ち続けている。
ジリジリと灼熱の陽射しに晒された筈の焼石の凸凹はひんやり冷気を帯びた。
ユラリフラリと重力は抜け、ぐにゃぐにゃ歪む視野は、『不思議の国のアリス』の世界を構築する。
“きっと今すぐに、ママが迎えに来て、抱き締めてくれるんだ…!”
そんな阿保な暗示を反芻し、それでも夜明けの鶏の騒々しいコケコッコーの不変信仰だけは見失わまいとする盲目の美少年。
月星の奪われた外界の真空へ、穢れなき黄昏の灯をただ瞳孔に宿しているのが、あまりに痛々しく美しかった。
――
嗚呼。
刹那、ぷっくりとした膨らみと哀愁を帯びた涙袋の影を過ぎし、”ソレ”。
””が、雨粒で有るのや否やの真実を、少年にはもう、判別する事ができないのだ。
無情にも、彼の脳味噌へ秘密裏に仕掛けられた時限爆弾。
カウントダウンをカチカチッと推し進めし赤のネオン細胞が怪しげに蠢く。
そして、皮肉にも着実に、心臓に埋め込まれた懐中時計の歯車は狂い出し、春夏秋冬が巡り再び巡り、季節は現実世界の狭間から入眠へと移り変わる。
湿気た雨の匂いが、相変わらず少年の嗅覚を擽った。
沈没した胃袋では蚊の殺戮に失敗したかの様な喪失感と一滴の涙だけが、たぷたぷと木霊している。
肉体から分裂し彼の魂が歩み始めるのは、居場所無きこの世から乖離し、空白の五感のキャンバスをうようよと漂う流離の旅。
現状に到底満足出来やしない愚者供は、ノートに悪態文句ツラツラ書きツラね、傲慢自惚れ甚しく”自己受容”とか言う謎単語の真実追求するべく、無意味なアートもどきの創造神と名乗る。
例えばそう、“AME” は、彼を“詩人”にした。
嗚呼、結局の所、待ち人へ馳せる想いに恋焦がれ恋焦がれ過ぎて、過剰感情吸い込む掃除機の引力ウイィィーンと唸った。
――そして、煙草の燃え殻の
歩き方も目的地も自立方法も、とうに夜空の地平線へ広がる忘却線の彼方へ飛翔。
堕ちて行く凶器と化した叫びは、傷口からどばあぁっと噴射の血涙の味を脳裏へ刻みこびり付いて。
――ほれ、見てみなよ。
身体血管を青褪めた絵の具が保冷剤の如くカチンコチンと脈打ってさ、金縛りに遭ったマリオネット人形が街角道端に捨てられてる。
ああ、いとをかし、いとをかし。
クスッとシニカルな laugh がアスファルトと共鳴し、痛く切なく脆く蹴られ続ける石っころの人生のよう。
刹那が幾億時間にも錯覚される頃、燃え滾る灯は雨に浄化され、蝋の風貌は静寂の闇の使者が神隠し。
無意味な思考の煮詰めグツグツ浸る少年の耳元に突然、、、
屍肉纏いし骸骨様は、眼球の繰り抜かれた部位渦巻きギラリと狂気的に光らせて。
――ゾッとする様な青紫の端正な唇から、ふっと雪女の息吹きかける。
“哀れなる少年、君は我がトモダチ。
現にいれば不幸ばかりが君を呪縛する。どうか、こちらへお出でなさい。涙の味は知らぬ苦は存在せぬ怒は光に溶けるだろう。
今こそ、燈された百万のキャンドルの方角へ翼を広げるのです。”
魅惑的な響きに揺れるシンフォニーに、風の美声でざわざわと青白い炎の細波が立ち、線香花火の麻酔で少年を夜底の黒洞々道階段へと誘う。
彼の心臓は、春の女神との決別果たし冬将軍の王国に支配され、堕天使様は久々の天使の変装に窮屈ながらも舞い踊るジレンマ。
鬱蒼と膨張する暗雲うしっしあいのせと払い除け、ぱあっと微笑浮かべる最期の太陽。
アポロンの女神の威力は、涙酔いに激昂常連客集う居酒屋卓上の酩酊にクタバル風を叩き起こす。
彼女の宿敵のトモダチも、お外にビュンっと吹き飛んで、十字架をグルグル巻きにお仕置きを。
少年の皮膚も毒牙に爛れ、喜怒哀楽が崩壊し、哀しいのに笑いが溢れ、怒りに涙が溢れる。血流逆流のギャップに凶器沸き立ち、アヘン中毒者の如く眼と眼、焦点が合わず幻覚・幻聴が無双状態。
”パルス”と一度呪文を唱えれば、身体構成し分子が粉々砕け散り、遥か彼方の惑星古都への返還を希求じゃい。
だがだが、天空城壁の乱気流の無口さに憤慨し堕落の路を行進する化学元素は、破壊・創造を司る夕陽の神に呆気なく兜を追い剥ぎされた。
――どうせ、自立飛行不可能だと愚痴ってやがる迷信野郎。
だが、己の背中には臍の緒を鋏でチョン切られた際発見されし、♡バキッと÷2の傷痕が有るのだよ。
だからネッ、僕はきぃ〜〜っと、間違えてニンゲンに産まれてしまったちょうるいナンダ。
だってだって、夢にはいつも小鳥ちゃんが登場するのさ。
デジャヴデジャヴデジャヴデジャヴデジャヴ
フラッシュバック現象の瞬間に現れ、輝きの湖水の水面に映える、カワイイカワイイ渡り鳥チャン。
その子は、気の毒に翼をもがれ、悲痛に決死に蚊の産声叫んでは、蒼き羽毛の隙間から血潮をブルブルぶっ飛ばし、鳥籠の柵にバッタバタ、懸命に小ぶりな頭をぶっ付ける。
オペラグラス両手に、バードウォッチングに勤しむ、動物園へ通りかかりの猟奇的殺人鬼。
彼は、覗かし顔下半身が満面に花開く。
甘美に蕩ける密巣食う快感は鈴を弄ぶかの様に、澄み切った声響かせては、砂漠に落ちる雨水の一滴目の如しの恍惚感を齎す。
何もかもが、残酷で鋭利な刃物の矛先でジワジワと追い詰め、遂に小鳥の喉元ギリッと引っ掻いてしまった。
たらっと真紅の血液が垂れ、強烈な痛みを誘う。酸素が身体中に上手く循環する事が出来ず、襲い来る呼吸困難とくらっとした眩暈。
コロリと床に生首転がり、血痕スタンプ散って、破裂音騒ぐシャンパンの薔薇。
少年の瞳孔の灯、揺らめいては消滅し、黄泉の国へ飛んで行ってからの数秒後。
大きく白旗を掲げられる。
――彼は、フランス人形の美麗に縁取られた流れる様な睫毛を重たそうに持ち上げ、微睡みから目醒める様に眼に青炎を浮かべた。
――ボクは、閻魔御用達・高級ブランドモノの漆黒ハイヒールを舐め回ス。
お前の全身の肌でさえ、汚い仔犬舌でぺちゃぺちゃ拭ってやる…どんな事でもシテヤロウ!
無意味な呼吸繰り返し、魂消滅し、世界崩壊し、屍山血河に生き埋めとなってでも、煉獄通過し、地獄の果て迄、僕は貴方へ着いて行く。
忠実なル奴隷として、悪魔の子として…。
だから……、どうか、どうかどうかっ、、壊してくれ、壊してくれっ…!!
何もかもっ、焼き尽くしてくれえぇぇっっっっ…!!!
化膿し傷口、抉りに抉り炙り出し繊維と、たっぷり脂載る肉という肉汁に涎垂らし咀嚼し、骨髄までヲしゃぶればいい。
全身筋肉、悪魔に密売シテヤロウ、禁忌だとて希死念慮の前には平伏すだろう。
不自然な薔薇色に化粧されし角張った頬を所持する、ソイツの肌は
聖母様専用薔薇園の微笑精製し、
砂漠に堕ちる、一滴の神の涙のオアシスに縋る様に。
金網から外の世界への憧憬に何処までも続く青空に抗い様無き壁の過呼吸に虚構映像を拡張し、絞首金縛の犯人と同様に、ギュウッと力強く掴んでやる。
起立介助の瞬間、彼と死神の視線が交錯し、一つに融合して行く刹那。
手の甲への接吻は、悪霊の巣を纏われし落雷に、ビリビリビリッと大地を切り裂く様な感電。
霜が甲の中心から広がり、骨がバキバキバッキーと折れ、吸血痕が歯型から滲む入墨が解けぬ魔女の呪いを刻印し、少年は雪だるまに大変身。
夕焼けの流血がどろどろとスローモーションし、予言される破滅兆候に、操り人形は最期の涙を封印。
さぁ、死体を抉る様な、墓石を暴く様な、悲劇的洗脳へバンッ、崩壊再生銃口突き付け撃てヨ。
破裂しボロ肉片、散らばりは花の如し。
一瞬にしての熱病溶解に、みるみる瞳孔膨れ上がっては、パアァーーンッと勢いよく弾ける赤い風船。
急激に萎みゆく視界中はスロットの様に盲目の痛々しい空白に塗り替えられ、どくどくっと波打ち鬼気迫る血管の狂気が、彼を破壊衝動へと突き動かす。
自身の影に人生乗っ取られ、光が痛い太陽が怖い呼吸が痛いと想像絶する酸欠状態の境地で、閻魔大王にピンセットで解剖されし充血の白眼をひん剥き、
シニタイシニタイシニタイ
と狼人間として遠吠するは、少年。
“答えは、No, ダ、少年。お前を喰ってもハイエナの味がするダケ。覚えておくがイイ、我らは、崇高なる美食家なのデアル。……だがナ、親愛なるトモダチ。ソウダニャア、お前は、面白い玩具となりうル。夢の国で暮らすが良イ、これから、たあぁっぷり楽しませて貰うぞヨ。せいぜい、我らの慰みモノとして足掻くがヨイ。その分だけ、君の物語は上等の摘みとなるのだかラ。オーホッホホホ、オーッホーーーーーーーーーーーーーーーーーー”
ザザァァァァアアアアアアア―――――――
理性を失くした少年の聴覚はぐわんぐわんと飽和され、シェイクシェイク。
エンタメ好きな小悪魔の戯言、一音一音が汚部屋の床に散乱。
それらを拾い集めなければと物思う気力さえ空っぽの霊廟には遺されて居なかったし、時既に遅し、ピリオドは悪夢の交響曲に掻き消されてしまっていた。
飛行艇に幽閉され、朦朧と雲で霞み行く彼の意識中にて、記憶の片鱗の数々と出逢う内、不意にその一つ、足静止させるはイマジナリーメモリー。
思考タイプのタップダンスが〜♪たったのらららのる〜と途絶え、目の前へ死神纏うマントの闇が広がる瞬間。
彼は、遂に微睡世界に入国し、幸福の最高潮かつ、悲惨のクライマックスとも呼称可能な、“幻想住処行き”寝台列車のパスポートを入手した。
嗚呼………………………………………………
目をぱちくりと開いた刹那、天井壁画下の登場人物は、聖母マリア・生き写しの慈愛の暖かさに満ちる微笑をふわっと咲く花の如く漏らす。
彼女は、僕の“ママ”、、だ…。
ホロホロと溢れる嗚咽は、お天道様の体温宿し、闇は嘘みたいなカタルシスの魔法で快晴に染め上げる。
ママは、僕をふっかふかで豪奢な羽毛布団の敷かれた天蓋式ベットに寝かし付け、天使の忘形見の子守唄を聴かせてくれた。
子供部屋中央の赤煉瓦が囲いし、暖炉の灯は焚べた薪の舞台上でパチパチと火粉の精が舞い踊るのが微かに観察出来、言い様の無い温もりが胸にまざまざと燃え広がる。
“…………嗚呼、何処までも何処までも夢が、、続いて行けばいいのになぁ…”
気怠げに流星群をギュッと握り締め、ロミジュリ様に習っては、銀河鉄道・終着駅までエデンの園様と駆け落ち心中成功願望を三回暗唱。
星から降る黄金のフラッシュが疾駆し、クラッシュの瞬時、無賃乗車のプラグから駆け出しては、三歳の子供を躾ける様に、Sっ気恐ろしトモダチは蜂蜜色猫撫で声で忠告、耳元に。
“さっきブリダナ少年ヨ、此処はおとぎの国の洗脳だと忠告はしたがナ……、序ノ口の序ノ口、、。こんナにイトも容易く、ワナにカカルとはなァ。オモシロイ、ジョウデキダ!!
ご褒美に言わせて貰うガ、、
君はネ、だぁあれの目にも存在していナイ。
君の声は、だぁあれ聞こえていなんかいナイ。
…………………君はネ、捨てられたんダヨ”
軍服騎士の銅像の貴金属拳は、リズミカルな抑揚で僕の心臓をknock,knockし、窒息激痛に多角的視点・論点の概念覆り、反論不可能・催眠術。
防衛本能の鈍感さが敏感に、ネガティブ感情ブラックホールの所在暴かれ、ソイツを引っ掻き混ぜ混じぇては、胸中ゲロに酔狂の生暖かな刺青。
“早よ気付きなハレハレ…お前チャン”
と憎たらしく唸る野獣に向かい唸り返し。
“あ嗚ぁ呼あぁああ、
認めてっやるつっ……!!
僕はっ、ずっと愛が欲しいっ!!!!”
スラム街を彷徨、布端切れ縫い合わせた人体模型の栄養失調で覚束ぬ骨と皮の飢餓肉腫の乞食君が、帽子の空虚さに隈だらけの涙袋から生理現象とし血液移ろう様に。
それでも尚、生きて愛し夢に溶ける、“生命の水”を希求するのだけは、やめられない………♡うふふふふふふぐふふふふひぃ♡
砂漠地方の脱水潤い、新緑に朗笑を鳴らす丘陵にビビッドでカラフルなブロッサム咲き乱れる人生ドリームに迸る情熱。
ほんとうはねっ、、さびしかったんだ……
一九世紀末のフィルム歴史博物館が現像再上映中蒸気機関非稼働の荒廃街臨む、遥かな海のフリルがザブーンザブンと波立って。
深青のドレスに映える茜の地球儀から滲むグラデーションは濃紺に、爆発時間の秒針刻々と迫り、カモメさん旗めかす羽毛の白をもが発光。
だが、彼のふわふわに指先の幻触覚を感知すれば、入り混じる紺碧の闇カーテン。
究極光線に病む瞼の裏、映し絵一枚が火炎瓶に焼き尽くされる焼け野原の情景を、決してカモメは勿忘草として深海に葬る事は出来ないのだ。
夕陽の終焉が散乱させる
嗚呼、時空も太陽さえも青く碧く蒼く青い炎渦に呑み込まれて行ク。
僕はっ…ノートの空白マスに座り込んデル。
世界に唯一人の肉親にも見捨てられ、唯独り置いてけぼ……………………………………
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あああママが僕なんか要らないと吐き捨てる行かないで行かないでよママ行かないで…いかないでいかないでいかないでいかないでっ
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
頬を打ち付ける冷酷無慈悲な雨は、彼をたっだヒタスラに嘲笑するかの様に。
飢餓心にぼとり落とされし水滴は、愛の渇望だけを生成し、僕は虚無の世界へと放り込まれる。
ああ
寒い寒い寒い寒い
如何にかこうにか血通いし唇は蒼褪め、リフレインリフレイン新たな生命は尽きる。
再度、彼の眼乾涸び、安息の住処とは程遠い地中を生きとし生ける屍の如く徘徊して行く。
彼にとっての僅かな供養とする為、感情はゴミシュウシュウシャに回収して頂いて、唯、解離された世界を虚に映す砂時計の硝子を観察し、瓶底へ最期の一雫が落下し終末を待ち続けるダケ。
イカれた煉瓦ブロックにジェンガ城の骨組み、無惨にもグチャグチャに踏み荒らされ投下隕石の地球儀損害に生物存亡、消え消えバクテリアバクテリアバクテリア…
指からまろび出る”一瞬”を取替えそうと奮闘する英雄劇的画題は愚問に過ぎず、怠惰に賭けに置きましては、“天才”との異名を持つ彼は、最も“希望”を信奉した宇宙人に違い無き。
文字定義の詐欺に王者君臨しアイデンティティでさえも疑心暗鬼の烈しい支配で、自滅とは誰でもご存知、口の中にジワッと侵食した、堕落蜜に蕩けし胸焼け。
悲観的充血眼の傍観者が悟るのは、秩序も規則も机上の言論が構築したもので有り、生きて死ぬ間の無常性だけが絶対原則だという事です。
共感覚と共謀し、モネの如く開かれた新しきマナコで静観し世界は、
この世の何もかもが凶器と化して。
以上の通り、輪廻の沼からはどうやっても這い上がる事は不可能で、現実逃避へ瞼閉鎖し、ドロダラ爆流血液に溺れもがき刃物の切れ味一味一味は高級フレンチで富豪が料理長に最後の晩餐とし食膳させるステーキ。
剥がし瘡蓋がビーフジャーキー噛みちぎりを彷彿。
空気椅子の注射針でコレカラの道筋立ち入り禁止看板を立て掛けたのは、これ以上の道途絶えさせ、赤信号の守護神召喚し、前に歩みを進める事など出来ぬ様に、立て掛けたかったら立て掛けたのdeath。
そうだヨッ、思考世界などなき、思考世界にいなくてよき、黄泉の世界へ渡る方が、ずっとずっとず〜っと幸せなんだああぁっ…!!!
生きることより、死ぬことの方が幾億倍もネッ…………。
表情消失した少年の脳内では、膨大な絶望の言葉あられ多動に忙殺。
星座早見表がバケツ毎ひっくり返されたかの様な情報海に溺れ、高潮の一縷の平穏な瞬間を掴もうとブラックホールの目ぇ回転木馬でぐるぐると廻る…目が廻る程に……。
貴方は、シナモンロールからディッシュに溢れたアーモンドの欠片と同じ。
コロコロコロコロ転がって行きます。
顳顬滲む脂汗の熾烈な悪寒に、食後のデザート、プリンアラモードがお豆腐となりクチャァっと潰される。
襲いかかる胃袋の汚物を丸ごとオエゥィァッとひっくり返す嘔吐衝動が混濁便器に沈没事故の真実を、一体誰が知り得ただろう。
蒸気アイマスク装着でラベンダー畑へ瞬間移動のくらっとの眩暈。
想像を絶する痛覚神経を超越した瞬間、彼の脳内漂流オーケストラは指揮者がチェスの一手を遺失する様にタクトを遺失した事で失禁し、突如とし〜♪降り止まぬ雨 でさえもお口もチャック。
刹那、息が静止する。
呼吸の仕方を忘れてしまう。
マチソワの中途、、、、、
地球滅亡。
再びプロローグから幕開けヨ。
我思わぬ信じぬには、欺瞞に過ぎぬ脆弱な世界…
誰より慈悲深き生存本能は教えてくれたのだ。
ただただ無感情に、ただただ事務的に生きなければならないのだヨ、、と……。
“!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
はぁはははっはははははははっぅうふぁあははははっあっはははぁはあぁぁあっあっはっはあぅはっははぁぁあぅっあっはっははっっ
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!”
睫毛瞬ケバ、“影”ハ跡形モ消滅死、ダガ死カシ、周辺ニハ得体の知レヌ不気味ナ笑い声ノ反響ヨ。
ホラー映画恒例行事のゾンビ様の呪詛読経と物怪舞踊にリンゴンリンゴンとチャペルのステンドグラスが、そしてそしてのフランケンシュタインの花嫁がふわふわっと花枯らしモランちゃん。
被害妄想劇場の戯言だと分かってはいるのに、物体型所持せぬ得体の知れぬ、何者?かからストーキング&監視され、嘲笑されている様な気拭えず、ぞわぞわっとヨダツ身の毛。
ブライドちゃん突風涙雲直撃目下、分岐し大樹のふるふる過弱き枝に腰掛けし観察者の流浪の旅人、漆黒の鳥。
繊細な人間、、いやあぁ…〜♪迷える迷える子鳥サン は、傷付く事が日常茶飯事で有り、予防対策には無関心になるものダ。
期待を捨て期待捨て、諦め諦め諦め、停滞。
“いつの日にか”、破壊不可能運命訪問約束の必然的場所の悟りしお伽噺の停滞で、絶望の味を唇でギリっと噛み潰し、紅血をナゾル様にぬるっと愛撫。
世捨鳥・通称・鴉様は、
『カァアアァゥィーーー』
と空っぽな空へ、嘆かわしそうに向かい風一語遺言が済めば、冬眠送迎の、、EpiLogue
『バサバサバサバサバサバサバサバサッ』
漆黒の御羽根一枚を置土産に、いざ翼ハタメカシ飛び立ちノ時ゾヨ、、、新天地へ。
だがしかし、あれは…見間違いであったのだろうか?
去り際、彼が俯瞰した眼から涙を零す光景は……
ぽとり
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