おっさんクエスト

ジョセフ武園

第1話 おっさんクエスト~冒険の所1を始めますか?

………ん?

どうした? なにを不思議そうにしてるんだ?

おめーだよ。おめーさん。

今、この画面の向こうにいるおめーさんに、挨拶してんの。

……。そ。

じゃ、あらためて。


よ。


ん?

ああ、いいよいいよ。

これはさ。

俺が一方的に話して

一方的に聞いてもらうって。そういうていだから……。


ん?

ああ、俺?

俺は……

そうだな

俺の事は

おっさん。

そう呼んでくれ。職場でも周囲にもそう呼ばれているからな。


さて……じゃあさ、少しずつ話そうかな。俺の事を。

読みたくなくなったらさ、いつでもプラウザバックしてもらって構わねえからさ。


俺はさ。今年でとうとう38歳なっちまった。

若い頃はさ、結構才能とか自分を信じてやってたんだぜ。

実際に勉強もして、結構な資格をとって

んで、必死で働いて、めげる時もあり。

愚痴を言い合う友人がいた時もあり。

恋人はなし。

これだけは、な。真面目に働いてたら勝手に出来るっていってくれたあの人たち。俺は貴方達の想定外の存在でしたわ。


借金アリ。

怪我アリ。毛もアリ。


おいおい、改めて自分で綴るとこれ以上にねえくらい切ないじゃねえか。


そんで、昨年の夏前くらいに

交通事故にあって、関節の椎間板にダメージを受けて

現在は地元に戻り

年老いた両親の終の棲家の新築マンションに間取りして住んでいる。


そんで、半年ほどで、事故相手の保険会社からの保険も打ち切りになり。

そうなると、シン無職になっちまうわけ。

流石にそれには両親もいい顔をしなかったわけで。特に父親の方なんかは本人も若い若い時に競艇で給料をすった時の事を今でも話し「ギャンブルはするな、真面目に毎日を働けば、ギャンブルよりも勝てる人生を手に出来る」が口癖なくらいだ。

主治医からも「短時間なら労働可~ただし、腰に負担のかからない動きに限る」なんて、診断書に書かれてさ。


地元のスーパーの精肉部が求人を急募急募書いてたのがキッカケで、そこにパートタイマーで月8万くらい貰ってる。

今日ももうすぐ勤務時間だ。


だから、リビングに行くと耳を潰す鳴声とすごい勢いで愛犬のトイプードルが駆け寄ってくる。

俺を心から迎えてくれるのはこいつだけだ。

なんて、可愛い奴だろう。


俺は、その温かい小さな身体を腿に乗せると、用意された昼飯を頂くんだ。


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