エピローグ あるいは転章


 ――夏がもうすぐ終わる。


 大きな台風が関東に接近して大雨を降らせた。

 台風一過のあと、風は急に涼しくなって秋の訪れを感じさせるようになり、暑さが落ち着いてホッと一息つくようになった。季節が変わるころ。


 女のひとが僕を訪ねてきた。

 そのひとはすらりと背が高く、整った顔にショートカットをきれいな青色に染めていた。二十代くらいの大人っぽい女のひと。

「初めまして、多知花薫たちばなかおるっていいます。君が、佐伯翔斗くん?」

「そうですけど……」

 僕は、警戒しながら返事をする。彼女は安心させるように、にっこり笑ってこう言った。


「『白い少女』について聞きたいことがあって」


「!」


 驚きで顔色が変わった僕に、そのひとは大慌てで付け加えた。

「あ、驚かせてごめんね。私も事情があってあのマンションのことを調べていたの。そしたら玉泉寺の鈴木さんに、『白い少女』のことなら君が一番詳しいって聞いて」

 と、畳みかけるように話す。

 僕は目を瞬いて、慌てるそのひとを見ていた。……


「――『白い少女』について調べた資料があるって聞いたの」

 真剣な、強い揺るがない目をしていた。


「私に、彼女白い少女のことを教えてくれないかな?」




行方不明の幼馴染の話~ヴィレッジ岩屋顛末 番外編~ 終

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行方不明の幼馴染の話~ヴィレッジ岩屋顛末 番外編~ 榛葉琥珀 @amber-lionking

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