トリグッズの探索者(ホラー篇)

@2321umoyukaku_2319

第1話 探索の始まり

 トリグッズを探す旅は、唐突に始まった。

 病死した死刑囚が自分宛てに残した手記を読んでいた教誨師は、その文面を目にして息を呑んだ。それこそが、死刑囚が関与した犯罪の謎を解くだったからだ。

 その殺人事件は不可解な事柄だらけだった。

 まず被害者の身元が不明である。遺体は鍵のかかった金庫室内にあった。胸にはナイフが刺さっており、それが致命傷となったのは明らかだったが、分かったのは結局それぐらいだった。

 加害者とされた人物つまり、この手記を書き残して病死した死刑囚は、その密室状態の金庫内で意識を失くした状態で発見された。死体のナイフに残された指紋が一致したため、真犯人とされたのである。

 だが、被疑者は犯行を否定した。自分は、トリグッズ探索の旅の途中で偶然に死体と遭遇したのだと主張したのである。

 とある小説投稿サイトに作品を出すと貰えるトリグッズが、ある出版イベントの会場で配布されると聞き、その人物はイベント会場へ出向いた。すると、ちょうど千人目の入場者とのことで、特別なトリグッズを渡される運びとなった。それは実は非常に貴重な品物で、ちょっとした探索の旅に出かけなければならないと説明された。探索の旅といっても、トリグッズが保管されている某所へ行って、その金庫室へ入るだけの話だったが、実際には大変な労力を要したそうだ。

 裁判での証言では、その大変な労力というのが、ここには書けない禁断の行為だったようなのだが、諸般の事情で省略することをお許しいただきたい。

 話を戻そう。それで、金庫室へ入ったら……胸にナイフの刺さった死体があった。恐るべき光景に失神し、起きたら警察だった、というのが死刑囚の供述だった。

 判決は死刑だった。この人物が以前にも幾つかの犯罪に手を染めていたのが裁判官の心証を害したのである。

 別の意見もあった。謎めいた事件の幕引きを急ぐため死刑という重い判決が下されたという、根拠のない噂である。

 そういった怪しげな話の秘密が、手記に書かれているのではないか? そう考えた教誨師は、手記をくまなく読んだ。そして、恐怖に震えた。そこに書かれた事実を誰にも話さず墓場へ持って行くことを決意し、手記を焼却した……とされているが、それが今回のコンテストに投稿されたとの噂がある。それが事実なら、その手記は読まない方が良い。読んだ教誨師は、後に正気を失った。その一因が手記を熟読したこととされているのである。間違っても、それを読んではならないと忠告して本稿を終える。

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