第15話、ゲンカイヒコウ
一通り飛んだ後、イオリとファラク、飛行艇、”イザナミ”が帰って来た。
クルックが飛行する番だ。
「えーと、いいのか?」
俺が乗って?
「あら、珍しく殊勝ねえ~」
ファラクだ。
「……馬に蹴られたくないんだが」
クルックが、機体を簡単にチェックをしているイオリを見た。
ファラクが少し顔を赤らめる。
「まあ、
「それだけじゃあ、駄目ね」
「ふ~ん、嫌じゃないのか?」
「”イザナミ”=ファラクなんだろ」
「でも、あんた、飛行艇にだけは真面目でしょっ」
ファラクが言った。
「……ふんっ、飛んでるときは自由だからな」
「へ~え」
「色々あるんだよっ」
ファラクの視線を、背中で強引に振りはらった。
◆
「良い機体じゃねえかっ」
クルックが”イザナミ”を飛ばしている。
「機体の強度、(ネコジャラシより)上がってねえか」
双発ジェットエンジンになって、機体重量はかなり増えているはずだ。
「そうよ~、魔紋で強度を上げてるの」
「機体が巻き込む気流も整えてるわよ~」
バフェッティングやフラッター(両方とも機体に起こる振動のようなもの)を防ぐのだ。
「すげえじゃねえか」
「じゃあさ、どうしてコックピットは与圧式なんだ?」
空気を逃がさない構造になっている。
「ああ、それは単純よ」
「砂漠で巨大な砂嵐を、砂に埋まってやり過ごすからよ」
「魔紋で空気も作れるわよ~」
なんてったって、巨大なデザートドラゴンが、砂嵐の中を回りながら上昇するからね。
魔紋で空気を作るのは、砂上船では一般的な装備だ。
「へええ」
「それと、後席は高Gにも耐えられるようになってるから、少々乱暴に飛んでも大丈夫よ」
「ほほう!」
ニヤリッ
「この機体の限界を知りたくないか~い」
「120%まで、性能を引きずり出してやろ~」
「えっっ、ちょっと待っ」
「いいこと聞いたぜっ」
クルックは、限界まで、曲技飛行や空中戦闘機動(ACM)を楽しんだ。
「成層圏まで行けるんじゃね~~」(←行けます)
「何事にも限度っていうものがあるでしょうが~~」
乙女の尊厳は何とか死守したようだ。
”イザナミ”で、離着水訓練や、飛行艇空母『キサラギ』への着艦訓練を行う。
その後、カティサーク工廠に移動する予定である。
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