第39話 下田刑事の事情聴取

「ええと、つまり松尾さんは『凍道チャンネル』というサイトを運営してるんでしたっけ?」


「いえ、ですから、Youtubeという動画投稿サイトがあるじゃないですか?」


「はい」


「そのサイトで、ええと見せたほうが早いかな、これ見てもらえますか」


『こんいて~』『同接3000は草』『こんいて~』『ひかり教団の方から来ました』『【150円】小学生です 信じてください 天皇陛下の事を悪く言わないで!のだ』『ライブやれるか心配してたのだ』


「これが私がやってるチャンネルで、Youtubeに登録して動画を投稿してるんです。この女の子が私です」


「声は確かに松尾さんですね……なるほどですね」


「これはアバターっていって、キャラのマスコットみたいなものですね。この凍道チャンネルってのは、私が歴史解説とかをこのキャラになりきって解説するチャンネルです」


「なるほどですね~」


「で、このサイトを私がやってるっていうのは公表してないんですよ、あくまで凍道って名前でだけやってます、匿名なんですよ」


「匿名?」


「ええと、芸能人の芸名みたいなもんですよ。ほら、」


「なるほどですね~」


「で、このチャンネルで私が松尾光だって話したことはないし、樋口英雄の話を出したこともないです。なのに、樋口が失踪したあとでこんなコメントが」


『樋口英雄さんのことが心配じゃないですか?』


「これはすごく違和感というか……気になるんですよね」


「それで、心当たりがひかり教団、でしたっけ?」


「そうそう、それです」


「こんな宗教あるんですね~」


「いえ、実は調べた限りでは、かなり力を持ってる教団みたいなんですよ。政治家とかにも繋がりがあったり、芸能人も実はこの人はって言われてたり。統一協会なんかよりよっぽど強いカルト宗教ですよこれ」


「なるほどですね~」


「だからひかり教団が犯人じゃないかってのは考えすぎかもしれないんですけど、前もお話した通り樋口が消える前には少し違和感のある話をしていて、それが今思うとひかり教団から私にコンタクトと、あと私のチャンネルへの嫌がらせが増えたころなんですよ。いや、流石に考えすぎだとは思うんですけどね。でも流石に、樋口英雄が心配じゃないですか、は何か関係あるとしか思えないんですよ」


「たしかに、樋口さんが失踪したことを知ってないとこのコメントは書けないですね」


「もし教団が拉致とかしてたらすごい事件ですよね……ほら、そういう事件あの教団とか思い出します。いやまあ、うーん、でもなあ」


「ははは、もしそうだったら本庁でやるような事件になっちゃいますね」


「ですかねえ」


「ですね、所轄では扱えないですね。本庁でないと。だから考えすぎだと思いますよ」


「本庁じゃないと扱えないような大事件だから、あり得ないってのは思い込みかもしれませんよ?」


「なるほどですね~。ただ、先程もお話した通り、樋口さんが失踪されたようなのは確かで、ご両親からも 行方不明者届、いわゆる捜索願がでてます。ご両親の許可を得て樋口さんのスマホのロックを解除したところ、彼が連絡を取っていたのはほぼ松尾さん一人だったみたいなので、まあ、重要参考人ってことにはなるんですよ」


「あいつに他に交流してる人がいなかったら私が疑われてるってことですか?」


「いえ、捜査に関わるので詳しくは言えませんが、メールを拝見しても仕事関係のメールしかありませんでしたし、松尾さんが樋口さんをどうこうしたとかはなさそうだと思ってますよ。樋口さんが失踪した当日のアリバイも確認させていただきましたし。でも我々もこれが仕事ですから。最後に、樋口さんについてどんな人だったとか、松尾さんの印象を聞かせてもらってもいいですか?」


「そうですね・・・ひょんなことから知り合って、仕事を頼むようになりましたけど、たしかに恨みを買いそうなやつではあったんですよ。すぐに他人を恐喝しようとするような性格で、不倫の現場写真をバッチリ抑えたとき、あいつ、この写真で不倫してる側にもっと請求しましょうとか言い出して、そんなの恐喝そのものだろアホか!って、多分メールに残ってたと思うんですが」


「はい、はい」


「ただ、一応一度叱りつけると、覚えるっていうか、次からはそのことだけはしなくなるという、なんか年齢以上に子供っぽいやつでしたね。何に使ったのか知らないけど、初めて会ったときに借金が400万あるって言ってたんですけど、あいつが400万も借りられるとは思えないから変な筋からつまんでそうだったなあ」


「樋口さんは借金が400万もあるって言ってたんですか?たしかメールにもありましたよね、借金返せましたって。詳しく教えてもらえますか?」


「ああ、いや、ですから、最初に会って飲んだときは結構意気投合して仕事依頼することになったんですけど、どこか子供っぽいっていうか危なっかしいっていうか、あんまり友人とかにはしたくない奴だったんで、それからは飲みとか言ってないし、メールでやり取りしたくらいしか知らないですよ。飲んでたときは400万借金あるって言ってたけど、返せたって言ってたときまでには400万以上報酬渡してたし、へーそうなのかって思ったくらいで」


「話を聞いてるとあまり友人にもなりたくない、と。どうして仕事をこんなに依頼してたんですか?」


「うーん、変な話、ストーカー地味たことをする才能はあったと思うんですよね。尾行とか写真の撮影とか、相手がどういうネタを掴まれたら一番困るかを想定してちゃんと動いてくれるので、あくまで仕事の依頼先としては役に立ったというか」


「なるほどですね~」


「あいつ、もうだいぶ長いこと行方不明ですよね」


「そうですね」


「そういう場合ってもう死んでたりするんですかね?普通なにかの揉め事で拉致とかにまでなったら、多分これだけ長いと、殺されてるんじゃないかなって」


「縁起でもないですよ、ほんと、考えすぎじゃないですか?」


「すごく憎まれるけど殺されても死なないような、なんか変なやつだったんで、逆に心配なんですよ」


「なるほどですね~」


「私からは以上ですね。あ、そうだ刑事さん。もし私の予想がある程度あたってたら、ラーメンでも奢ってくださいよ」


「ええ?ラーメンですか?良いですけど」


「あいつはすぐ、なにか相手に負い目をみつけるとこんな風に奢れって言ってくる、最初は可愛げかなと思えるけど、2回目くらいからすごくうざくなってくるやつだったって思い出しました」


「なるほどですね……じゃ、またなにかあったら連絡ください」



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認知プロファイリング探偵松尾光 暇空茜 @himasoraakane

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