第12話
なんとなくこの世界での生活もようやく落ち着きを取り戻し、俺は安堵の溜息をつきながら、今日も今日とてギルドに薬草とポーションの納品にギルドへと向かっていた。
新人の二人、エルとリアナは、魔法士ギルド時代との忙しさのギャップに目を回しながらも、持ち前の要領の良さでしっかりやってのけている。特にエマの明るさは荒くれ者の冒険者たちにも評判がいい。
「あ、おじさーん!」
カウンターからエルが親しげに声をかけてくるたび、周囲の冒険者から刺すような視線を感じるのが、最近の悩みの種だ。
ここでの生活も落ち着いた物になってる、だからこそ今、考えてる事がある、この世界のグルメを堪能する旅に出るか、魔法探求をして過ごすか、と
正直、答えは出ていた。この世界の未知なるグルメを堪能し、ロブソンの記憶にある魔法をさらに探求する旅に出ることだ。
そうなると必要なものを買い足さないと、そのための経費もかかる、ならもう少し仕事を請け負うか、その為には誰かに相談したいんだけど。
「ロブソンさん、こんにちは。どうかしました? 誰か探してました?」
背後から、タイミングバッチリの声がした。茶髪の爽やかイケメン、リキッドだ。
「リキッドか。ちょっと相談があるんだが、いいか?」
「え? 俺でいいんですか? 『彼女』じゃなくて」
爽やかな顔をして、こいつは今さら何を言いやがった?。
「……誰の事を言ってんだ?」
「あれ? エルさんとリアナさんって、ロブソンさんの彼女でしょ? エルさんが『ロブソンさんが離れたくないって言うから、紹介してもらったんですよぉ』って惚気けてましたよ」
……あの女、また適当なことを。
「それは誤解だ。エルの冗談だ、信じるな」
「うわぁ、それ本当なら他所では言わない方が無難ですよ。二人の彼氏だってことになってるから、手を出したくても出せない連中がストッパーになって、ロブソンさんは絡まれずに済んでるんですから。実は裏で、相当妬まれてますよ?」
「は?なんでまた、俺なんかしたか?」
「ロブソンさんランク低いのに稼ぎがいいじゃ無いですか、どうも同じランク帯の冒険者が気に食わないようで、それに可愛い女の子をはべらしてるって」
あまりの理不尽さに泣きたくなった。やはり、一刻も早くこの町を出た方が良いよな。
「……分かった。その辺は気をつける。それより、相談だ」
「分かりました。では、談話室へ行きましょう」
冒険者ギルドには貸し出し工房が無い代わりに申請すれば誰でも使える談話室と言うちっちゃい会議室を貸してもらえる、その一室に通された。
「それでどんな悩み事ですか?」
「悩みと言うかだな。旅に出ようと思って」
「ええっ!? それは困りましたね……」
「何でだよ。俺の代わりなんていくらでもいるだろ?」
「何言ってるんですか。ロブソンさんが卸してくれる薬草とポーションの品質は、他の人には出せないものなんですよ」
「いや、でも、確かにさっき言った他の冒険者との関係を考えたら良いタイミングでもあるか、だけどそうなると上質のポーションの入荷は厳しくなるか・・・・ブツブツ」
リキッドは「うーん」と唸りながらブツブツと独り言を始めた。
「分かりました!旅に行かれるのはロブソンさんの自由ですから止めません。ただ、ギルドから『指名依頼』を出します。内容はポーションの大量納品。薬草採取は他の冒険者にやらせますから、ロブソンさんは調合に専念してください」
「わかっ……ん?」
リキッド君は何者だい?そんな事上に相談無しに決めて良いの?大丈夫か?
「どうかしましたか?」
「……そういえばリキッド。お前の役職って、何だったっけ」
「あ、しまった。つい……」
ついってなんだよ。
リキッドは苦笑いしながら姿勢を正し、一瞬で「貴族」の顔になった。
「私はギルドの外部顧問という立場です。この街の領主、サリバン子爵の次男、リキッド・サリバン。私は将来兄を支えてこの街の代官になる予定で、そのために勉強を兼ねてギルドに協力して貰っています」
「は……?」
貴族様。その単語が脳に響いた瞬間、ロブソンの記憶が過剰に反応した。俺は条件反射で床に膝をつき、平伏してしまう。
「待ってください! 私自身には爵位はないんですから、やめてくださいよ!」
慌てるリキッドの声をよそに、俺は自分の不運――いや、幸運すぎる出会いに、ただただ困惑するしかなかった。
へのへのもへじがくれた夢の片道切符で前世の世界で暮らすことになりました~居場所を無くした俺は、懐かしい異世界の日常に居場所を見つける~ コツ @zii10
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