異世界でも水分補給は大事です! ~液体生成スキルでのんびりサバイバル~
楠富 つかさ
第1話
「あれ……ここは、どこ?」
ここはどこ、私は誰? 私は――
「水瀬雫さん。ごきげんよう」
そう、私の名前は水瀬雫。どこにでもいるような一般JKなんだけど……私を呼んだのは誰?
「異世界に興味はありませんか?」
目の前にいるのは真っ白な服を着た金髪の女の子。年の頃は同じくらいかちょっと下か。
異世界に興味はないかと聞かれているこのシチュエーション、十中八九私は既に死んでいる。あれ……私、なんで死んだんだろう? 死んだら全員異世界に行けるのか、はたまた私は選ばれたのか。
「疑問はいくつもあるでしょうけど、ひとまずお答えしましょう。雫さん、貴女の死因は熱中症。脱水症状がひどかったみたいですね。そして貴女には異世界で生きる才能がある」
なんか、もっと違う才能が欲しかったのに。それこそ、足が速いとか……って、私、部活中に倒れたんだっけ。
「異世界ってことは、なにか……スキルとかあるの?」
「そうですね。異世界に行く人に共通するスキルは付与しますが――」
共通スキルは話していることがわかるとか、ステータスが見られるとか、そもそもの身体スペックが向上するとか、そういったものらしい。そしてその人だけに付与される固有のスキル、それを今からもらえるらしい。
「なら、水をどこでも出せる……いや、水だけだとショボいな。液体! 液体ならなんでも操作したい!」
「分かりました。液体生成ですね。ただし、最初からなんでもとはいきませんよ。貴女自身とともに成長していくスキルです」
なるほど、なんでもありとはいかないのか。その世界の文明とか壊しちゃうかもしれないもんね。最初は水だけらしい。でも飲み水さえあれば生き延びやすくなるね。地球の日本以外の国に行く時でさえ飲み水が心配になるんだから、水源が生水だったり井戸だったりしそうな異世界で飲み水の心配がないなら、頑張れるよね。なにせ、人は水を飲まなかったら死んじゃうんだもの。私が言うんだ、間違いない。
「私がこれから行く世界はどんな世界なの?」
「そうですね、2000年代初頭の地球に住む日本人が想像する剣と魔法のファンタジー世界と言って問題ないですね。魔王のような存在はいませんが、人々は魔物を討伐しつつ日々を生き、力に覚えがある人はダンジョンに挑みます」
「なるほど、よくあるゲームみたいな世界ってことかな」
「そうですね。ただ、これまで何人もの日本人の方をお送りしている世界なので、例えばそうですね……マヨネーズはあります」
異世界漫画ってマヨネーズ好きだよね。私はあんまり好きじゃないし、なんなら異世界で生卵とか絶対危ないと思うんだけど……。
「銀行の仕組みについても地球と似た仕組みが構築されていますよ。とはいえ、私からお金を渡すことはしませんが」
初期の所持金はないらしい。その辺はちょっとシビアだね。
「他に質問はありますか?」
「そういえば……女神様の名前を聞いてないや」
「あ、そうでしたね。申し遅れました。私は女神、アリシア・ハートロード。では、水瀬雫さん。新たな世界へ行ってらっしゃいませ」
アリシアちゃんと名乗った女神様は、可愛らしく手を振って私を送り出した。いってらっしゃい、かぁ。日常的に使う言葉なのに、不思議と女神の祝福みたいなものを感じた。
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