最終章
第26話 すれ違い始める想い
あれからは大したこともなく、普段と変わらない
なんだか生き急いでいるように思えて不安に思いながらも、たまの任務に魔法使いの能力を使って中位のあやかしなら一人でも倒せるようになってきていた。
「さすが、
「うーん……そうだな? 最初と比べたら、変身にも慣れてきたし……。ただ、使う魔法を変える度に変身を切り替えなきゃなのがな……」
「仕方ないですよー。それだけ効果抜群なんですから! もしかしたら、上位のあやかしも一人で倒せるようになっているかもしれませんよ」
試してみようといわれて、そんなに上位のあやかしがいるわけもなく。
いても困るけど……。
数日が経ったある日。上位のあやかしに襲われて、反撃したらあっさり倒してしまうという。
『あ……あっ……。人間の、希望…………王……』
「コイツも何か言おうとしてたな……戦闘中は、無言だったけど」
「あやかしの言葉は聞いちゃ駄目ですよー。それよりも、
普段と変わらない笑顔で『卒業』と口にする姿に、胸の奥が針で刺されたようにチクッと痛んだ気がした。
そして、俺の嫌な予感は的中する。
昼夜逆転している俺は、昼に目を覚ましてから施設内を歩き回って
「あっ、
「えっ……班長ですか? 班長なら……夜中に任務で出かけたきり、まだ見ていません」
「そっか……大丈夫ならいいんだけど」
通りかかった
俺が、魔法使いとして覚醒して、一人でも上位のあやかしを倒せるようになってから別行動が増えた。
俺は、施設の出入口まで歩いていく。
すると、どこから現れたのか、いつの間に呼んでもいない双子が背後を歩いていた。
「
《――
後ろから妹の
「ああ……。夜中に出かけたっきり帰ってないらしくて」
聞いたら答えてくれそうだけど、まぁいいかで済ませている。
俺のことを名前で様付けなのは、そう呼んでほしいと言ったから。
最初は、魔法使い様で。次にフルネームで様付けされた。
《
兄の
規則正しいとはいえない生活習慣に眉を寄せた。
出入口に来ても、誰ひとりいない
「もしかして、班長探してる?
「
「どうだろうねぇ……。なんていうか。
眉を寄せる
その場にあぐらをかいてしゃがみ込む
「前に、昔の
「そうだねぇ。前に言ったことと変わらないかな。ただ、昔から優しい人だったけどねぇ……」
「そっか……。冬の終わりに出会って、夏の終わりが近づく少し前までずっと一緒だったからさ……少し、寂しいな」
魔法使いとして成長出来たことは、自分も嬉しい。これで、
おもむろに立ちあがる
「こんなことしたら、速攻で
「いやぁ……
《――
昼食の時間になって食堂に向かう途中で妹の
《――
「えっ?
「ひゃうっ!? せ、先輩……。ごめんなさい! 忙しいのでっ」
逃げるように走り去る
追いかけても魔法使いの俺が
「……明らかに避けられてるよな」
《
「うっ……そこまで正確に言われると、胸にくるんだけど……」
謝罪を口にする
顔を上げる俺に、眉を寄せる
「あー……なんだ。乙女心は分からないからな……。確実に言えることは、
「
慰めるような大きな手と言葉に目を細める。
スッと立ち上がった俺は、自分の気持ちを吐き出した。
「あいつ言っていたんです。みんなも、最初は自分が守っていたって。なら、
入ろうとしていた食堂に視線を向けるが、閑散としていてシェフが一人で食事の準備をしていた。
「だから、俺が
「うん……。魔法使いとして覚醒した
「そう言われると、嬉しいです……。みんなは、変わらず接してくれるのに、
俺から逃げていったあと、どこに向かったのか色々と考える中で不意に胸が熱くなる。
「そうだ……。
「そっかー。青春って、若いときの特権って感じがして良いよね? 男なら、諦めちゃ駄目なんじゃないかなー?」
「
耳を刺すような緊急警報が鳴り響く。
つまり、どこかで上位のあやかしが現れたということだ。
だけど、30分以内の間なら俺たちは全員、施設内にいたはず。
《――
《加えて、ただいまの緊急警報システムを起動させたのは、
「えっ……?
頭が真っ白になって混乱する俺とは裏腹に、双子から居場所を聞き出す
言葉を交わすことなく頭がハッキリすると、強く頷いて外に向かって走り出す。
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