この世にはきっと何もない

@mohoumono

この世にはきっと何でもある


この世にはきっと何もない。


ふと気持ちが落ち込んだ時、

そんなことを考えてしまう。


優しさという奴らや厳しさという奴らは、

レシピ本に出てくる適量に似ている。

料理を再現したいのに、分量を適量なんて書かれていたら、違う料理になるだろなんて考えもするが、味覚なんて人それぞれだからこそ、調整できるようにそう書かれているのだろう。

たとえ、同じ分量で作ったとしても、味覚が違うなら、違う料理を食べているのと違わないのだから。


形ある料理ですらそうなのだから、

文字や声といった形のないものは、より一層適量が意味を成してくるのだろう。


なら、僕は何かしら分量を間違えたのだ。多かったのか、少なかったのかは分からないが、少なくとも彼女にとっては、不味かったのかもしれない。


この待ちぼうけが辛いのは、僕が人間だからなのだろうか。それとも、彼女がロボットだから、待ちぼうけの辛さが分からないのだろうか。人間同士なら分かり合えたのだろうか。

まぁ、こんな事を考えるから振られたのだろう。

まぁ、事故統括サイトには、載ってない事故に、遭ってる可能性もあるかも知れないから、もうしばらく待っておこう。


冷たくなり膝に置いた二つのココアを見ながら、自販機で買ったココアを二つ手の中で転がす。

少し早めに来て、寒かったろ?なんてカッコつけるはずだった。それが、待ち合わせをすっぽかされて、冷えたココアだと格好つかないから、さらにココアを買い足したが、それさえも冷えてきている可哀想な男に成り果てていた。しかも、甘いものはあまり得意じゃ無い。どうやって飲みきろうか。肩が重くなり、息を吐いた。冬だからか息が白くなった。


もう帰るかなんて思ってから三時間が経った。電話は18回かけた。もしも連絡が出来ない状況で、ここには来ようとしているかもしれないから、僕は待っていたかった。馬鹿だななんて、鼻で笑ってから冷えたココアから飲み始めた。

そのココアは、夏場の麦茶よりも冷えていた。

結局その日、彼女は来なかった。


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