第2話 事情聴取

荷台は男を乗せ獣道を——ガゴン ガゴンと疾走する。


そのざわめきは地面を伝わり普段は気性が荒い周囲の獣が慌てて逃げ出していく。


彼らは知っているのである。

この薄暗い太陽の光でも光って見える格好をした人間には勝てないのであると。


獣道を抜け一行はある石壁までたどり着く。


ぱっとみただの石壁の用に見えるが騎士の一人、デュワールが壁に手を当てると石壁の中にポッカリと長方形に上がアーチ状になっているトンネルが現れる。


きっと魔法で隠匿されていたのだろう。


一行はトンネルの奥へと進んでいく。


中は統一性の有るデザインで壁をじっと見ていると模様が激しく波打ってるように見えてくる。


ざっと15分ほどで最奥であろう場所、広間にたどり着いた。


広間と言っても今までのトンネルと比べてと言う話であり、人は十人ちょいぐらいのスペースしか無い。


そしてその奥には上へ続く階段があり、そこをコツン コツンと最大限音をたてないように進んでいく。


まるでこの先に眠れる獅子がいるように慎重に進んでいく。


それを上った先には金の差し色の入った重厚な扉があった。


そこを通る前に騎士の一人が少年に耳打ちする。


「この先、命が惜しければ余計な事は口にしないほうがいい。

 俺が言えるのはこれぐらいだ。」


ドアが開く


空気が一新して、背筋に針金が通るかのような威圧感。


たくさんの従者の女性が並んで、向かって右側に手を伸ばしている。


「デュワール隊、帰還!」


一行は数歩進んだ後、示された右側に向きを変える。


そこには一つ大きな玉座とそこに座る成人男性の平均よりも二回りほど大きな体躯で豪華絢爛とまではいかないがそれなりに豪勢な衣類とそんな体躯よりも大きな大剣を持っている男がいた。


少年の本能が言っている。

――彼が王 だと


「デュワール隊 隊長。デュワール・クトル!ただいまエリア0で確認された未許可魔法使用および侵入者を捕縛する任、完遂させて帰ってまいりました!こちらがその侵入者です。」


そういって少年は王の前へと立たされる。


――これ殺される気がする。


王は一瞬少年を見た後、一息漏らす。


「デュワール、ご苦労だった。そしてそこの侵入者のお前」


「ひゃ、ひゃい!」


「お前の主張や意見、感想や言い訳。いろいろあるだろう。

 だが吾はそれらすべて聞く気はない。なぜなら言葉を発するお前に信用が無いからだ。もう一度言うが文句は聞く気はない。」


なんたる横柄、一見論理的にある様に聞こえるがそれはただ自分の意見を押し通すための大義名分を掲げているだけなのだ。


だが、その場にいた全員その言葉に不満を抱かない。


従者の女性たち、騎士たち、周りにいる大臣らしき人物たち


ましては少年まで。


それは 彼が であるからか、はたまた別の理由があるのかそれは分からない。


――心臓が冷たくなってくる。


「だが、別に融通が利かないわけではない。お前のような小僧が何か出来るとは思わんからな。

悪い様にはせん。だが万が一というものもあるのでな、少し乱暴をさせてもらう。」


そういうと、王の後ろからゾロゾロと4人の白のローブを被った魔法使い達が現れて少年を囲うように立つ。


どうやら最初にあった『魔導隊』とは違うやつららしい。


男達は、何かブツブツつぶやくと突如ひかりの帯が足元から伸びたと思うと少年の口の中に入っていく。


――なにこれ!?キモッ


慌てて吐き出そうとするが、実態がないのかえずいてもスカした息が出るだけだった。


「すまないが、最低限の保証はさせてもらう。

話を聞いた限りお前は自身に関すること全てを記憶が無いの一点張りで通そうとしてるらしいな。だが、ここは王家の土地。全て吐いてもらう」


「-・ー!?」

――声が出ない!?


王は少年に問う



王が使ったのは特級契約魔法 真偽の審議


この魔法の効果は対象に魔力量が5倍以上の差がある場合対象は質問に対して嘘、または曖昧な返答ができなくなる。


ある程度の手練ならば抵抗する術を持っている場合もあるが少年にそんな力はない


「俺は何もしらない」


筈だった


「この体躯を持ちし者、それは建国の英雄の名を受け継ぎしを持ちしものである。」


――!?


「ばっ馬鹿な!?こんなガキに特級魔法に抵抗できるわけが無い!手順を誤ったのか!」


「ち、違う!俺はこんなこと知らない!」


魔法をかけた男のひとりが声を荒らげる。

あまりに荒唐無稽な今の現状に驚きを隠せないのだ。


無理もない。

周りで聞いていた者達、全員驚いているのだ。

いや、2人驚いていない人物がいる


――俺何言ってるんだ!?


もちろん、その2人に少年は含まれないよ。


そのうちの一人は、王であった。


「よい、魔法自体に不備は無い。

 何千回とみた魔法だ、失敗はしていないしその術の継続は未だされている事は分かる。だとしたら、可能性はただ1つ。」


「まさか!?」


――言った本人だけど全くわからん!


王が静かに告げる


「神託だ」










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ラストの国記 【 記憶喪失男は虚構を被る 】 巡世 式 @meguseshiki

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