この物語を読んだあと、時計を見てください

 消えたはずの駅に、ふとしたきっかけで辿り着いてしまった少年。現実と夢の狭間を揺れ動く描写が、まるで読者自身が「桜影駅」の霧の中を歩いているかのような錯覚を与えてくれます。ページをめくるたびに深まる静けさと不穏さ——それは優しさと恐ろしさが紙一重で共存する世界。終盤に残された“あの言葉”には、ぞっとする余韻と美しい哀しみが同時に宿ります。
 
 現実のほつれ目からふと覗く、忘却と記憶の物語。これはただの都市伝説ではありません。読んだ後、あなたも“あの駅”の存在を、どこかで感じてしまうかもしれません。

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