第19話 昔のパ・リーグの外野席のように







  本作は、バナナボールを題材とした作品ではない。


 このままでは、バナナボール編が終わらない為、バナナボール部の打席はダイジェストおよび、大幅なカットでお送りいたします。


 あくまで本作は学園コメディものであり、バナナボールのお話ではないからね?


 それじゃ、3回の表を駆け抜けよう。


 先のファールボールを観客がキャッチしたことにより、アウトカウントされてご立腹のウィラは、当然報復する気満々であり、球が抜けていく場面が多くなった。


 むしろ明らかなビーンボールを投げているようにしか思えない訳で、デッドボールが続いたことでバッターは次々と出塁することに……当然のようにノーアウト満塁のピンチとなった。


 満塁策? いいや、マウンド上のウィラはすっかりご機嫌の様子だ。


 劇場型なピッチャーは、バナナボール的にエンタメ全開なのでありかもしれないが、このあと打たれまくって炎上しないことを祈りたい。


 今のところ暇な外野の俺たちは、昔のパ・リーグのように外野スタンドで流しそうめんならぬ、グラウンドで流しそうめんを試みようと新品の雨どい、骨組みを組み立てながらギャラリーの家庭科部にそうめんを茹でてもらい、あとはどこから水道を引いてくるかってところ。


 ああ、薬味はその辺に生えているノビルを使おう。


 万能ねぎの代わりになるからね、くれぐれも水仙と間違えないように頼むぜ?


 時折スコアボードを見ながら、アウトカウントは進行している様子なので安心だ。


 三塁を守っているはずのキタバ先生も様子が気になったのか、いつのまにか外野まで守備位置を後退し、流しそうめんのセットを組み立てる様子を眺めてご満悦のようだ。


 家庭科部に頼んだ出前もそろそろ届く頃なので、なんとか引っ張ってきたホースで組み立てた雨どいに水を流せば……よし、動作チェックはオッケイ!


 薬味のノビルも園芸部が確保してきてくれたので、これも家庭科室に持っていって刻んでもらおう。


 しばらく待てばアウトカウントが更に進み、このままではせっかく組み立てたのにスリーアウトチェンジになりそうだ……あとはそうめんを流すだけなんだけどな、間に合ってくれよ?


 内野の方は、白熱の攻防戦、劇場が繰り広げられているようであるが、外野はそうめんを待つだけのお気楽モードだ。


「おまたせしましたー! そうめんをお届けに上がりました。あ、これ薬味です」


 家庭科部の女生徒が、エプロン姿で両手で鍋を持ちながらグラウンドに届けてくれた。


 とりあえずこれで好きなもの食べてと二千円を渡そうとしたが、そう遠慮されても手間賃ってものがあるだろ?……ああ、それなら君も流しそうめんに参加してくれないか?


 人数が多いほうが楽しいだろうからね?


 そんな訳でバナナボールのエキシビションマッチで、多分人類史上初の流しそうめんを始めた我々だったが……。


『CRACK!……』


「コラー!! トラチヨ!! あんたらなにさらしとんじゃボケ!! はよボールを追いかけんかい!?」


 外野まで飛んだ打球は、流しそうめんセットに当たらなかったので一安心だったが、この間にランナーは一掃どころか、お椀と箸を持ちながら必死にボールを追いかけたが、ランニング満塁ホームランが成立し、4対1と逆転されてしまった。


 その後、流しそうめんを再開した外野陣の方へとボールは飛んでくることなく、気付いたらスリーアウトチェンジ。


 流しそうめんは、バナナボール部の外野陣に託し、二回の裏の攻撃。


 卓球部のタナカくんは、普通に出塁。


 続くキタバ先生は凡退し、自称打てない・守れない・走れない9番DH(センター)の俺は、併殺打を放ち二回の裏は終わった————。








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