第63話 そのまた別の猛者たち
◇
俺たち男性陣のスワンボート作戦、女性陣のセグウェイ作戦はものの見事に頓挫した。
ひたすら楽してウォークラリーの攻略をしようと考えたが、現実はそう甘くなく、毎年同じようなことを考える生徒、グループがいることから教員側から対策されているようだ。
東方共栄学園の教職員を相手にするとなれば、一筋縄にはいかないって訳だ。
もちろん俺たち以外にも楽な攻略を試みようとしたグループもいるようで、今回は観光用の潜水艇ツアーで突破しようとした猛者がいた。
ああ、その手もあったか……感心してその一団をスタート地点で待ち、戻されてきた彼らから話を聞いたところ、予めツアーの予約をして貸切にしたまではよかったらしい。
しかし、迎えた当日には、学校側に情報が漏れていたこともあり、他の利用客もいない状態だったのが運の尽きだった。
無駄に装備の充実した漁船から放たれたアクティブソナーにより、見つかって通報されたことで現場には教職員を乗せた数隻の小型ボートが集まった。
観念して浮上すれば、どうみても釣り客にしか見えないキタバ先生を始めとした、教職員たちによってスタート地点へと戻されたのだとか。
せっかくなので、他に方法が無いか知恵を絞るため、彼らも交えて作戦会議をすることにした。
まずクールでかっこいいけど3枚目扱いな俺、常識人っぽく見えて型破りな兄貴、水泳部に入れば有望株のウキタ君、馬術や剣術に長けた上様のようなマツダイラ君で構成されたお笑いチーム。
綺麗で可愛くて美しい上に賢いドイツ系関西人のウィラ、とにかくスケールと器のデカいナギ姐、情報屋で影の実力者のカズサさん、クレバーな狂犬クソチビポメ柴のヒナコ、「カイコクシテクダサーイ」的な黒船来航のジェニファーで構成されるクセの強い女性陣。
そして最後に、潜水艇作戦を考えた彼らを紹介しよう。
破天荒で型破りな板倉(イタクラ)君、有能で頼れる日下(クサカ)君、冷静沈着な内野(ウチノ)君、慈悲深い神職志望の橋本(ハシモト)君である。
作戦会議という堅苦しい話ばかりもあれだし、親睦も兼ねて湖畔でバーベキュー大会を開催した俺たちは、ひとまず糧食を確保できたのできっと頭が冴えることだろう。
なにごともまずはご飯、腹が減っては戦はできぬのでこれに尽きる。
バーベキュー文化の本場、アメリカ生まれのナギ姐とジェニファーは、当然テンションがあがったのは言うまでもなく、盛り上がって来たところでグリーンティ、キタバ先生も合流し、現場を押さえられたが……そのまま続行。
あたかも最初からいましたと言わんばかりに、グリーンティとキタバ先生は俺たちと一緒に肉を頬張りながら顔をほころばせた。
やがてバーベキューは終わり、またしてもお説教タイムが訪れた。
「僕はね、君たちのような破天荒な生徒が大好きだ。それでいい、若いうちにいっぱい青春を楽しんでくれればいい。おいしいバーベキューをご馳走してくれたお礼だ、レンタルサイクルを使ってコースの反対側から回り込むといい」
キタバ先生のお説教は、とてもシンプルであり、むしろ俺たちの行動に感銘を受けたのか、本件に関しては不問となった。
それだけでなく、今回のウォークラリーで教職員の警備が手薄なルートまで教えてくれた。
おいおい、それでいいのか?
先生もちょっと自由すぎるんじゃないかな?————。
◇
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