2-6【しずくの涙】

ドキドキしながらエレベーターに乗った。

暫くするとドキドキはおさまって

今度は急に涙が溢れて止められなかった。


きゃーやだこんなところで号泣なんて

人が乗って来たらどうしょう。


幸いマンションを出るまで人には会わなかった。



足早にマンションを出ると



「おいどうした!」

と後ろから腕を捕まれた。


振り向くと承太郎じょうたろうくんだった!

なんで承太郎じょうたろうくんがこんなところにいるのよっ!!


ビックリしてるけど涙が止まらないし

しゃべれないし、そのまま両手で顔を覆った。


意外なことに承太郎じょうたろうくんは

そのままわたしの顔を自分の胸に抱き寄せて

泣き止むまで待っててくれた。



少し経つと落ち着いてきた


「ごめん。ありがとう」とわたしが言うと 



「何かされたのか?」


「えっ!

いやっなにも・・・いやっなにもではなくて・・・なにもと言うか・・・」


わたしは少し焦った


「なに?一人暮らしの男の家になんか一人で行って抱かれてきたのかよっ!」


「えっ!ちょっとなに言って・・・」


「なにって、男と女が二人きりで部屋にいたらそうなるだろっ!」


なんでそんな意地悪な言い方!


「男と女なんて言わないでよ!

流伽るかくんは弟みたいな存在で・・・」


「弟?それはお前が勝手にそう思ってるだけだろ」 


わたしが勝手に思っていること?



流伽るかくんは高校生なんだし」 



「高校生だってするときはするだろっ!

ちなみ俺は中3でしてたけどなっ」


はっ?急になんのカミングアウト? 


「中3?誰と?!」


「俺の事はいい」


「ちょっとなにそれ自分から言っといて!」



「でっあんな号泣して

オムライス失敗したのか?」



ムムム

承太郎じょうたろうくんはいつも自分は何でも知っていて、

わたしは何もしらないという言い方をしてくる


そのくせハッキリと言ってくれない 

いつもわたしを試すみたいに言う 



「あっ!もしかして

今日用事あるってあれうそ!?」


「さーなっ

元気になったみたいだからかえるかっ

ちょうど山田さん来たし」


承太郎じょうたろうくんは山田さんの車の方へ歩いて行った。


「それに言っとくけど、あいつんちにはお手伝いさんがいて、

毎日ちゃんとご飯作ってもらってるからなっ」


「えっ?」



「えっじゃねーよ

あいつは代議士の息子だぞ」


「そっそうなの??」


そう言えば食器とか綺麗に揃ってたし

ご飯も炊いてあった。



「それより何か思い出したのかよ

あいつは仲間だったのか?」



ちょっとなにそれっ!

承太郎じょうたろうくんにとってわたしは仲間を探す道具ってわけ?!


なんか悲しくなってきた。



「わからない。なにも思い出してない。・・・

ごめん今日はわたし一人で帰るから・・・」



わたしは一人で駅に向かった。

はっきりしない承太郎じょうたろうくんとの関係に頭きたのと

流伽るかくんへの複雑な感情をどうしたらいいかわからなかった。



「おいっ・・・」


承太郎じょうたろうくんの呼びかけを 

無視して駅へと向かった。


・・・流伽るかくんはやっぱり仲間なのかな?

・・・


男の一人暮らしの部屋に・・・

行っちゃったよ~


だってそれまではあどけなくて子供みたいにかわいかったのに 

急に大人の男性になってあせった


わ~思い出したらまたドキドキしてきた

流伽るかくんはわたしの事好きなの?


抱き締められて、キスされて

きゃ~やばいよわたしっ


流伽るかくんにどんどん引かれていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る