第13話



「だけど勇気を出してよかった。父は母のことを忘れていなかったし、お腹の中にいた僕のことも凄く気に掛けていたんだ」

「そうなんですか?」

「あぁ。それどころか父は母を正式に妻に迎えるために努力していたと知ったんだ」

「え」

「父は母を心から愛していた。だから母を妻に迎えるためにアメリカ人の奥さんに解ってもらうために何年もかけて説得して来たそうだ。離婚に関する条件が破格過ぎて父は自分の会社や資産、全ての権利を奥さんや子どもたちに譲渡して身ひとつになっていた。そんな父の気持ちを母に伝えたらどんなendingを迎えたか分かる?」

「……ハッピーエンド、ですか?」

「そう。母も裏切られたという恨みに似た感情で長年押し込めて来た父への愛情を解放することが出来た。それでふたりは結婚して僕たちはアメリカに移住したんだ」

「よかった……」


それは心からの言葉だった。例えあの日から彼がいなくなり、私がどれほど傷ついたとしても……


(全ての事が解った今、心から素直によかったといえる)


そんな私の様子を見ていた祐輔さんは何ともいえない表情を浮かべ、そっと私の掌を握りしめた。




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