トリグッズの探索者(SF篇)

@2321umoyukaku_2319

第1話 探索の始まり

 トリグッズを探す旅は、唐突に始まった。

「うっ、マジかよ!」

 銀河辺境艦隊の一人乗り探査ロケットのパイロットだったワイ君は、艦隊本部からの緊急入電を聞いて慌てふためいた。太古の昔に失われた人類の宝トリグッズから発信される微弱な電波が受信され、その発信地点に最も近いのがワイ君の乗る探査ロケットだったのだ。

 いつもボケ~っとしているワイ君の顔に緊張が走る。

 トリグッズ……それは人類の英知が詰まった夢の物体であり、かつ禁断の果実だった。トリグッズには無限のエネルギーが封じ込められているとされており、不断のエネルギー不足に悩む人類にとって喉から手が出るほど欲しいものなのだが、そのエネルギー放出量は計り知れないため、暴走すると宇宙が崩壊する恐れがあるとの予測があるのだった。

 そんな物騒なものを手に入れる必要があるのか……なんてことをワイ君は一度たりとも考えたことはない。毎日が楽しければ、それでいい。そんな享楽的な生き方をするのが信条なのだ。とはいえ、こういう面倒な事態になれば考え込まざるを得ない。こんな厄介事から逃れるのが一番だ! という結論に至る。

 ワイ君は宇宙退職代行社に連絡し、今日付けでの退職を依頼した。

 未来だと、そういったことも可能なのである。

「あ~肩の荷が下りた! さてと、帰ってゲームをやるかな」

 ワイ君はロケットを操縦し、生まれ故郷の星へ向かった。

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