【配信】近所の祠、壊したった結果www

斑猫

きっかけは承認欲求

 大学生の堂本柊治どうもと・しゅうじは、ラップトップに表示された画面を眺めながら、がっくりと肩を落としていた。

 その理由は単純な物である。少し前から始めたウィーチューブの配信が鳴かず飛ばずだからだ。

 動画投稿は、道楽というよりも小遣い稼ぎや、もっと言えば注目されたいがために行ったようなものだった。ウィーチューブでの投稿や配信は今日では多くの者が手を染めている。彼もある動画――黒っぽいレッサーパンダとラーテルとかいう白黒の獣が単に駄弁っているだけの動画だ――などを見たりフォローしたりコメントを投げたりしているうちに、自分でもできるのではないかと思った次第だ。

 余談だが柊治が手掛けているチャンネルはオカルト系統の紹介を行うものだ。気になって視聴し始めた動画チャンネル「キメラフレイムの謎とき動画」もまた、概ねオカルト系統の動画だからだ。まぁ向こうは、配信主も視聴者も妖怪だという設定で話を進めているようなのだが。


 だが現状はどうだろうか。視聴回数は軒並み三桁以下、フォロワーの数などはもっと少なかった。ついでに言えばコメントも少ない。そしてその稀少なコメントも「出典があやふやだからそこんとこをしっかりしろ」だの「似たような内容を他の動画でやっていた」だのと言ったダメ出しばかりである。止めとばかりにキメラフレイムからお情けで「僕の動画を応援してくれているので、僕も応援しています」みたいなコメントを貰った時には、何とも言えない気持ちに襲われたほどだった。


「ああ、畜生。何で、何で視聴回数が伸びないんだよ……!」


 拳を握りしめた柊治の口からは、思わず恨み言めいた言葉が漏れ出ていた。

「キメラフレイムの謎とき動画」を筆頭に、他の表示されるオカルト系のチャンネルは、多くの視聴者が付いているし、視聴回数も順当に稼いでいるようだ。ただ単に、ネット上の百科事典の受け売りを垂れ流したり、内輪ノリの雑談を行っているだけに過ぎない動画たちだというのに!

 どうする? どうすれば俺も、俺の動画も注目されるようになる?

 思案し、半ば惰性でウィーチューブのトップ画面を徘徊する。ぼんやりとスクロールを下げていた柊治の目に、ふとある動画のタイトルが飛び込んできた。

「祠壊し」――その言葉に、柊治は釘付けになったのだ。


「祠壊しか。そう言えば最近、ツブッターで祠壊し文学だのなんだのって見かけるようになってたなぁ」


 祠壊し文学、ないし祠壊しミームについては、そうした物が流行っているという事だけは柊治も把握していた。とはいえ、所詮は以前流行した因習村と同じくお遊びの類だろうと、あまり気にも留めていなかったのだ。

 しかし今は違う。これもまた動画配信のネタになりそうだ。しかも丁度良い事に、住んでいるアパートの傍に、おあつらえ向きの祠もあった気がするし。

 利用できるものは利用してみせる――その思いが、柊治の面にいびつな笑みをもたらしたのだった。

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