第2話 山田⇨上田
残された私は一瞬ぽかーんとしてしまったが、すぐ自転車に乗って自分も学校に向かった。自転車を漕ぎながら上田との思い出を振り返る。
中学3年生の1学期、運悪く私は学級委員長になってしまった。相手の男子も同じように運悪くくじ引きで委員長になってしまったのでやる気なんて本当になかった。
5月の末に運動会があった。それぞれのクラスで応援合戦があるのだが、クラスが変わったばかりという事もあり皆まだぎこちなく、意見も出てこないし、やる気も感じられない。
委員長として前に出てまとめる立場として困っていると
「あのさぁ、もう中学最後の体育祭じゃん?中途半端ってダサくね?やるならやり切っちゃおうぜ!」
上田のその一言でクラスの皆がやる気になってくれて応援合戦で一位を獲得する事ができた。
思春期でみんな何かをやり切ったり出したりするのを恥ずかしがる事が多い中で引っ張って盛り上げてくれたのは本当にありがたかったし助かった。
案の定、2学期ではみんなから学級委員長に推薦されたが
「3学期でやるから!内申ヤバイヤツに譲るわ」
その言葉で身に覚えのある人達が立候補して決まった。上田はその言葉通り3学期で学級委員長をやった。一番受験でピリピリしている時期の学級委員長をすすんでしてくれるなんてすごい人だなぁと思った。
その3学期では隣の席になった。背は私と同じ168cmくらい。結構趣味があってTVや映画やお笑いの話で盛り上がった。話も面白かったし気兼ねなく話せた。気持ちが塞ぎがちな中学3年の3学期を楽しく過ごせた。
これで恋に落ちるかっていうとそうでもない。上田は同じクラスの『ちーちゃんの好きな男』というレッテルが3年になった時から貼られていたからだ。友達の好きな男は好きになってはいけないという暗黙のルールがある。
ちーちゃんは名前通り背が小さくて可愛らしい女子of The女子!笑顔も可愛くて『守ってあげたい』庇護欲を誘うモテ女だ。何故に上田?とも最初は思ったが上田を知るとなるほどとも思ったのでちーちゃんの男を見る目は確かだという事が分かった。
上田の隣の席の私がちーちゃんにとっては面白くないらしく結構睨まれたりもしたけれど、私は身長も高く標準体重…いや、むしろぽっちゃり?くらいで美人でもなければ可愛くも無い。モテ要素が全く無い!皆無なのだ。
男子に女として扱われた記憶も無い。だからなのか最終的にはちーちゃんも安全パイと思ってくれたのか、もう放置であった。
で、上田は市でも一番頭のいい高校へ塾も行かずに合格し、私は工業高校へ進学が決まった。卒業式ではちーちゃんに捉まっている姿を見かけたからきっと告白されたんだろう。
私は私で…
なぁんて事はなく普通に友達とわちゃわちゃして卒業式は終わった。
もう上田と関わるなんて事は無いと思っていたから本当にビックリした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます