第3話 (株)日の丸クリーンサービス
かつて、幕府では御庭番と呼ばれたのが忍びであった。
時は流れ、現代では政府から特別清掃員と呼ばれている。
(株)日の丸クリーンサービス
創設者一族の服部家は明治から第二次世界大戦までは資産家として、政府や軍と密接に繋がっていた。戦後はGHQから身を隠し、資産没収を免れた。
その時、フロント企業として、清掃業務を営む会社を設立した。
当時の会社名は日の丸清掃株式会社であったが、20年前に名称変更をした。
当然ながら、まともに清掃業務を行っているわけは無い。
以前と同じく、諜報、工作、暗殺を主な生業にしていた。
都内某所の閑散とした場所に持ちビルがある。
この周囲が閑散としているには理由がある。周辺は全て、関係会社や個人の所有だからだ。敢えて、閑散とさせているのは敵対勢力に忍び込まれない為の策だった。
地上10階建てのオフィスビルは周囲にも同様の大きさのオフィスビルがあるため、特に目立つ事は無い。古びた感じの建物であるが、中に入ると、最新鋭のセキュリティが待ち構えている。
その最たる物は肉体に埋め込まれた非接触型電子チップであろう。
この会社の従業員には全て埋め込まれている。
チップには個体情報が入っており、それを読み取る事で確認が可能なシステムである。因みにこのチップには強力な毒薬も仕込まれており、万が一にも敵の手に落ちた場合の自害にも使える上に、強制的に取り出そうとしても毒が出て、その毒の強酸性で、チップ自体も破損する仕組みだ。
エントランスホールはガランとしていて、受付のカウンターがあるぐらいだ。そこには二人の受付嬢が常駐している。
当然ながら、彼女達もくノ一である。受付嬢の制服はよくあるオフィスレディの事務服のようではあるが、繊維は防刃。更に防弾ベストを着用している。カウンターの下にはTMP短機関銃があり、彼女達の腰にはグロッグ26自動拳銃と特殊警棒がある。それ以外にもこのホールには自動警備システムとして、監視カメラと連動した無人戦闘ロボット『オタスケくん』が居る。
オタスケくんは円柱形の形をしており、その下にあるタイヤで自走する。武装は胴体中央にテイザーガン。左右からネットランチャー。そして、頭部には9ミリ自動機関銃が設置されている。彼は監視カメラ映像や搭載されたセンサーを駆使して、搭載されたAIが自動的に敵を察知、撃退する仕組みである。
このように突然の襲撃にも備えられたセキュリティである。
2階は総務、人事などが入っており、3階以上が営業や業務などの部署が占める。
地下は駐車場と訓練場となっている。
短いながら射撃場も備えている。
実戦配備されている忍びはここで訓練をするのが基本である。
野外訓練は別に伊賀の山奥に古来よりある訓練場所があるためそこで行われる。
忍びの訓練は古に比べれば、近代化されている。
その内容は殆ど、特殊部隊の遜色は無い。
つまり、忍びの戦闘力は特殊部隊並でしかない。
彼らは超人でも無いし、魔法のような忍術など存在しない。
暗殺術は特殊部隊とは違うが、それだって、世界中の暗殺を行う組織なら、大抵は会得している技術である。
もし、彼らが世界中の特殊部隊や諜報員と違うとするならば、死をも恐れぬまでにマインドコントロールを施されている点だろう。
人権を無視した人材育成をする点において、忍者は最強であると言える。
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