第24話 お詫びと訂正を含めたバナナボール最終回








  バナナボールもついに最終回、制限時間120分とだいたい映画1本分ぐらいでゲームを終わらせないといけないのは、観客に飽きさせない為だ。


 観客ファーストなエンタメならではのルールであり、『バナナボール部』 VS 『チーム・俺たちの明日はわからない』のエキシビションマッチは、頼りない下位打線から始まる5回の裏の攻撃……既に終戦ムードなんだよな。


 ここまでの打撃成績で言えば、野球経験1フィートぐらいのジェニファーは二打席凡退。


 4回の裏のカウントを間違えたことにより、何故かヒナコから打席に立つ描写になっていたが、あれは俺の記憶違いだった。


 ヘルメットが無ければ即死だった件についてがあったので、一時的に記憶が飛んでしまったんだ……ということにしてくれよな? HAHAHA? 


 卓球部のタナカ君は、しれっと二打席一安打の活躍。


 よくわからないキタバ先生も同じく、二打席一安打の活躍で、当然俺はゲッツーだったのが4回の裏のお話だ。


 ヒナコのデッドボール、ナギ姐の大飛球からの戦線離脱、代打じいさんAの空振り、ウィラのクリーンヒット、兄貴とカズサさんの凡退が、5回の裏話なんだ……申し訳ない。


 作者がノリだけで進めたからパラドックスが起こってしまった。


 よって、最終回は6回の裏である。


 先に述べた通り終戦ムードなことには変わりなく、じいさんズはこれまたレトロなラジオの前で泣き崩れてるご様子。


 だが、奇跡は起きるんだよ……野球経験多分1フィートぐらいのジェニファーは、なんとかバットに当てれば打球が前に飛び、竹馬君はトンネルしたことにより出塁!


 続く卓球部のタナカ君もヒット!


 キタバ先生もヒットで満塁のチャンスだ!


 さあこのチャンスで二打席共にゲッツーだった俺が、打席に立てばどうなるかって?……ベンチを見てみろよ?


 最高の場面だからこその期待のあまり、盛大な溜息が吐き出されているんだ!


 もちろん観客もそうだ!……ああ、そりゃあそうだよな?


 ま、なんとかなるべ……バナナボール部の放った第1球、火の玉は高めのクソボール。


 明らかなボール球だったが……審判からコールされたのはストライク……だと?


 流石にこれは抗議するのも当然だよな?


「今のどうみてもボールだろ?」


「クソボールやないかい!?」


 ベンチから飛び出したウィラも審判に詰め寄り、猛抗議したが……判定は覆らず、退場の代わりにツーアウトを宣告された、もはやルール無用レベルのカオスが形成された。


 ま、野球は最終回のツーアウトからって言うじゃねえか?


 俺だってバットには当てられるんだ……4対1のビバインドだけれど、逆転の目はまだある!


 諦めたらそこで終わりだ、最高にいいところを見せてやろうぜ?


 いいボールが来るまで粘り、ついにはフルカウントだ!


 戦線離脱したナギ姐も帰ってきて声援を送っている。


 黒塗りの高級車の持ち主と思われる、スーツ姿のイカツイ人も一緒になっている、まさにバナナボール最終回に相応しい展開だ!


「オッラ! ド真ん中のストレートは、意外と打てないぞ? それじゃ、がんばれよ! アディオス!」


 どこからともなく情熱のラテンの風と共に現れた、ラティーノは最高に爽やかな笑顔でアドバイス、そして声援を送って去っていった……いや、誰だよお前?


 ま、泣いても笑っても最後だからね……思い切りよく振ってやろうじゃないか。


 バナナボール部のピッチャーが投じた、燃え上がる渾身の一球は……ド真ん中のストレートだ!


 俺は、もらったとばかりに思い切りよくバットを振ったんだ————。








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