第15話
出会ってから付き合った時間はとても短いものだったけれど、その短い時間の中でこれほどまでに心を奪われた人はもう二度と私の前には現れないだろう。
「結ちゃん、あの日をやり直そう」
「……え」
耳元で囁かれた甘い言葉が心に浸透した瞬間、気持ちは11年前のあの日に遡っていた。
老舗料亭を出て祐輔さんの車に乗せられて連れて来られたのは11年前のあの日に入ったラブホテルだった。
「ここ、まだあったんですね」
「うん。中々繁盛しているみたいで安心したよ」
そんな軽口を叩きながらも私の胸中はドキドキしていた。
『結ちゃん、あの日をやり直そう』
(あの日をやり直そうって……)
一体何の事だろうと思ったけれど、ここに連れられてようやく合点が行った。
そうして私は28歳にして女として生まれて来た悦びを愛する人の手によって味わい、知ったのだった──。
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