第4話

 さて次の部屋。松山さんと晴川くんと一緒に、ちょっとガタイのいいオジさん、石丸イシマルさんの部屋の前に立った。


 ノックをしたのに返事がない。


 恐る恐るドアを開けてみると、鍵がかかっていなかった。

 犯人がまだわからないのに不用心だな!てかウロウロしてないでよ。

 私は内心プリプリしていた。

「えっと、どうすんの?探すの?」

 晴川くんが面倒くさそうにたずねる。

「探すなら俺たち先に行ってていい?あんまりウロウロしたくないし」

 な?と松山さんに同意を求める晴川くん。絶対松山さんと二人きりになりたいんだろ、と思って私はジトッと晴川くんを見る。


 でも、確かに探したりするのは一人のほうが動きやすい気がするので、私は二人と一旦別れることにした。


 二人に、よかったら他の人に集まるよう声をかけてもらうように頼むと、面倒な顔をしながらも一応了承してくれた。

 よし、これで少しは負担が減る。


 一人になったところで、私は石丸さんの部屋を見渡す。

 石丸さんがどこに行ったのか、何がヒントが無いか調べてみようとしたのだ。


 私は優愛みたいに推理なんかできないけど、一応優愛の近くにいつもいるので調べるやり方くらいはわかるはず。

 ふと、机の上にスマホがあるのに気付いた。

 現代人なら、どこに行くにもスマホを持って行くはず。それなのにあるという事は、すぐに帰ってくるつもりなのだろう。トイレかな、それか、確かヘビースモーカーみたいだったからタバコ吸いに行ったのかもしれない。 なら少し待っていればくるだろうか。

 私はそう思い、椅子に座らせてもらおうとした、その時だった。


 椅子の上に、タバコとライターが置いてあるのに気付いた。

 あれ。タバコ吸いに行ったんじゃ無いんだ。じゃあトイレかな。

 そう思ったけど、ふと変な予感がした。 ここのペンションのトイレは玄関の近くにあり、石丸さんはトイレのたびにそのまま外にタバコを吸いに行っていた。

 いままでトイレに行くのにもタバコを持って行く人が、タバコを置いていく……?

 私は背中に冷や汗が流れるのが分かった。 スマホもタバコも持っていかない……つまり落として証拠になるようなモノを置いて行っている……。

 まさか、そんな。石丸さんが!?そしてもしかして、第二の殺人を起こそうとしている!?

 妄想に近い私の推理だったけど、嫌な予感がして私は石丸さんの部屋を飛び出した。

 どこに!どこに行ったんだ石丸さん! 次のターゲットは一体!? 私は急いで優愛に電話をかけて、もしかして石丸さんが犯人なのかと問おうかと思った。


 その時だった。

「あれ、俺の部屋の前で何してるんだい」


 目の前に、石丸さんがノッシノッシと大きな体を揺らしてやってくるのが見えた。

「い、石丸さん……」

 私は思わず後ずさる。

「何してきたんですか?」

「……タバコだけど」

 石丸さんはニヤリと笑った気がした。

 私は冷や汗のまま、勇気を出して石丸さんを責める。

「嘘だ。タバコはその机の上にあるじゃない!ヘビースモーカーのあなたがタバコを持たずにいなくなるなんて、一体、一体あなたは……!!」

「……え?」

 石丸さんは僕の言葉を聞いて、キョトンとした顔をして、そしてポケットをまさぐった。

「え、タバコ、俺のポケットにいっぱいあるけど」

「え?」

 私は石丸さんがポケットから取り出したタバコをポカンとした顔で見つめた。

「あー、確かに椅子にも置いてたけど……それがどうしたの?」

「……あ、いえ……」

 うう、恥ずかしい。何が『一体あなたは!』だよ!普通にタバコ吸いに行っただけじゃない。考えすぎだ馬鹿馬鹿。

 私は真っ赤になったまま、石丸さんに 「私の友人が、犯人がわかったそうなので、今から食堂に集まってください……」 と力無く言う。

「あ、ああ、そうなんだね。わかったよ」

 石丸さんは私が凹んでるのに戸惑ってはいたものの、すぐに集まる事を了承してくれたことはありがたかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る