第86話 天国と地獄
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美女3人の猫団子に巻き込まれた俺は、高速バスに揺られながらサービスエリアを目前にして、悲劇が襲いかかろうとしていた。
ああ、ちょっとお腹が痛いんだ……前前世では職業柄から人間失格を何度も体験してきたが、平和な今回の人生においては別のお話。
わずかな期間で厨二病患者、下着ドロ(冤罪)という蔑称を付けられ、このままでは『うんこマン』または『粗製乱造の太宰治』と言う渾名が増えてしまう恐れがある。
早いところトイレに駆け込みたい俺は、手足の自由が拘束されているので、まずは左側で腕を絡めながらもたれ掛かるウィラから攻略をすることにした。
一定の速度、間隔で道路の繋ぎ目を通過することにより、バスの揺れるタイミングを計ってすっと腕を抜いた。
ああ、まずは左手が自由になった。
お胸がややすっきり……失礼、スレンダーな体型のウィラだからこそ可能な攻略法であり出足は好調であったが、右側で腕を絡めるグラマラスなジェニファーだとどうかな?
ああ、うまい具合に腕を挟まれているおかげで、普段であれば天国、しかし、腹痛に襲われている今は地獄である。
そんな俺の心境を反映したのか、3人のイビキで『天国と地獄』が奏でられて思わず笑いまでもこみ上げてきたが、同時に腹痛もヒートアップしていく状況に焦りが生じる。
ジェニファーの小玉メロン2つによって、なかなか抜けない右腕であるが、ここは冷静に解決の糸口を見つけるべく、腹痛と戦いながら観察を試みた。
結果、ジェニファーが俺の方へ身体を向けていることにより、一か八かであるが、とってもスマートな方法を閃いた。
作戦としてはこうだ。
まず、左腕を動かし、膝上を占拠するクソチビポメ柴の身体に当たらないよう、ジェニファーの方へと動かします。
クソチビポメ柴の頭を通過したあたりで、第1関門を突破。
次にジェニファーの後頭部あたりへ手を持ってきます。
ジェニファーの背中側からブレザーとブラウスの隙間を確認し、そのままゆっくりと身体に触れないように手を通し、だいたいこのあたりだろうと見当をつけて指先を動かします。
よし、バックホックだ!……そこからはさっきと同じくバスの揺れるタイミングを見計らい、ブラウス越しからバックホックを外すと同時に腕を抜けば……成功だ!
これがフロントホック、サイドホックまたはノンワイヤーだったら成立しない作戦であり、人間失格確定だったが……俺は賭けに勝った!
ちょうどバックホックが外れたことによって腕を抜きやすくなったような気がすることで、作戦成功の遠因にもなったのかもしれないね。
ジェニファー、申し訳ないが密かに戻すことは出来なさそうなので、寝起きドッキリを楽しみにしていてくれ。
最後にクソチビポメ柴をお姫様抱っこして立ち上がり、俺の座っていた位置に置いておけば完璧だ。
仕返しとばかりにクソチビポメ柴の膝上には、かわいいくまちゃんのぬいぐるみ、そしてジェンガを乗せておいた。
さ、あとはサービスエリアに着いたと同時に、RTAの始まりだ————。
◇
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