第3話 防衛省潜入
「まあ、これはあくまで最悪のケース。そんな絶望染みた顔しないでくれよ。ただの俺の妄想にすぎない、かもしれない」。原川は沈んでしまった場をうまくまとめようとする。テーブルで向かい合う二人以外の客は何も知らないままお菓子を食べ平然と生きている。所々耳に入る雑音が生まれて初めて無機質なものに思えた。
「これらの内容だけでも十分いい記事が書けると思うが…、もっと知りたいなら行くべきところがある。」
「行くべきところ?」古田がすかさず問う。
「国だ」。
「クニ?」首をかしげると原川はポケットから少し古そうなスマホを取り出し、いじり始める。どうやら文字を打っているらしい。
「俺の防衛省の旧友を紹介してやる」。
「ほ、本当ですか!」破竹の勢いで古田が立ち上がったので周囲の客は神妙な顔つきでこちらを見ていたがもはやそんなものは眼中にない。
「モンブランクリスマスバージョンの対価だ」。
「ありがとうございます!やっぱり持つべきは大考古学者、原川考ですね!」
「え?そうかなあ」原川があからさまににやいているのがサングラス越しからでも容易に分かる。
「じゃ、今から防衛省の方に行ってきます!」
「おう!道まようなよー…ってあれ?モンブランは????え?古田君!?」
原川が気づいたころには目の前にはクッキーの残骸しかなかった。
「はい論破ア!お前みたいなよれよれのスーツ着た自称ジャーナリストにだれが国防の門をあけてやるか!」先刻、古田は防衛省本部に到着し、正面突破しようと試みたのは良かったものの警備員に呼び止められた。結果、警備員と古田のいざこざがかれこれ十五分以上続いていた。
「さっきから言っているが俺のことは原川先生からあんたらの方に連絡がいっているはずだ!それに俺は国家の存亡をかけてペンを握っているんだ!馬鹿にすんな!」
「はあ?俺もさっきから言ってるけどそんなの来てねえっての。そのパワハラ?っていう先生なんてどうせ陰謀論ばっか唱えてるインチキ学者だろ。さっさとお引き取りを願いますう!」。
「なんだとお!」
大の大人ががにらめっこをしていると古川が突如警備員の形相が変化したことに気がつく!
「だ、大臣!!」振り返るとそこには黒ピカの高級車からぼさついた白いひげが特徴的なおじさんが出てきていたところだった。なんと胸には議員バッチがついているではないか。
「ダ、ダイジン?ダイジンってあの?国務大臣?」警備員に確認すると激しく首をふってふって振りまくる。己の頭が真っ白になった瞬間、驚くべき言葉が耳を貫通した。
「あ、君が原ちゃんがいってた古田君?」
「え?」
「ふえええええ??」警備員と初めて息があった瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます